「コンプライアンス経営診断プログラム」で 事業多角化によるリスクを特定
エア・ウォーター株式会社
産業ガスの供給を軸に、医療、エネルギー、食品など、積極的なM&Aを通じて様々な事業に展開するエア・ウォーターグループでは、
2022年より日経リサーチの「コンプライアンス経営診断プログラム」を活用し、コンプライアンス強化を進めています。
同グループでは、コンプライアンス推進活動をどう捉え、どのような取り組みを行っているのでしょうか?
エア・ウォーター株式会社 コンプライアンス室長 光村 公介さんと同室 上本 学さんにお話を伺いました。

エア・ウォーター株式会社
特任役員
コンプライアンス室長
光村 公介さん(右)
コンプライアンス室
上本 学さん(左)
120社超の主要会社に直接働きかけながら
グループのコンプライアンスを強化
——まずはエア・ウォーターグループにおけるコンプライアンス推進体制についてご説明いただけますでしょうか。
光村公介さん(以下、光村)|まず、エア・ウォーターグループ全体のコンプライアンス上の問題を一元的に管理するために
私たちコンプライアンス室が存在します。それに加えて、コンプライアンスに関する事案を協議する全社機関として、
コンプライアンス委員会を設置。代表取締役から示されたコンプライアンスに関する方針に基づき、具体的施策などを検討するほか、コンプライアンス違反発生時における対応を協議しています。さらに、各事業部門や中核企業にはコンプライアンスの責任担当部署があり、これらの部署とコンプライアンス室が緊密な連携を図ることで、傘下のグループ会社群を含めたコンプライアンス体制の強化を図っています。
——コンプライアンス室のミッションと業務内容を教えてください。
光村|一口にコンプライアンスといっても、順守しなければならない法律やルール、社会的な規範などは数多く存在します。その中で、私たちコンプライアンス室がフォーカスしているのは、専門の部署が設けられている会計業務の監査やカーボンニュートラルの推進以外のすべてが領域と言えます。
業務内容は、コンプライアンス上のリスクがないか確認するためのグループ各社に対する監査やモニタリング調査、コンプライアンスの理解促進を図るための教育・啓発、コンプライアンス相談窓口の設置・運営、統合的なリスク管理、危機管理などが挙げられます。グループ会社は連結で約170社ほどありますが、私たちが直接働きかけるのは、各事業の主要会社。直接管理しているのは約120社になります。コンプライアンス推進活動の中で、私たちが特に重要視しているのが、リスクの「認知」と不正や事故の「予防」。監査やコンプライアンス相談窓口の設置・運営などが、具体的な取り組みになりますが、日経リサーチの「コンプライアンス経営診断プログラム」の活用もそのような取り組みの一環です。
調査サービスに求めたのは
調査精度の高さと分析結果の信頼性
——「コンプライアンス経営診断プログラム」活用前には、どのような課題に直面していたのでしょうか。
光村|M&Aにより事業の多角化を進めてきた当グループに属する企業は、企業規模も風土も様々。規模の大きな企業もあれば、スタートアップ企業もありますし、意思決定方法が完全なトップダウンの企業も、内部の合議制や親会社の指示だけを重んじる企業もある。傘下に入ってからの年数もまちまちなので、グループに対する帰属意識も異なります。そのような中で、グループが掲げるコンプライアンス方針の理解度や浸透度に差が出ているのではないかという懸念がありました。そこで各グループ会社のコンプライアンスに対する意識レベルやリスクをしっかりと把握する必要があると考え、従業員を対象としたコンプライアンス意識調査の実施を検討したのです。
また、コンプライアンス相談窓口を利用して声をあげる従業員がいる一方で、問題に直面しても声をあげられない人がいるかもしれません。コンプライアンス意識調査を行うことで、そのような従業員の声をすくい上げたいという気持ちもありました。
——コンプライアンス意識調査を行うにあたって、日経リサーチの「コンプライアンス経営診断プログラム」を活用した決め手を教えてください。
上本 学さん(以下、上本)|いくつかの調査会社のサービスと比較検討した結果、日経リサーチのサービスが当社のニーズに最もあっていたことが決め手になりました。日経リサーチ以外の調査会社のサービスは、どちらかというと調査後のコンサルティングサービスにウエイトを置いている印象でした。しかし、調査後に何を行うかは、当社が構築している仕組みの中で行うため、調査自体の信頼度を重視していました。その点、日経リサーチのサービスは、調査と結果の分析に特化している印象だったのです。特に調査結果をベンチマーク比較できる点は高く評価したことを覚えています。
——調査は、2022年8月と2024年3月に実施されていますが、調査対象となる企業がそれぞれ異なっていますね。
上本|1回目はエア・ウォーター本体と特に規模の大きな15社を対象に調査を実施しました。2回目は従業員数が概ね100人以上の中規模の23社が対象。いずれの調査も回答者は4,000名ほどでした。そして、ちょうど現在2巡目として、大規模企業を対象とした調査を行ったところです。ただ、その数は10,000名を超えています。
——調査実施における日経リサーチのサポートに対する印象を教えてください。
上本|こちらの要望に対して、柔軟かつ丁寧に応えていただいた印象が強いです。例えば、グループ内に多様な業種の企業を抱える私たちにとって見逃せない業種特性に関する分析についても柔軟に対応してもらいました。
スコアを絶対値として用いて、その高低だけで判断し、指導するだけでは思ったような成果にはつながらないと考えられます。なぜなら建設業と製造業で、全体のリスク度合いやリスクの高い項目は異なるように、コンプライアンスについても業界の特性があるからです。そもそも調査を行う目的は、スコアが低い企業を特定して、単に注意喚起することではなく、リスクを発見し、それぞれに適切な形でリスクの解消をすること。だからこそ業界の特性を考慮しながら、状況を理解し、適切なアクションを促すことが求められます。そこで、日経リサーチには、予定にはなかった業種ごとの特性を勘案した分析をしてもらいましたが、このようなことが実現できるのも、ベンチマークデータを有しているからこそでしょうね。
コンプライアンス意識調査は
テストではなくコミュニケーションツール
——調査結果について、どのような印象をもたれましたか。
上本|おおむね予想していた傾向がでていたという印象でしたが、傾向がデータでしっかり示されたことに大きな意味があると感じています。特に、コンプライアンス教育・啓発活動やコンプライアンス相談窓口の認知が低いことが明らかになりましたが、この点は喫緊の課題としてとらえています。
また、エネルギーや医療などの事業を展開しているグループの従業員は、エッセンシャルワーカーとしてどうしても労働負荷が高くなりがちですが、そのような傾向があることも調査で浮き彫りになりました。労働負荷が高まれば、コンプライアンスリスクも高まるので、こちらも何かしらの対策を講じる必要があると感じています。
一方で、全体的に「不正を許さない意識」や「品質管理」については高いスコアが出たのは、好材料でした。このような結果が出たのは、ものづくりに携わるプロフェッショナルとしてのプライドが、しっかりと醸成されているからこそだと考えています。
——調査結果をもとに、どのような取り組みを行っているのでしょうか。
光村|各社の経営陣が自社に足りないものを認識し、具体的なアクションを起こすきっかけにするために、調査結果はグループ各社にすべてフィードバックしています。また、コンプライアンス教育・啓発活動やコンプライアンス相談窓口の認知が低いという課題の改善は私たちコンプライアンス室が行うべきところです。社内イントラ内での、情報発信方法などを工夫して対応していく予定です。さらに、グループ会社毎のリスクレベルが明らかになったので、リスクが高いところから優先して監査や指導を進めていきます。
——今後の展望についてお聞かせください。
光村|コンプライアンス意識調査は継続して実施するつもりですが、各グループ会社の経営層だけでなく、全従業員に対して、調査結果をフィードバックできないか検討しているところです。その他にも、コンプライアンス意識調査の結果を、エンゲージメント調査などほかの調査結果と掛け合わせて分析したり、グローバル会社も含めた調査を実施したり、実現したいことは数多いですね。
いずれにせよ、コンプライアンス推進活動は、単に違反がないかどうかをチェックするものではなく、企業が機能的に動くためのベースを整えるものだと捉えています。また、繰り返しになりますが、コンプライアンス意識調査は、点数の悪い企業を特定するためのテストではありません。飽くまで、大事な仲間である従業員の皆さんの声を聞くためのコミュニケーションツールです。今後もそのような考え方に基づいて取り組みを推進していく考えです。
——ありがとうございました。
コンプライアンスに関する調査を
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