調査レポート・コラム|日経リサーチ

「認証サービスのわかりやすさ」が利便性満足度向上のカギ -銀行「消費者調査」2024の結果より

作成者: 日経リサーチ|2024.07.05

本コラムでは、銀行全体の総合満足度と4分野の満足度、および個別項目の関係をSHAP法(※)を使って分析しました。

下記の図(図1)は、4分野の満足度がどのくらい総合満足度に寄与しているかを見た結果です。

図の上にある項目ほど、総合満足度への全体的な寄与度が高い項目で、プロットが右にあるほど総合満足度へプラスに寄与しており、プロットが左にあるほどマイナスに寄与していることを表します。

図1.総合満足度に影響を及ぼす項目

※各プロットは回答者のSHAP値、プロットの色は各回答者の回答結果を表しています。

 

「利便性」「商品サービス」「接客応対」「企業姿勢」のうち、総合満足度への寄与度が最も高いのは「利便性」です。


利便性は、SHAP値(グラフの横軸)がプラスにもマイナスにも大きく振れており、利便性に満足であれば、総合満足度を大きく押し上げ、逆に利便性に不満であれば、総合満足度を大きく押し下げるので、総合満足度を大きく左右する項目であると考えられます。



では、具体的に、利便性の中でも特にどのような項目が利便性の満足度全体に寄与しているのでしょうか。利便性の総合満足度と個別項目の関係を見たのが、下記(図2)になります。


図2.利便性の満足度に影響を及ぼす項目

 

 

利便性の満足度向上に特に寄与しているのは、以下の3つです。

「ログインなどの本人認証サービスがわかりやすい」
「ATMが利用しやすい場所にある」
「グループ会社や業務提携先と連携したサービスが充実している」

近年、インターネットバンキングの利用などが急速に拡大している中、セキュリティ面の強化から複雑なサービスも増えており、アプリによる認証などサービスの分かりやすさが利用者に伝わると、利便性の満足度を向上させることが期待できそうです。


また、グループ会社や業務提携先と連携したサービスの充実から、お客さまは銀行に対して幅広いサービスの提供や、より多くの価値を求めていることがわかります。

一方、マイナスへの寄与が高い項目としては、以下があげられます。

「他金融機関への資産の移管・連携のしやすさ」
「グループ会社や業務提携先と連携したサービスが充実している」

普通預金以外のサービスを利用している人にとって、資産移管が連携しにくいことや、提携先とのサービスの連携が不充分な場合、利便性を押し下げる要因につながります。

今回、満足度への寄与度が高い項目だけでなく、そのサービスの評価が得られなかった場合の負の影響も併せて確認しました。より満足してもらうために改善を取り組むべきことと、満足度を下げない為に改善すべきこと、双方の視点からお客さまを捉えていくことが大切です。

※1 銀行ランキングの5分野:「利便性」「商品サービス」「接客応対」「企業姿勢」「収益性」
※2 SHAP(Shapley Additive exPlanations)」とは、協力ゲーム理論におけるShapley値をベースにした、機械学習モデルで分析した結果を解釈する方法。

日経リサーチ「消費者調査」は、個別金融機関の調査結果の提供も可能です。銀行全体に対する自行の立ち位置や他社との差別化をもたらす項目など、今後の金融サービス施策の検討材料として、ご活用いただければ幸いです。

                  (ソリューション本部アカウント第1部 山口 幸子)