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何が違うか?成功する社名変更と失敗する社名変更 ー分かれ道はここにある|「ブランド戦略サーベイ」を読み解く

近年、自社の事業ドメインの拡張・変更、グローバル化への対応に向けて、社名を変更する企業が増える傾向にある(図1)。ただし、社名の認知・理解に対する影響は大きく、これまでのブランド資産を有効に活用できず、認知度が下がるケースがある。

 

本稿では、コーポレートブランド力を21年に亘って調査してきた実績を持つ「ブランド戦略サーベイ」のデータから、社名変更のブランドスコアへの影響を分析し、社名変更の役割を確認していきたい。

 

図1 年別社名変更社数の推移(日本取引所グループHPより)

図5-1

社名変更と認知度の関係

社名変更にはいくつかのパターンがある。大きく分けて、以下の9パターンが考えられる。

 

パターン
A)知名度の高い事業ブランドやプロダクトブランドへの変更 ENEOS、TOYO TYRE、JCOM など
B)合併や統合などを受け関係社の社名を併記 アルプスアルパイン など
C)合併や統合などで併記した社名を集約して短縮化 日本製鉄、三菱UFJ銀行 など
D)グループ経営の核としての存在として変更 ソニーグループ、楽天グループ、セイコーグループ など
E)コーポレートブランドの別表記(通称等)への変更 ニップン など
F)親会社のブランド名や資本系列の会社名を冠にした社名への変更 富士フイルムビジネスイノベーション、住友ファーマ など
G)資本関係の変化による変更 ハンズ、スリーエム ジャパン など
H)合併や事業構造・ドメインの変化に伴い、その目的に合わせた社名/英語(グローバル)社名への変更 AGC、UBE、レゾナック、BIPROGY、ニデック など
I)外資系企業の日本へのローカライズ対応 セールスフォース・ジャパン など

 

 

社名変更は、企業それぞれの事情や将来に向けた戦略から実施しており、単純な評価は難しいが、ブランドデータを見る限り、社名変更後の認知度の状況は企業によって違いがみられる。

まずはパターン別に、認知度の上昇・下落の状況から、社名変更によって認知度向上に成功したかを見た(表1)。

 

ブランド戦略サーベイを実施してきた21年間のうち、社名変更が行われた77社について集計をしてみると、全体的には17勝45敗15引き分けだった。認知度向上に成功した勝率は2割強という結果である。

 

表1 9パターン別 社名変更前年と社名変更翌年との認知度の勝敗表(前年スコア±2%は同等と判断)~ブランド戦略サーベイ2003から2023・コンシューマー編より~

図2

 

(注記:社名変更当年度は旧社名をつけて測定するため、旧社名が外れる翌年度との比較を行った。また21年間のうち2回以上の社名変更をした企業は別途換算した。)

 

当然、今までなじみのあった企業名を変更したことから、認知度が落ちるのは避けられない。例外は、パターンAの「知名度のある事業・プロダクトブランドへの社名変更」を行ったケースで、その場合、59%まで勝率が上がる。

 

ただし、社名変更の翌年度までは認知度が低下したとしても、変更の意味を理解し、コーポレートブランドを磨き続ける企業の場合、その後、上昇に転じてくる。その個別の事例を図2でみてみよう。

 

図2 社名変更前後の認知度の変化(社名変更前年を100とした場合:コンシューマー編)

図4-1

 

例えば、AGC(旧商号は旭硝子)は、社名変更をした翌年までは認知度が低下したが、翌々年に上昇に転じている。同じようにニップンや富士フイルムビジネスイノベーションも、わずかではあるが、変更の翌々年に認知度を回復させている。

 

AGCは2019年に、旧社号の「旭硝子」から「AGC」に社名変更をしたが、タレントを起用したテレビCMなどの大規模なコミュニケーション活動を行った。ブランド戦略サーベイで、直近一年間での企業との接点・接触をアクセスポイントとして測定しているが、下記の通り、2019年から2021年にかけて「テレビ・ラジオCM」が上昇傾向にある。そしてそれに沿う形で新社号の認知度も上昇しており、積極的なコミュニケーション活動が認知度向上に結び付いたと考えられる。

 

AGC

新たなパーセプションの獲得が成長の鍵

社名変更に際して、企業は経営層の想いに加えて、現在の事業内容と社名とのギャップ、会社の今後の方向性を加味し、社内での慎重な検討、および十分な外部へのコミュニケーションにより理解の促進を図っている。


ただ、ここで大事なのは、認知度の向上だけでなく、過去のアセットも活かしながら、今後の企業のあるべき姿、未来価値をきちんとステークホルダーに伝えることだろう。

 

また認知度が上昇しても、新しい価値が伝えられなければ、ステークホルダーからの期待に応えられなくなり、結果的にブランド力が低下してしまう懸念もあるのだ。新たな企業価値の再構築がリブランディングと言えるだろう。


ステークホルダーからの評価が、企業が目指す “ありたい姿”として表れてこそ、新たなコーポレートブランディング活動の成果と言える。


社名変更によって、ブランドイメージが変化した事例を見てみよう。例えばAGCでは、一般消費者からのブランドイメージの評価として、「明るい」「活気がある」に加え、「革新的」などが上昇している。富士フイルムビジネスイノベーションでも「企画開発力がある」という項目が徐々に上がってきていることがわかる。新たなパーセプションの獲得ができつつあるという例といえよう。


BtoB事業を展開する企業においては、ビジネスターゲットからの評価をより重視する企業も多いだろう。

 

例えば、日立オートモティブシステムズと、本田技研工業傘下の自動車部品メーカー3社の統合によって発足した日立Astemoは、2021年の統合後にビジネスパーソン全体からの評価を高めている。表2のように「一流である」の上昇を含め、「革新的」、「将来性」「品質の高さ」「誠実」など、自社の価値をターゲット市場に浸透させている。

 

日立Astemoは、SUPER GTなどのモータースポーツなどのスポンサー支援をしているが、モビリティ事業におけるブランド資産を活かして自社の企業価値を伝えていくのは、B2Bの企業においては有効な施策と言えよう。

 

表2 日立Astemoの統合前と統合後のイメージスコアの変化(ビジネスパーソン編)

図4

 

社名変更を「やりぬく覚悟」

社名変更やリブランディングは、ともすると、これまでのブランド資産をリセットしてしまうデメリットが考えられる。自社として目指すブランディングの方向性を、どのようにステークホルダーに理解してもらい、ありたい姿に近づけていくのか。これが目指すべき「効果」と位置付けられる。

 

そのためには、社名変更の決定時だけでなく、その後も継続的に新しい価値を提供していくことが必要である。会社として「やりぬく覚悟」が欠かせない。

 

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