Case

現場の“勘”をDXで検証、人流計測で販促効果を改善-データが販売員のエネルギー源に

株式会社グレープストーン

「東京ばな奈」「銀のぶどう」などで国内だけでなく海外からの観光客などにも絶大な人気を誇る菓子製造・販売の株式会社グレープストーン(東京都中央区、荻野惇社長)。コロナ禍の2020年からLiDARを使った人流計測サービス「スキア」を導入、大丸東京店と西武池袋店で店頭のお客様の動きを把握し、マーケティングや販売促進の施策立案や接客力の向上に役立てています。
販売統括部マネージャーの小菅友里氏、経営管理本部の美田佳奈子氏にお話をうかがいました。

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株式会社グレープストーン
販売統括部マネージャー
小菅 友里 氏(右)

経営管理本部
美田 佳奈子 氏(左)
※社名・部署・役職はインタビュー当時のものです

事例のポイント

抱えていた課題

  • 店頭の販売員の感覚と実際の売り上げ状況にずれがあった
  • 店頭のディスプレイなどの施策の評価が、販売員の感性によって違っていた
  • 販売員が何が正しい施策か自信が持てず不安が生じていた

スキア導入によってわかったこと

  • 通行客の流れを可視化することで、売り場としての「良い場所」「悪い場所」がわかり、売りたい商品をどこに陳列すればよいかが明確になった
  • 通行客のうち、売り場のカウンターに惹き付けたお客さまの比率「惹きつけ率」などの推移をデータ化することで、新商品の反響や、ディスプレイ、店頭での呼び込みなどの販促施策の効果測定ができるようになった

スキア導入の効果と今後の展開

  • 売上や販促施策の評価として、販売員の感性だけでなく、客観的な効果検証ができ、商品のリニューアルや店頭のディスプレイなどの販促活動の改善ができた
  • ダッシュボードで表示される日々の計測データをもとに、販売員自らディスプレイや声掛けの工夫をするきっかけになった
  • 販売員の接客スキルの評価や、モチベーション向上としても有益な施策になっている

         

GS店舗写真

         西武池袋店(バターステイツ)

現場の「感覚」、データで補う

Q. お二人の社内での役割、またどんな課題に直面されていたのかを教えてください

美田 私は経営管理本部として、日々の売上を社内で共有する仕事に携わっています。販売員の感覚と実際の売り上げとの間に、微妙なずれがあると感じてました。なぜこういう結果になったかが分からない時がある。当社は販売員の感覚を大事にする会社ですが、だからこそ、その感覚を数字面でカバーするデータが何かあるといいなと思っていました。

 

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小菅 販売統括の立場として、お客さまと常に接している販売員の声を、お客さまの反応として社内にフィードバックしています。ただ販売員によって感性が違うので、どのような施策が有効だったのか、判断を迷う場合がありました。売上に大きく影響が出れば分かりますが、あまり大きくないと、手ごたえがあったのか、的外れだったのか、見極めが難しかった。販売員としては、自分たちがやったことへの思い入れなどもあるので、適切な判断ができているのか不安が生じてしまう。
人流計測でお客さまの反応を数値で把握することで、冷静に施策の評価をして、販売員の不安をなくし、頑張るきっかけが作れればと考えました。

お客さまの「惹き付け率」から売り場を改善

Q.スキアを導入した決め手は何でしたか

小菅 単に店頭の通行人数だけでなく、お客さまが進む方向やスピードなどが分かるのがいいと思いました。お客さまの購買行動がきちんと把握できると感じました。

Q.導入してどんなことが新たな気づきとして得られましたか

小菅 店内の良い場所、悪い場所がはっきり分かり、売りたい商品をどこに陳列すればいいかわかりました。まだチャンスがありそうだ、ということが数字でわかれば、改良、改善していくきっかけになります。

美田 導入後の初期に毎週、店頭ディスプレイやショーケースの位置、商品の並べ方などをいろいろ変えてみて効果の検証に使ったことが、店舗の方向性を確認する上で有意義でした。ディスプレイを変えて売上が上がった。ではなぜ上がったのか、お客さまがよく目にする位置だったからか、売れる位置なのか、販売員の立ち位置なのか、理由の裏付けと共通化ができました。その後の店舗リニューアルの際に役立ちました。

 

小菅 あとは販売員のエネルギーが増した気がしますね。細かいディスプレイなどをどこに置くか、気にかけて工夫する販売員が出てきています。通行客のうち、店頭で立ち止まってくれるのは2割、という数字が出ると、じゃあ残り8割を惹きつけるには何をすればいいか。店頭の通行客のうち、どれだけ店頭で立ち止まってくれたかというお客さまの「惹き付け率」の推移が毎日ダッシュボードで出てくるので、昨日は下がったから今日は頑張ろうとか、自分の行動を客観的に見れるツールだと感じています。

 

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小菅 施策の評価については、商品そのものの強みやディスプレイ、天候、イベントなどの要素に加えて、どうしても自分や同僚の頑張った思いとか、一種の現場の忖度が入ってしまうんですよね。お客さまは本当に関心を持って足を止めてくれたのかが客観的に分かるデータはとても有意義です。
たとえば一時期、生菓子の惹き付け率が落ちてきたことがデータで顕著になったので、ケーキのデザイン自体をもっと立体的で目立つように変えるという決断をしました。その結果、立ち止まる人が増えて、売上の改善につながりました。

パッと見てわかるダッシュボード、ゲーム感覚の面白さ

Q.導入に際して、社内の抵抗感や戸惑いはなかったですか?

美田 当初は自分たちが監視されるのでは、という不安や抵抗感を持つ販売員もいました。そうではなく、人員の配置や呼び込みの仕方などを効率化して売上アップにつなげるためです、ときちんと説明して解決しました。


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小菅 若い販売員は、感覚的な話では指導が伝わらないことも多くて、逆にこのような数値を示すことで納得感を持つ人も多いです。一方で、数字への苦手意識を持つ人もいますが、ダッシュボードの見せ方を分かりやすくしてもらったことで、ゲームのように面白がってくれるようになりました。

美田 諦めずにわかる人を増やしていって、他の人は理解しているんだという雰囲気作りをしています。あとはパッと目でみて分かることも大事です。ダッシュボードに表示する数値の種類は当初より減らし、見やすくしました。人の動きが動画で描写されるのもとても好評です。

 

              ▼惹き付け率ダッシュボードのイメージ ※データはダミーです

ダッシュボードイメージ

定期ミーティングや店頭アンケート、調査会社ならでは

Q.日経リサーチの良かった点、印象に残っている点はありますか

美田 2週間に一度のミーティングで、たとえばダッシュボードをこういう風に分かりやすくしてほしいといった希望を出すと、どんどん直してくれたのが助かりました。細かなフォローをしてくれたのが良かったです。
また調査会社ならではの提案だと感じたのは、当社のブランドをどこで知りましたかといった店頭アンケートを実施してくれて、普段の接客でなかなか聞けないお客さまの本音が聞けて有意義でした。当社はこのようなアンケートをあまりやっていなかったのですが、それを機にホームページやSNSでの発信の強化も考えるようになり、ブランド認知の改善につながりました。

 

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Q.今後の展望を教えてください

美田 今のデータはお客さま中心ですが、販売員の動き方についても個々に識別したデータを集めたいと思っています。お客さまがどんどん近づいてくるような優秀な販売員の動きを、感覚だけでなく、きちんとデータで分析して、他の販売員にも見習ってもらいたい。目立たなかったけどデータを見たら実はすごく優秀な人だったんだ、といった発見も出てくると思います。

 

小菅 その施策に手ごたえがあったのか、数字の推移が軽微で、それが有意な差なのか判断しにくい場合もあります。そうした読み解きがもっと容易にできるようになるといいですね。
また、お客さまに対する接客対応のスキルを測る「GSS グレープストーンスタンダード」という制度があるのですが、お声掛けしたお客さまをきちんと誘引できているかがチェックできるので、GSSのレベルアップにもつながっています。販売員のスキル向上という点でも、データの活用を推進していきたいです。

 

 

[インタビュー後記]

小菅様、美田様、ありがとうございました。直近の販促施策における効果として、新製品の「半熟チーズケーキ ミディアムレア」をスキアでわかった「売れる場所」に置いた結果、目標の1.5倍の売れ行きになったとのこと。販売戦略に貢献でき、嬉しく思います。


また最後に小菅さんが触れておられる「GSS グレープストーンスタンダード」制度では、研修と試験を経て、4月に各スタッフに良い点、悪い点のフィードバックがあったそうです。その後は各自が工夫して改善を進め、実際におすすめヒット率は毎月上昇しているとのこと。販売員の方々のモチベーション向上にもつながっているようで、ありがたいです。

 

皆さまがデータをより有効に活用できるよう、今後さらにサービスの改善に努めてまいります。

 

 

LiDARの技術で人の動線や密集度を計測・分析

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