コンプライアンス意識調査の結果を年間100回以上の議論の場で活用
小野薬品工業株式会社
1717年(享保2年)の創業以来、独創的な新薬を生み出し続けてきた小野薬品工業株式会社では、コンプライアンス推進活動をチャレンジ精神溢れる事業を展開するために欠かせない取り組みの1つに位置付けている。日経リサーチのコンプライアンス経営診断プログラムを活用し、全社的に展開している取り組みの内容について、同社のコンプライアンス推進部の皆さんに話を聞いた。
小野薬品工業株式会社
コンプライアンス推進部の皆さん
(上段左から)部長 福森 氏、次長 西名 氏
(下段左から)小澤氏、小竹氏、菅原氏
※社名・部署・役職はインタビュー当時のものです
コンプライアンスはブレーキでなく、ガードレール
Q.貴社のコンプライアンスに対する考え方を教えてください。
福森氏 当社は創業以来、チャレンジする姿勢を大切にしながら、新薬を創製することで社会への貢献を果たしてきましたが、チャレンジには困難な状況に直面することが付き物です。そのような状況を乗り越えて「楽しく、安心して働ける環境」を醸成するためには、社内コンプライアンスの強化が欠かせません。また、いくら素晴らしいチャレンジでも、コンプライアンス的な問題があれば、社会、患者の皆様にご迷惑や損害を与えてしまいますので、プロジェクトはストップせざるを得ません。一般的にコンプライアンスというと、ブレーキの役割を果たすものだと考えられがちですが、私たちは社員を守り、法令違反を防ぐガードレールの役割を果たすものだと捉え、日々試行錯誤しながらコンプライアンス強化に取り組んでいます。
菅原氏 具体的には、毎年、上期に「コンプライアンス」、下期に「ハラスメント」をテーマにした研修を事業所ごとに行うとともに、例年10~12月をコンプライアンス強化月間に設定し、その期間内に事業所長主催の研修やディスカッションを実施しています。
通報・相談窓口の課題解消でハラスメント関係の相談増
Q.2018年に日経リサーチのコンプライアンス経営診断プログラム、2019年にはハラスメントに重点を置いた社内の意識調査を実施した理由を聞かせてください。
小澤氏 調査実施のきっかけは、社員向け相談窓口業務の委託先から「企業規模の割に通報件数が少ない」と指摘されていた内部通報制度の周知度を把握する必要があったことでした。2018年に実施した調査の結果、内部通報制度の周知度と信頼度に部署間で格差があることが分かりました。そして調査で浮き彫りになった課題の解消に取り組んだ結果、相談・通報件数は企業規模に見合うものになりました。
2019年も経年の変化を把握・分析するため、前年と同じ内容で調査を行う予定でしたが、相談・通報件数が増加した結果、ハラスメント関係の相談が目に付くようになったため、前回実施のコンプライアンス意識と組織風土の基本項目は継続し、新たにハラスメントに関する実態調査の項目を加えて実施しました。
部署ごとに課題を抽出し、全事業所のリーダーとディスカッション
Q.2回目のコンプライアンス意識調査の結果はどのように活用していますか?
小澤氏 調査の結果、会社全体や事業本部ごとに平均値として見れば大きな問題はないものの、事業所単位にまで掘り下げていくと、組織によってリスクのレベルに差が生じていたり、抱えている課題が異なったりしていることが分かりました。そこで、現在(2020年8月)、各事業本部や事業所、営業所等のリーダーを対象に調査結果をフィードバックするとともに、調査結果から抽出された問題点や課題をテーマに、全ての事業所のリーダーとのディスカッションを実施しています。調査結果から浮き彫りになった組織ごとの特徴をヒントとして提示し、自分たちの問題として自分たちで考える場を提供することで、ハラスメント等の問題を自分事として捉えるきっかけにしてもらいたいのです。
取り組みを進める中で、ハラスメント対策には「する側」への警鐘だけでなく、「される側」の理解や認識のバランスも重要だということが分かってきました。例えば、部下が不満に思うような状況でも、業務上必要であれば、短絡的にハラスメントと断定することはできません。そこで、これまで行ってきたリーダーを対象とした研修に加えて、全社員を対象に、リーダーの行動が正当であるケースも含め、ハラスメントに対する正しい理解を促す活動も行っております。個々の社員の反応を大切にしたいとの思いから、研修については出来るだけ50名以下の単位で展開したので、ディスカッションと合わせると100件以上をこなすことになりましたが、やり甲斐のある仕事になっています。
また、リーダーを対象としたディスカッションでは同席するコンプライアンス推進部のメンバーも、現場に寄り添い本音で話せる関係性を築くことを心がけています。交流する姿勢をしめすことで、コンプライアンス推進部に相談がくるケースも増えています。現在はコロナ禍対応で一連の取り組みはリモートでの展開となっていますが、ざっくばらんな雰囲気を大切にしたことで混乱なく実施できました。
菅原氏 小さな組織単位で差が生じるということは、1人のリーダーが及ぼす影響の大きさを示唆しています。かといって、ある組織のコンプライアンス意識が低いことをそのリーダーのマネジメントスキルと評価することは正しくないと考えています。なぜなら、今回の取り組みの中で「自分たちがルールや法律に違反しているのではないか」という不安を抱えながら仕事をしている社員が多いことも認識されたからです。つまり、会社側がそのような不安に気付いていなかった、十分なアドバイスができていなかったことにも原因があった訳で、随時、研修内容を見直すなどして対策を講じていくつもりです。
ベンチマークと比較してリスクレベルを確認
Q.日経リサーチのサービスの印象を教えてください。
福森氏 調査の分析やこちらの疑問に対する回答に納得感があったことは非常に心強いものでした。また、コンプライアンス経営診断プログラムは調査結果をベンチマークと比較できる点を高く評価しています。例えば、どの様な企業でも営業職と事務職では、コンプライアンス違反の種類やリスクレベルは異なるでしょう。ですから、社内だけで比較したのでは調査結果の適切な理解につなげることは困難です。しかし同規模の一般企業や同職種との比較情報を得たことにより、自社のリスクレベルを理解した上で迷いなくディスカッションに臨むことができました。
実施背景
- これまで取り組んできたコンプライアンス活動の浸透度を測りたい
- 通報件数が少なかった内部通報制度の周知度を把握したい
- 相談数が増えたハラスメントの状況を捕捉したい
調査結果
- 内部通報制度の周知度について、部署間で格差があることを把握
- ハラスメントの状況について、全体的には問題がないものの、事業所や営業所単位にまで掘り下げると、細かい課題があることが浮き彫りに
活用
- 調査結果で明らかになった課題を解消し、内部通報制度の周知に成功
- ハラスメントを中心とした意識調査の結果を事業本部、事業所、営業所のリーダーにフィードバック。具体的な課題を議題にしたディスカッションを実施
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