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日経読者に聞く|リスキリングで「スキルアップ」43%「仕事の幅広がる」29% -学び直しに一定の効果、「転職」「起業・独立」は5%以下

新しいスキルや知識を習得する「リスキリング」について日経リサーチが日本経済新聞電子版の読者を対象に調査したところ、新たな学びにより「スキルアップした」と答えた人が全体の43%、新しい職務や事業への転換などで「仕事の幅が広がった」との回答も29%あった。

リスキリングは日本経済活性化の一つのカギとされるが、個人のレベルでは一定の成果が出ているようだ。「転職した」「起業・独立」はそれぞれ5%弱にとどまり、人材の流動化を進める効果は限定的だった。

調査は日経リサーチが10月23~26日、日経電子版などの購読に必要な「日経ID」の所有者を対象にオンラインで実施した。全体で1628人から回答を得た。

日経電子版記事:リスキリング、4人に1人はデジタル関連 日経読者調査(11/24付)

1.リスキリング「取り組んでいる」は47% -2030代は5割台と高く

 

リスキリングに「現在取り組んでいる」と答えたのは全体の47%と、半数近くに上った。「現在取り組んでいないが、過去取り組んでいた」(23%)を合わせると、7割に達した。「取り組んだことはない」は30%だった。

 

図1-2
リスキリングに現在取り組んでいるのは若い世代が比較的多く、20代、30代で57%だった。シニア層も新たな業務に向けた学び直しの必要性が指摘されているが、50代で43%、60代は31%と、相対的に低い水準にとどまった。

役職別では「部長、課長、係長クラス」の中間管理職層が51%と多く、「派遣・契約社員」は35%で最も少なかった。
 

2.学習分野は 「語学」が38%で最多 -「AI・機械学習」も4人に1人が学ぶ

 

では、ビジネスパーソンはどのような分野のリスキリングに取り組んでいるのか。

 

全体で最も多いのは「英語など語学」(38%)で、次が「プログラミングなどIT関係」(27%)だった。それ以外では「マネジメント」(25%)、「会計・簿記」(25%)、「AI・機械学習」(24%)、「データサイエンス」(19%)などが上位に並んだ。

業種別で見ると、「通信サービス・情報処理・SI・ソフトウェア」業種で「プログラミングなどIT関係」を学ぶ人が48%と多く、「AI・機械学習」も45%が学んでいた。こうした業種で、最新のデジタルスキルを学ぶ必要性が高まっていることがうかがえる。

また新たな成長に向けグローバル化が進む「素材・食品・医薬・化粧品」業種で、「英語など語学」を学ぶ人が60%に達しているのも目立った。

年齢別では、20代で「会計・簿記」を学ぶ人が37%と、比較的高い比率になった。また「AI・機械学習」を学ぶ人は60代で37%と、全世代で最も比率が高いという結果になった。シニアになっても、新しい分野について果敢に学ぼうとする人が少なくないようだ。

 

3.リスキリングで「年収上がった」6%、「昇進・昇格」は5%

 

リスキリングは仕事に必要なスキルや知識を新たに得ることで一人ひとりの生産性を高めるとともに、成熟産業から成長産業に人材のシフトを促し、経済を活性化させる効果が期待されている。

では、実際にリスキリングに取り組んでいる人には、どのような変化があったのだろうか。

 

コラム画像2

 

「リスキリングに取り組んだ結果、あなた自身にどのような変化がありましたか」という質問で、最も多い回答が「スキルアップした」(43%)だった。「仕事のモチベーションがアップした」(31%)、「仕事の幅が広がった(新しい職務や事業への転換)」(29%)が続いた。

「年収が上がった」(6%)、「昇進・昇格した」(5%)など、目に見える形で効果が出たという人も一定数見られた。年齢別でみると、30代で「年収が上がった」が10%と、全世代で唯一2桁になった。「昇進・昇格した」は、40代の8%が最高だった。

新たに得た知識やスキルを活用して、新天地に移る人も一部にいる。ただ「転職した」(5%)、「起業した」(2%)、「独立した」(1%)などの比率は、いずれも5%以下にとどまった。これらは年齢別でみても大きな差がなかった。

リスキリングによる変化についての自由回答を見ると、「正社員に登用された」(30代、一般社員)という人のほか、「資格を取得した」(50代、部長・課長・係長クラス) といった回答が複数あった。「業務の効率が上がった」、「視野が広がった」、「人脈が広がった」、「向上心、やる気が出た」など、リスキリングによる変化に手ごたえを示す回答も多かった。

一方で「学んでいる途中のため分からない」、「始めたばかりのため、効果はこれから期待したい」という声も目立つ。最近学び始めたばかりという人も多く、年収の増加や昇格・昇進、転職など具体的な成果にどれだけつながるかを見極めるには、なお時間がかかりそうだ。

 

4.リスキリング費用、76%が「個人の負担あり」、「勤務先負担」も4割

リスキリングを継続するには当然、費用も必要になる。今回の調査では、費用をだれが負担しているかについても聞いた。

「リスキリングの費用負担についてあてはまるものを全てお答えください」という質問に対して、「個人で費用負担がある」と答えたビジネスパーソンは76%で、多くの人が自らお金を出して学んでいる。

一方で、「勤務先で費用負担がある」という回答も43%あった。ただし、従業員数が1~50人未満の企業では29%にとどまるなど、企業規模別で差が見られた。勤務先での費用負担があるという回答は、従業員数5000~2万人未満の企業に勤めている人で最も高く、58%だった。

リスキリングにかかる年間の費用については、1万~3万円未満が24%と最も多かった。10万円以上という回答も15%あった。

 

5.勤務先の「支援あり」は全体の半数 -企業規模で差、中小ほど低く

 

勤務先の企業は、社員のリスキリングをどのくらい支援してくれているのだろうか。

 

図3-3

 

「とても支援してくれている」(13%)、「やや支援してくれている」(36%)の合計は49%となり、ほぼ半数だった。

勤務先の従業員数の規模によって違いが顕著で、2万人以上の企業では「支援してくれている」の合計値は63%だったのに対し、従業員数1~50人未満の企業では34%、50~300人未満では38%と、中小企業になるほど低くなった。

かつては再就職に向けた職業訓練のイメージが強かった社会人の学び直しは、最近では身近なものになり、多くの人が取り組むようになった。スキル向上などで一定の成果もあらわれ始めており、こうした動きを持続的なものにするには、中小企業も含めて費用面などきめ細かな対応が必要になりそうだ。

 

調査概要

    「仕事に対する意識アンケート」

実施日: 2023年1023日~26
対象者: 20歳以上のお勤めの方(日経ID会員)
回答者数: 1628人
調査手法: インターネット調査

 

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