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日経読者に聞く|ウクライナ侵攻1年「仕事に影響」 製造業で6割強に -コスト高・供給網の混乱、経営悪化の声も

ロシアによるウクライナ侵攻から1年、終わりの見えない戦争はビジネスパーソンの仕事の現場にも様々な影響をもたらしている。日本経済新聞の読者を対象にした2月の調査で「仕事で影響を受けている」と答えたのは全体の43.6%、製造業では63%と過半数を占めた。原材料高や供給網の混乱は幅広い業種に及び、事業計画の遅れや勤務先企業の経営悪化などを指摘する声も聞かれた。


調査は日経リサーチが2月7〜10日、日経電子版などの利用に必要な「日経ID」の所有者(20歳以上)を対象にオンラインで実施し、1425人から回答を得た。

 

なお、生活への影響や、日本政府のウクライナ支援に対する意識については、2月20日付け日経朝刊(電子版は2月19日)の記事で詳しく分析している。

電子版記事:ウクライナ支援「生活に悪影響生じても」7割 読者調査

1.海外取引や原材料・エネルギー価格に経営が左右されやすい業種で影響大

ウクライナコラムグラフ1-1

 

 「影響を受けている」と回答した比率が高かったのは製造業のほか、農林水産・鉱業(83.3%)、飲食店・旅行(75%)、エネルギー(57.1%)、卸売・小売業・商業(56.8%)などで、総じて海外との取引が多く、また原材料やエネルギー価格に経営が左右されやすい業種だった。

 

 一方で「影響を受けている」との回答が少ないのはコンサル・会計・法律関連(16.7%)、人材サービス(23.8%)、医療・介護・福祉(30%)、金融・証券・保険(34.6%)などで、これらの業種ではいずれも「影響を受けていない」という回答の方が多かった。「影響を受けていない」と答えた比率は全体では42.7%だった。


 年齢別では顕著な差はないものの、30代、40代で「影響を受けている」との回答が比較的多く(30代44.8%、40代46.9%)、企業でいうと中堅やベテラン社員、いわゆる働きざかりの世代が、現場の一線で奮闘している様子がうかがえる。

 

2.世界インフレの波はほぼ全ての業種に影響を及ぼす

ウクライナコラムグラフ2-1

 

 仕事面でどんな影響があるのか。複数回答可で聞いたところ、予想通り最も多かったのは「原材料コストの上昇」で、73%の人が指摘した。製造業や建築・不動産、飲食店・旅行で同比率は約9割に達し、放送・広告・出版・マスコミ、公務員(教員を除く)でも約4割あった。エネルギー大国ロシアからの輸入規制などで一気に強まった世界インフレの波は、ほぼすべての業種に及んでいる。「コスト高は新常態」(日経ヴェリタス2月19日号)とも言われ、逆風をどう乗り切るか難しい課題が続く。


 「供給網の混乱」も46.1%と半数近くの人が指摘した。業種別ではエネルギー(62.5%)、卸売・小売業・商業(59.5%)など、海外からの輸入がカギになる業種で回答が多かった。

3.多様な経路で影響、成長戦略の足かせも

 調査結果をつぶさにみると、これまであまり指摘されてこなかった多様な形の影響もうかがえる。教育・教育学習支援関係で「海外との往来への支障」(57.1%)という回答が目立ち、通信サービス・ソフトウェアや人材サービスでは「海外取引先の経営悪化」(40.0%)という回答が多く見られた。収益の拡大をめざし海外事業に活路を求める企業は多く、戦争の長期化はそうした成長戦略にも影を落としている。


 見逃せないのは「事業計画の遅延」(17.4%)、「勤務先の経営の悪化」(17.2%)など、より深刻な状況を訴える回答も一定数あったことだ。「勤務先の経営の悪化」については製造業や運輸で2割を超えた。今後の展開次第では、経営戦略の見直しや業績のテコ入れを迫られる企業が相次ぐ可能性もある。


 そもそも多くのビジネスパーソンにとってウクライナはなじみが薄く、ロシアと直接取引をした経験がある人も少なかったはずである。それでもひとたび有事が起こると、さまざまな経路で生活や仕事に影響が及ぶ。ウクライナ戦争は世界経済が抜き差しならない相互依存関係にあることをあらためて示した。今回の日経リサーチの調査からも、その一端が読み取れよう。


 外交当局者や軍事専門家らのおおかたの予想をくつがえす形でロシアはウクライナに侵攻した。それだけにこれから先を占うのは難しく、戦争が長期化した場合の経済への影響度合いも読みにくい。ビジネスの面で当面の注目は、各社がグローバル戦略にどう向き合うかだろう。固定観念に陥らず、信頼できる調査やデータを丹念に追いながら、変化に柔軟に備えることがますます重要になる。

 

調査概要

実施日: 2023年2月7日~2月10日
対象者: 20歳以上の方(日経ID会員)
回答者数: 1,425人
調査手法: インターネット調査

 

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