Case

各部門が自律的に課題を改善ー東和薬品のコンプライアンス推進体制

東和薬品株式会社

大手ジェネリック医薬品メーカーとして、ジェネリック医薬品市場の成長をけん引してきた東和薬品株式会社。同社では、市場の拡大とともに、複雑化するコンプライアンスリスクに向き合うため、2021年に法務部に新たにコンプライアンス推進課を新設。全社的な取り組みを強化してきました。そんな取り組みの土台となるのが日経リサーチの「コンプライアンス経営診断プログラム」を活用した意識調査です。今回は、同社管理本部 法務部長の大西秀和氏、管理本部 法務部 コンプライアンス推進課長の辻󠄀浦晃一氏に、調査導入の背景、調査結果の活用方法、今後の展望について伺いました。

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東和薬品株式会社
   管理本部 法務部長 
   大西秀和 氏(右)

   管理本部 法務部 コンプライアンス推進課長 
   辻󠄀浦晃一 氏(左)
 

 急成長する市場で直面するリスクと組織改革の必然性 

 

——まず法務部およびコンプライアンス推進課の役割について教えてください。

 

 大西秀和 氏(以下、大西)|法務部は契約審査や法律相談、M&A対応、内部通報の受付などの業務を担っています。
そして、20214月に部内に新設したコンプライアンス推進課はその名の通り、全社的なコンプライアンス意識向上を図ることがミッションです。

 

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——コンプライアンスを強化するには、やはり専任組織が必要だということですね。 

 

大西|そうですね。製薬業界はコンプライアンスが特に重視される業界ですが、以前は法務部の業務として、コンプライアンス推進活動に取り組んできました。しかし、ジェネリック医薬品市場の急拡大や、業界内で製造不正事案が相次いで発生したこともあり、コンプライアンス体制をさらに強化するべく、専任組織を立ち上げたのです。

2010年代から社内でコンプライアンス意識調査は実施していました。しかし当時は、私が手作業で設問を作り、集計まで行っていたものの、結果を分析して施策に落とし込むところまでは手が回っていませんでした。法務部は契約関連業務や内部通報対応など業務範囲が広く、兼務では改善サイクルまで十分に取り組む余裕がなかったのです。

 

辻󠄀浦晃一氏(以下、辻󠄀浦)|その結果、改善のサイクルが回らず、意識レベルが頭打ちになっていました。調査結果は決して低いわけではなかったのですが、コンプライアンス推進には終わりがありません。継続的に取り組み、レベルを高め続けるためには、調査を実施するだけでは不十分で、PDCAサイクルを回していく必要があります。

 

——その他、社内のコンプライアンス推進体制も見直されたそうですね。 

 

大西|以前は事業所ごとにコンプライアンス担当を置いていましたが、事業所単位では業務内容に応じたリスクを十分に把握するのが困難でした。そこで、事業所単位ではなく事業部門単位で責任者を設置し、自律的に取り組める体制へ移行しました。

 具体的には、本部長や工場長が「部門コンプライアンス推進統括者」を、部門長が「部門コンプライアンス推進者」を務めます。彼らが全社的なコンプライアンス推進体制の中核である「コンプライアンス委員会」と連携し、リスクの把握、分析、是正等の措置を計画し、実行していく仕組みになっています。

 なお、コンプライアンス委員会には管理本部長、人事本部長、法務部長、内部監査室長、そして外部弁護士が参加しており、グループ全体のコンプライアンス推進施策の決定機関として機能しています。コンプライアンス推進課は、コンプライアンス委員会の事務局であり、かつ、具体的な施策の実行を担っています。 

 

——“自律的に取り組む”という点がキーワードですね。 


大西|
おっしゃる通りです。コンプライアンスに関する取り組みは、委員会や推進課だけが躍起になっても意味がありません。各部門が自分たちの業務に応じたリスクを把握、理解し、主体的に改善していく文化をつくることが重要です。

 

——コンプライアンス推進課は、コンプライアンス委員会の事務局としての役割以外に、どのような取り組みを行っているのでしょうか。 

 

辻󠄀浦|e‐ラーニングによるコンプライアンス研修プログラムの提供、イントラネット上に啓蒙コンテンツをアップするといった取り組みを随時行っています。また、当社では、毎年11月から翌年の1月までの3カ月を「コンプライアンス月間」に定めています。この期間には、社長メッセージの発信や啓発ポスターの掲示といった施策を展開します。さらに「コンプライアンス月間」では、その時に特に意識してもらいたいテーマを用意し、各部署やチームで議論をしてもらう機会も設けています。こうした対話を通じて、社員一人ひとりの意識向上につなげることが取り組みの狙いです。

 

自前調査からの脱却──日経リサーチの専門性がもたらしたもの

——日経リサーチの「コンプライアンス経営診断プログラム」を導入しようと考えた経緯を教えてください。

 

大西|先ほど、お話しした通り、分析まで手が回らないという課題を解消するために専門家の力を借りようと考えたことがきっかけです。また、それまで自前の調査票で調査を行っていましたが、設問設計の専門性があるわけではないので、設問が適切なのかどうかについても不安がありました。これらの課題を解決するために、調査会社のサービスを活用することを考えたのです。

 

——調査会社の選定に当たっては、複数社を比較検討されたと伺いました。

 

辻󠄀浦|はい。候補は3社ありました。その中で日経リサーチの「コンプライアンス経営診断プログラム」は、調査の設計を慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 高野研一教授(※現在は退官)が監修していて、設問の質が高いことが評価のポイントになりました。

 

——「コンプライアンス経営診断プログラム」を活用した調査の概要について教えてください。

 

辻󠄀浦|調査は2021年からほぼ毎年実施しており、当初は「コンプライアンス月間」である11月に行っていましたが、現在は6月に実施しています。調査期間は約3週間で、「コンプライアンス意識」「心理的安全性」「内部通報制度の認知」「組織風土」など、多岐にわたる項目を対象としています。対象となる社員は派遣社員を含み、約4,000人の規模です。

 

——調査を進める中で、日経リサーチのサポートやアドバイスが役に立ったことはありますか。

 

辻󠄀浦|設問は毎年、確認したいテーマに合わせて一部を見直しています。市場の拡大やニーズの高まりに伴い、コンプライアンスに関するリスクが広がる中で、新たなリスクを捉える必要があるためです。その際には、継続すべき項目や入れ替えてよい項目について、専門家の視点でアドバイスをもらっています。例えば、2025年度は、これまでスコアが高かった質問項目を外し、スコアが低かった項目を深掘りしました。

また、「コンプライアンス経営診断プログラム」は、国内外6万人のビジネスパーソンの回答をもとにしたベンチマークデータと比較できる点が特徴ですが、私たちの調査でも医薬品業界のベンチマークデータを報告書に盛り込んでもらっています。

 各項目のスコアだけでは高いのか低いのか判断しづらく、業界ごとに求められるレベル感や課題も異なります。そのため、業界ベンチマークと比較できることは非常に有用だと感じています。

 

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——調査を実施する意義について改めて聞かせてください。 

 

大西|最大の目的は、現場の状況を正しく把握することです。2024年度でいうと年間70件ほど通報がありますが、それだけでは全体像はつかめません。意識調査は、潜在的なリスクを可視化し、施策の効果を検証するための重要な手段です。

「コンプライアンス意識調査」は、表面化していないリスクまで捉えられる点にも大きな価値があります。問題が起きてからでは手遅れになるため、やはり見えていないリスクを事前に洗い出し、改善につなげられるのはありがたいですね。 

 

辻󠄀浦|例えば、「内部通報窓口の利用方法を知っていますか」という設問を入れたところ、想定以上に「知らない」という回答が多く、周知が十分に届いていないことが明らかになりました。こうした施策の浸透度を測れるのも、調査の大きな価値だと感じています。

 

——これまでの調査結果の中で、内部通報窓口の利用方法の認知度以外に印象的な結果や気づきがありましたか。

 

大西|調査を開始した2021年の結果では「違反を指摘しにくい職場風土」「業績優先」といった項目について指摘されたことを記憶しています。最初の調査で、そこを具体的な課題として把握できたのは大きかったと思います。 

部門主体の“自律型コンプライアンス”の実現                               

——調査結果はどのように社内展開されていくのでしょうか。 

 

大西|調査結果は、まずコンプライアンス委員会に報告します。ここで重点的に改善すべき項目や、組織全体に共通する課題について議論し、会社としてコンプライアンスにどう向き合うべきかを共有します。その後、「部門コンプライアンス推進統括者」である各本部長に結果をフィードバックし、スコアが基準未満の項目に対する改善計画の立案を依頼していきます。ここが重要なポイントで、委員会や推進課が施策を一方的に押しつけるのではなく、各部門が自律的に考え、改善に取り組む仕組みになっているのです。

 なお、フィードバックを受けた本部長は、調査結果の分析内容を経営陣が集まる会議で発表します。そのような場で説明することで、経営陣が各本部の状況を認識することができるとともに、各本部長の改善に向けた覚悟と責任を明確にする狙いもあります。

 

——これまで取り組みを進めてきた成果について教えてください。 

 

辻󠄀浦|内部通報制度の認知度が大きく改善しました。調査結果を見て、私たちが思っていた以上に認知が進んでいなかったことに気づき、ポスター掲示や研修を強化したことが、功を奏したと考えています。そして、なんといっても、各組織のコンプライアンス意識と課題が見える化されることにより、自律的に問題解決に向けて取り組みやすい環境を提供できるようになったことが大きな成果と考えています。

 

大西|心理的安全性が高い組織風土が醸成されているかどうかは、ハラスメント防止やスピークアップの促進に直結する非常に重要な要素ですが、この点についても改善傾向が見られます。過去の調査結果を踏まえて、研修プログラムを用意したり、社員同士を“さん”づけで呼ぶことを奨励したりするなど、組織内の風通しを良くする取り組みを続けてきたことが、良い影響をもたらしているのではないかと考えています。 

 

——2025年度の調査結果を踏まえ、今後どのような施策を検討されていますか。 

 

大西|まだ計画段階ですが、業務の属人化や社内のコミュニケーションに関する課題は引き続き重点的に取り組むテーマだと認識しています。 また、他にもスコアが悪化傾向にある項目については注意深く見ていく必要があると考えています。

 

——最後に、日経リサーチの調査をどのように評価されていますか。

 

大西|製薬業界では、ひとたび不祥事が起これば事業への影響は深刻なものになります。実際に品質不正を起こした企業が経営危機に陥った例もありますが、それは決して他人事ではありません。なぜなら、ニーズの高まりに伴い、製造現場に大きなプレッシャーがかかり、製造手順の逸脱が起こりやすくなるという構造的な課題があるためです。

 だからこそ、このような事態は起こり得るリスクだと認識し、一層コンプライアンス体制を強固にしていくことが重要です。

 また、一連の不祥事によってジェネリック医薬品業界全体のイメージが損なわれたことも事実です。社会からの信頼を取り戻すためには、私たち製薬メーカー自身が努力を重ね、レベルアップしていくことが求められています。

 そのためにも、現場の声を正しく把握し、コンプライアンス上のリスクを早期に察知する仕組みであるコンプライアンス意識調査は継続して取り組む必要があるのは言うまでもありません。そして日経リサーチは、こうした取り組みを推進するうえで欠かせないパートナーだと考えています。

 

——ありがとうございました。

 

 

 

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