Case

「信頼」を資産に── 高砂熱学工業が顧客の“推し度”を測る理由

高砂熱学工業株式会社

現在、高砂熱学工業株式会社では、顧客のビジネスバリューを最大化させるため、自社と顧客企業の関係性を、これまでになかった評価軸で測る取り組みを実施しています。
日経リサーチが支援するこの取り組みは、取引量や取引金額だけでなく、「顧客企業がなぜ自社を選んでくれているのか」という、いわば“高砂熱学愛”を定量化するアンケート調査を実施するもの。一般的な顧客満足度調査とは一線を画す調査の内容や狙いについて、同社副社長で営業本部長の久保田 浩司氏、営業本部営業統括部営業企画室長の川名 高氏、営業統括部営業企画室の飯作 朋之氏にお話を伺いました。

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高砂熱学工業株式会社

取締役 副社長執行役員 営業本部長
久保田 浩司さん(中央)

経営分析室長 兼 営業本部営業統括部営業企画室長 

川名 高さん(右)


営業本部営業統括部営業企画室

飯作 朋之さん(左)

選ばれる理由を“価値”に変える営業戦略

 

――久保田様が本部長を務める営業本部では、現在「無形資産としての顧客価値の向上」実現に向けた取り組みを進めていますが、そのようなことを目指すようになった背景を教えてください。

久保田 浩司氏(以下、久保田)|当社は、空調設備の設計、施工、保守を軸としたエンジニアリング企業です。例えば、快適な空調設備や工場環境を提供することで、お客様の製品づくりを支えていますが、私たちがよりよいサービスを提供すれば、お客様の事業に好影響を与えることができる。つまり“企業価値の土台となる環境”を提供してきたのです。

そして2023年、創立100周年を迎えたことを機に、「お客様の企業価値を高める」ということを改めて見つめなおそうと考えたのが取り組みの始まりでした。

 

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――そして、2024年にお客様からの信頼という無形資産の価値を測ることを目的とした顧客ロイヤリティ調査を実施されましたね。

久保田|お客様の企業価値を高める」ことが実現できているかを測るためには、お客様からどう思われているのかを客観的に確かめる必要があると考えたのが、調査を行うきっかけでした。かねてから顧客企業別に取引額や採算性などを数値化することは行ってきましたが、お客様との信頼関係はそれだけでは測れません。「本当に当社が必要とされているのか」「どれだけ信頼されているのか」を可視化する必要があったのです。 

 

――「顧客のビジネスバリュー」や「顧客からの愛情」といった思いを、無形資産価値として捉え、それを可視化しようという点で、とても興味深い取り組みに思えます。

川名 高氏(以下、川名)|顧客に対する調査の多くは、顧客満足度の把握にとどまっている印象が強いですね。「なぜ当社を選び続けてくれるのか」という視点で深掘りできるサービスは意外と少ない。過去の建設不況時に工事を発注していただいた経験もありますが、苦しい時期に助けてくれたお客様が今も関係を続けてくださっているのは、高いロイヤリティがあるからだと思います。それが今の関係性にもあるのか、そしてその理由を可視化できるのではないかと考えました。満足度だけでは見えない価値を掘り起こしたかったのです。

 

――調査を行うにあたって、なぜ日経リサーチをパートナーに選ばれたのでしょうか。

 

川名|一番の決め手は、日経ブランドの信頼性です。当社が直接調査を依頼してしまうと、回答にバイアスがかかりかねません。では第三者から依頼をするとしたら、回答率を上げるためにも、日経グループの調査会社が行っていることはプラスに働くと考えました。今回の調査は、当社の大事なお客様に依頼させていただくものですので、この点は特に重要視しました。

 

 

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――調査の対象企業について教えてください。

 

飯作 朋之氏(以下、飯作)|建設工事の発注者である約400社の顧客企業様にご協力いただきました。

 

――調査項目の設計や社内調整で苦労された点はありましたか?

 

飯作|「どのお客様に調査をお願いするか」を決めるのには苦労しました。まずは社内の営業担当者に調査先の候補を出してもらいましたが、営業担当者からすれば、自分のお客様に自社の印象を問うアンケートの送付にはどうしても不安が付きまといます。それ故、はじめは調査先の候補がなかなか集まらなかった。そこで、何度も粘り強く営業担当者と対話を重ね、調査の意義や背景を説明することで、理解と協力を得ることができました。

 

 久保田|調査では、厳しいご意見もいただく必要があると考えていたので、よい関係性が築けているお客様にだけ調査を実施すればよいというわけではありません。しかし、営業担当からすれば、そのようなお客様を調査対象候補には挙げにくい。そこで、そのようなお客様も含めて挙げてほしいということも繰り返し丁寧に説明しました。この点については、小島(同社代表取締役社長 小島和人氏)からのアナウンスがあったことも功を奏したと思います。

 

――日経リサーチのサポートについての印象をお聞かせください。

 

 飯作|調査の設計については、日経リサーチに伴走してもらい、専門的な視点で質問内容や設計をブラッシュアップすることができたと思います。調査の実施は日経リサーチにお任せしましたが、オペレーションも含め、とてもスムーズに実施できた印象です。特に「当社を推してくれているか」という質問について、多角的に質問を組み立て、調査後の分析結果に説得力をもたせるようになったのは心強かったですね。

 

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“高砂熱学推し”の源泉は技術力と誠実さ

 

――調査では、1社あたり複数人の回答を集計し、グループ単位で統合・偏差値化することで「高砂熱学愛」が数値で見えるようにしました。企業ごとのロイヤリティが可視化された調査結果について、どのような感想を持たれましたか。

久保田|回収率は高く、企業単位で8割、人ベースで約4割の回答がありました。おおむね当社のことを信頼してくださるお客様が多かった印象で、当社が提供する価値を認めていただいている実感も得られました。それでも回答には多様な意見が寄せられており、中には厳しい意見もあるのが事実。ただ「高砂熱学を推す」理由が把握できたことで、技術力や誠実さ、信頼感といった、我々が大切にしてきた部分が強く評価されていることが明らかになったのは大きな収穫です。

 

自由回答の項目では、現場の担当者の個人名を挙げてほめていただく声もあり、長年の関係性の深さを感じることができ、これまでやってきたことが間違っていなかったという自信につながる結果になりました。

 

――今回、自社の顧客を対象とした顧客ロイヤリティ調査と併せて、競合他社を利用しているビジネスターゲット(日経ID会員から対象者抽出)も対象とした競合比較調査の結果もご提供しましたが、こちらの調査についての感想もお聞かせください。

 

飯作|こちらも総じて高評価をしていただいた印象です。とはいえ、他社と比較すると「取引拡大」や「ビジネスパートナーとしての評価」が低めだった点が、改善すべきポイントとして明らかになりました。仕事に対する評価は高いものの、業務外の相談相手としてのスコアが他社に比べてやや低かった。このようなお客様の声はしっかりと受け止め、今後の営業活動に活かしていきたいと考えています。

 

川名|今の顧客を対象とした顧客ロイヤリティ調査の結果を分析すると、確かにコスト面での満足度は高くないものの、価格が「当社を推す」という意識にそれほど影響していないことが分かっています。つまり、価格には不満があっても、サービスや品質で選ばれているということです。

それに対して、日経ID会員向けの調査では、設備会社の選定において価格を重視する傾向が強かった。新規顧客獲得のためには、この点に改善の余地があることが明らかになりました。市場全体の動向は、今の顧客の声だけでは見えにくいため、競合比較や市場データの活用が重要なことも再認識しました。

日経ID会員に対する調査では、当社名は全く出さずに実施しているので、完全に公平な評価が反映されるわけですが、顧客ロイヤリティ調査の結果と同傾向だったことが、調査結果の信頼性を高めることになりました。複数の調査を組み合わせて活用できるのも、日経リサーチの支援を受けるメリットの1つですね。

 

 

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調査結果の共有とフィードバックで営業活動の足並みを揃える

 

――調査結果は社内でどのように共有されていますか。

 久保田|営業、技術、管理部門の管理職以上は、全員が閲覧できるようにしています。


――調査結果を受けて、どのような取り組みを進めていますか?

久保田|お客様から多様な期待や課題のコメントをいただいており、それを管理職から各担当者にフィードバックし、それぞれの課題に対して真摯に向き合うよう指示しています。調査の結果をもとに営業活動のベクトルを揃えていくつもりです。

 

――無形資産たる顧客価値を向上する取り組みについて、今後のビジョンをお聞かせください。

久保田|今回の調査で、お客様の声を深く掘り下げて、私たちの活動がお客様の企業価値向上にどれだけ貢献できているかが明らかになったので、この結果を真摯に受け止めて、さらにお客様のためになる取り組みを進めていきたいと考えています。ひいては、それが当社の企業価値向上に貢献するのはいうまでもありません。

 

また、現在は人材の流動化が活発な時代です。かつて当社と取引のあった企業の担当者様が、転職先で当社のソリューションを必要とするケースも増えています。ですので、対企業はもちろん、対個人のつながりをさらに大切にしながら、顧客価値向上に取り組んでいきたいと思います。

そのためにも、今回行ったような顧客ロイヤリティ調査は、定期的に実施する必要があると考えています。

 

 

高砂熱学工業_6                  世界初となる月面での水素・酸素生成への挑戦に着手した「月面用水電解装置」模型の展示の前で 

 

 

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