Case

SDGs経営調査のレポートをサステナビリティ取組状況の可視化と経営の高度化に活用

日本生命保険相互会社

生保業界最大手の日本生命保険相互会社は、2022年度、サステナビリティ関連を含む情報開示の全社的な調整役となるコーポレートプロモーション部を設置した。同部は様々な活動に取り組む中で、「SDGs経営調査」を大いに活用しているという。コーポレートプロモーション課長の西村憲司氏とメンバーの竹内望氏、宮英俊氏に話を聞いた。

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日本生命保険相互会社
コーポレートプロモーション課長西村憲司氏(右) メンバーの竹内望氏(中央)、宮崎英俊氏(左)
※社名・部署・役職はインタビュー当時のものです

Q.コーポレートプロモーション部の活動内容を教えてください。

西村憲司さん(以下、西村)|2022年の部発足当初は、オリンピック・パラリンピック推進部とCSR推進部がその主要母体となっていたため、着任当時、まずはスポーツや社会貢献をはじめとしたプロモーションによる企業イメージ向上が、中心かと思っていました。しかし、その後、内外のサステナビリティに対する意識の高まりを受け、当部に求められる役割は大きく変わりました。

 

現在、当部のミッションは、情報開示を通じた経営の見える化・高度化への貢献といった「守りの情報開示」だけでなく、「攻めの情報発信」ともいえる企業ブランディングも同時に手掛けています。

竹内望さん(以下、竹内)|サステナビリティに関して言えば、当社のサステナビリティ委員会の下部組織であるプロモーションワーキンググループにおける部課長クラスのメンバーが議論する際の内容の調整、取り組みの進捗確認、統合報告書の制作などが主な業務です。「SDGs経営調査」も、当部にて担当しています。

Q.日経リサーチの「SDGs経営調査」を導入した狙いを聞かせてください。

西村|従来、「SDGs経営調査」は数あるアンケートの1つ、という位置づけでしたが、サステナビリティに対する社内外の意識が格段に高まる中、調査に対する姿勢も「アンケートにどう回答するか」にとどまらず、「結果を真摯に受け止め、経営にどう取り込むか」といったことを強く意識するようになりました。

 

正直、従来は実務的に「SDGs経営調査」へ回答していました。しかし、それでは評価もさりながら、このような機会を自社の経営に活かす、といった観点からも、勿体ない部分があったのではないか、と思います。

宮崎英俊さん(以下、宮)|当部の役割は情報開示ですが、開示の大前提となるサステナビリティの取り組み自体の状況を見える化し、何がどこまでできているのかを把握する「人間ドック」のような仕組みが必要ではないかと考え、「SDGs経営調査」を活用しています。項目ごとに、他社の好取組事例の分析等を踏まえた当社対応方針の検討、そのための「気付き」が得られる貴重な機会となっています。

西村|また、当部は企業ブランディングも手掛けていますが、日本経済新聞にランキング結果が掲載されるので、高評価が得られれば、企業ブランドにもプラスの影響が働きます。当然、労働市場も意識すべきであって、採用活動の観点からも重要な役割を担っていると考えます。

 

当ランキング結果は、第三者の客観的な評価であるため、信頼度が高く、非常に貴重で、我々の力になります。社内での説得力も違いますね。

 

先日のプロモーションワーキンググループでも結果を報告しましたが、今年度は星4.5をいただいたということで、みんな喜んでいましたし、取組成果を評価することが難しいサステナビリティの領域において、成果を見える化できるという点で、とても有り難いと考えています。

Q. 調査結果はどのように活用していますか?

宮崎|領域・項目別に、他社の好取組事例も参考にしつつ、当社として出来ていることと、出来ていないことを整理しました。特に他社の多くが取り組んでいることは、こんな風にもう少し踏み込めないか、などと関係部署と相談しながら取り組みを進めました。

 

調査結果は、優先順位を設定する際の参考材料にもなります。おかげさまでかなりの手応えがあり、1年でだいぶ変わったなと感じています。

西村|取り組みの優先順位を決めるには、当社独自の経営戦略や重要課題(マテリアリティ)も大事ですが、比較可能性の観点から日本国内だけでなく国際的な潮流も踏まえながら、多面的な視点で取り組み状況を見える化し、高度化へ繋げていくことが必要だと考えています。

 

レポートを受け取ったあとの報告会では、日経リサーチのご担当者の方と直接対話を重ねることを重視しています。レポートだけでは認識できない、先行指標ともいいましょうか、世の中のリアルな状況や考え方が把握できますし、逆に当社の考え方や取組内容も知っていただくことで、相互理解が進みます。

 

単純に質問者と回答者という一方通行の関係ではなく、勝手を申しあげれば、議論を交わし、互いが互いを高め合う、両者がそんな関係になれば大変有り難いと思っています。

Q.サステナビリティに関する情報開示の重要性が高まっています。貴社ではどのように取り組まれていますか。

宮崎|情報開示は、単なる情報の「開示」ではもったいないと思います。統合報告書をはじめとした開示媒体を制作するにあたっては、必要十分な開示項目が揃っているか、および受け手に伝わるストーリー性を意識しています。

竹内加えて、さまざまな媒体や場面で情報を開示しているため、とにかくコアメッセージがぶれないように意識しています。

 

その上で、情報の受け手の特性、すなわちインサイトを踏まえ、媒体によって掲載する取り組み例を変えるなど、現場の意見を聞きながら進めています。媒体によってどのような説明をすれば理解をしていただけるかということを大事にしつつも、あらゆるステークホルダーに同じ企業像をどう伝えていくかということを忘れずに、メッセージを一貫させることが重要だと思っています。

Q.今後のビジョンを聞かせてください。

宮崎|調査結果を通じて取り組みを進められていることを実感できているので、レポートを活用してさらに取り組みを高度化させ、それらを積み上げて、最終的にはお客様へ還元していきたいです。

 

結果的にお客様に喜んでいただけたら、企業価値向上にもつながっていくと思います。

西村|来年度は新たな中期経営計画のもと、新たなステージに向かっていきます。調査を単なるランキングやアンケートとして考えるのではなく、今後もまさに「人間ドック」同様の機会として捉え、取り組んでいきます。

 

そして、当部が会社と社会を繋ぐ「窓」としての機能を果たすことで、開示のための開示ではなく、企業価値と連関したストーリーを伴った開示を目指すことで、経営の高度化と企業価値向上に資するべく、更なる工夫・改善を進めていきたいと思います。

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