グローバル1万人調査|世代間の違いからみるブランド力に寄与する要素とは
多様化するステークホルダーとコミュニケーションするうえで、有用な施策や、効果的なアプローチの検討にお悩みとの声を多く聞く。デジタルネイティブ、ソーシャルネイティブに代表されるような若い世代の習慣、価値観の違いなど、その背景は様々だ。
日経リサーチでは、アメリカ、ドイツ、フランス、中国、タイ、ブラジル、日本の7カ国、あわせて約1万人を対象に、ブランド価値を測定する独自調査を実施。本コラムでは調査結果のうち、購買利用における要因重要度について、世代間の違いにフォーカスして紹介する。これは、日経リサーチが新たに開発した調査フレームワークを構成する要素の1つだ。コラム後半でフレームワークについても紹介する。
2024年5月に実施したウェビナーでも、同調査の結果を国別の違いを中心にとりあげている。アーカイブ動画を公開しているので、本コラムをお読みいただく前に、ぜひそちらもご覧いただきたい。
年代別にみる購買利用における要因重要度
今回取り上げる「購買利用における要因重要度」は、「購入・利用する企業や製品・サービスを選ぶ際に、以下の項目をどの程度重視しますか」と問い、下記の10項目の合計が「100」になるよう、数値で回答を得た。
基本価値 | 品質(Quality) |
価格(Price) | |
便宜価値 | 利便性(Convenience) |
サービス(Service) | |
感覚価値 | ロゴ(Logo) |
デザイン・センス(Design and style) | |
イベント・キャンペーン(Event and campaign) | |
広告・CM(Ad and commercials) | |
評判(Reputation) | |
観念価値 | 伝統・歴史(Traditional and history) |
まず、今回の調査対象とした7カ国横断での全体・年代別の結果を見ていく。
上記の表は、7カ国の全体・年代別の結果だ。年代があがるほど、購入時に「品質」や「価格」からなる基本価値を重視する傾向が強い。ポイントは、20代のスコアをどう解釈するかだろう。基本価値を重視しながらも、感覚価値のうち、「評判」の重要度は他の年代と比べて倍だった。いわゆる口コミも今はリアルだけでなく、SNSでも活発に発信・収集されており「評判」が伝わるチャネルは多岐にわたる。“バズる”、“炎上”などという言葉に象徴されるように、企業側も自社製品の「評判の立ち方」には神経を使う時代だ。
このように、20代は今どきらしい結果を見せる一方で、「伝統・歴史」のスコアがシニア層を上回り、全年代でトップの高さとなる一面もある。決して「評判」だけを重視して判断している訳ではない、という姿勢が透けてみえるようだ。若い世代の理解の難しさは、こんなところにも表れている。
国別・年代別にみる購買利用における要因重要度
さらに国ごとに年代別の結果をみてみよう。日本、タイ、アメリカ、ドイツの4か国について、同一のデータを比較する。
日本
日本は、各年代とも「品質」「価格」からなる基本価値が重視する要素の半分近くを占め、「品質」より「価格」を重視する傾向がある。また、若年ほど「広告・CM」「デザイン・センス」などの感覚価値が高まる傾向にあり、20代は、感覚価値の多くの項目で他の年代を上まわった。今後、若い世代が、親世代、シニア世代へと年を重ねる中で、どのような行動変化があるか注目したい。
タイ
タイは、20代、30代で感覚価値が全年代平均を上回った。また年代別で価値観の違いが明確に表れており、20代、30代は基本価値よりも感覚価値の重視度が高いのに対し、50代、60代では基本価値が感覚価値を上回る傾向にある。タイの中では50代、60代の基本価値が高いが、スコア水準は日本ほどではない。
アメリカ
アメリカは基本価値に続いて、感覚価値が35.9%と大事な要素であることがわかる。「広告・CM」への反応の高さは、今回の調査対象国の中では、中国に次ぐ2番目の高さ(中国全体、11.2%)で、プロモーション効果が大きいと推測される。基本価値では、「品質」より「価格」が上回る傾向がみられる。
ドイツ
ドイツは、基本価値の重要度が20代以外では日本のスコアを上回る高さ。20代、30代でも調査対象国の平均と比較して基本価値が高いことが特徴的だ。アメリカと異なり、「価格」より「品質」が上回る。
個々のデータから見えるマーケティング施策の可能性
「〇〇製品の購買の決め手は何ですか」という類の質問は、マーケットリサーチでよく聞かれる。聴取の目的は顧客の購買の決め手を把握し、顧客の行動に自社製品やコミュニケーションをフィットさせることだ。そこにブランドとしても支持される状況が加われば、好循環でマーケティングが回っていく。
日経リサーチが提供するブランド貢献分析は、企業の魅力との掛け合わせで「ブランドの貢献力」を見える化できるほか、企業ブランドが購買にどの程度貢献しているのかもあぶり出せるものだ。海外業務を担当するマーケターにとっては、今回の調査結果は感覚値に近いのではないだろうか。データで見える化すると、様々な施策提案にも説得力が増す。
価値観は個人によって異なる。今回提示した数字は、すべて個々のデータの積み上げである。積み上げているということは、ブレイクダウンを可能にする。個々の回答から得られるインサイトは、グローバルでは特に価値を見出す。
日経リサーチのブランド価値の測り方
日経リサーチは、無形資産であるブランドの資産価値を、総合指標「日経リサーチ Brand Equity Score(以下、NBES)」として算出する新指標を開発した(下図参照)。
NBESは、「ブランド力(日経リサーチBrand Power)」と「ブランド貢献分析(日経リサーチBrand Contribution)」から算出する。またNBESは、ブランドが財務的にどのくらい価値があるのかを示す指標である「日経リサーチBrand Value」の算出にも活用している。
ブランド貢献分析は、「製品やサービスを利用する際に、どの程度ブランドが貢献しているか」を示すため、企業の魅力点と個人の購買利用における要因重要度を掛け合わせて分析する。2つの要素を同様の項目で測っており、基本価値、便宜価値、感覚価値、観念価値の4つの価値を10の項目に整理している(下図参照)。
購買利用時に重要と考える項目について、企業の印象・イメージとして魅力を感じているほど、ブランド貢献が高い企業と言える。本コラムでは2つの要素の内、購買利用における要因重要度を取り上げた。
(エグゼクティブ・グローバルリサーチ・コンサルタント 香本真江)
調査概要 l 調査手法:インターネット調査 l 調査地域:アメリカ、ドイツ、フランス、中国、タイ、ブラジル、日本 l 調査対象条件:20~69歳の男女(性年代で均等割付) l 回収サンプル数:各国約1,000s ※日本のみ約4,000s l 調査実施期間:2023年10月 ※フランス、中国、ブラジルの結果をご覧になりたい場合はお問い合わせください。 |
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