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米在住の日経読者に聞く|米大統領選、トランプ氏勝利なら「会社に悪影響」56% -貿易摩擦、世界の不安定化など懸念

 11月に実施される米大統領選挙は、民主党のバイデン大統領と共和党のトランプ前大統領による一騎打ちの構図になる。

 

 米国在住の日本経済新聞の読者らを対象に「大統領選挙による会社への影響」を聞いたところ、トランプ氏勝利なら「悪い影響がある」と指摘する回答が56.4%と、過半数を占めた。中国との貿易摩擦や環境政策の転換、世界情勢の不安定化などを懸念する声が多い。一方、バイデン氏再選の場合は「影響はない」の回答が4割近くあった。

 調査は日本時間で4月16~22日、日経電子版などの利用に必要な「日経ID」を登録している米国居住者を対象に、日経リサーチがオンラインで実施した。今回は有職者55人に絞り、調査結果を分析した。

1.トランプ氏返り咲きに警戒 -影響「わからない」も2割

 

 米国大統領選挙の勝敗の行方はなお混とんとしているが、トランプ氏が大統領に返り咲いた場合、それまで4年間の民主党政権下での政策の多くが覆される可能性がある。日本企業の経営環境も大きく変化しかねない。

 今回の調査でもトランプ氏当選に警戒感を示す回答が目立った。「共和党の勝利(トランプ政権)の場合、会社にどんな影響があるか」との質問に対し、「悪い影響がある」が32.7%、「やや悪い影響がある」が23.6%で、これらを合わせると56.4%となり、半数以上の回答者が「悪い影響」を指摘した。

 年齢別に見ると、管理職・経営者層が多いと見られる50代でトランプ政権誕生への警戒が目立ち、この世代で「悪い影響」の合計値は72.2%となった。

 一方、「良い影響がある」は全体で1.8%、「やや良い影響がある」は10.9%で、合計で12.7%にとどまった。「影響はない」は10.9%だった。

 パフォーマンスを重視しながら実利を求めるトランプ氏の行動は読みにくく、実際にどんな政策を打ち出すか不透明な面も多い。そのためか、政権誕生による会社への影響については「わからない」との回答も20.0%あった。

 

米大統領選挙による会社への影響_共和党勝利の場合

2.バイデン政権なら「影響なし」4割弱に、「悪い影響」も16%

 

 民主党のバイデン政権が継続する場合は、会社への影響は限定的と見る人が多い。良くも悪くも政策の継続性が維持されるため、「影響はない」との回答が最多となり、38.2%あった。

 「良い影響がある」は10.9%、「やや良い影響がある」は20.0%で、合計は30.9%だった。50代では「良い影響」の合計値が38.9%に上った。

 なかなか収束しないインフレ、国境管理や外交面の問題など、現政権には不安要素も多い。バイデン氏再選に対しては一部にネガティブな反応も見られ、「悪い影響」「やや悪い影響」は合計で16.4%となった。

 

米大統領選挙による会社への影響_民主党勝利の場合

 

 所属する会社の業種や立場によっても、見方は変わってくるだろう。米国在住のビジネスパーソンは、大統領選の結果によって具体的に会社にどんな影響があるのと考えているのだろうか。個々の回答を見ていきたい。

 

3.トランプ氏当選なら…中国との摩擦激化、環境政策転換でEVは失速も

 

 共和党の勝利(トランプ政権)の場合について、まず少数ではあるがポジティブな影響を指摘した回答から紹介していこう。

 

ポジティブな影響

 

 トランプ氏の政策の柱にあるのが米国第一、アメリカ・ファーストである。米国内の需要刺激策により、景気拡大を見込む声が一部にあった。2016年11月の大統領選挙で当選したトランプ氏は、法人税減税などの施策を打ち出し、米株高の「トランプ相場」を演出した。今回の調査でも「アメリカ・ファーストによる関連株式の高騰」を期待するコメントが見られた。

 現バイデン政権下では予想外のインフレや米金利の上昇などに見舞われ、事業計画を狂わされた日本企業も少なくないと見られる。政権交代を契機に「現在のインフレーションに歯止めがかかれば、多少でも良い影響が出る」(介護・福祉)という回答もあった。

 外交においてもビジネス式の「取引」を重視するトランプ氏の姿勢は、思わぬ成果を収める可能性もある。旅行業に勤務する回答者からは「世界情勢が安定化し、人の流れが活性化しそう」との指摘が聞かれた。

 一方、「ネガティブな影響」については、「ポジティブな影響」を上回る数多くの回答が寄せられた。大きく分けると、「環境政策の後退」「貿易摩擦・中国との軋轢」「分断と不確実性の高まり」といった3つに整理できるだろう。

 

ネガティブな影響

 バイデン政権下では環境を重視した政策の一環で、電気自動車(EV)関連に多額の補助金が支払われた。2大政党の対立、分断が進むなかで、政策面で振り子の振れ幅が大きくなっており、環境政策も抜本的に見直される公算がある。「環境政策の転換による補助金の削減」(自動車・輸送機器)により関連業界に悪影響が出るだろう。「EV車優遇政策の転換が予想され、主要顧客の拡販戦略にマイナス影響」(電気・電子機器)といったコメントもあった。

 トランプ氏の「米国第一」の姿勢は、対外的には様々な軋轢を引き起こす可能性がある。最も懸念されるのが貿易面、とりわけ中国との貿易摩擦の激化である。「中国市場がさらに低迷する」(機械・重電)、「対中国政策の結果によって対策が必要になってくる」(電気・電子機器)といった声が聞かれた。保護主義が広まれば、貿易全般が停滞しかねない。運輸業の回答者からは「貿易のシュリンク、社会の分断加速」を懸念する指摘もあった。

企業経営において最も厄介なのは、予測不能なトランプ大統領の登場で世界が不安定化し、先行きの見通しが立ちにくくなることである。「予測がつかない」(金融・証券・保険)、「不安定な世界情勢」(情報処理・SI・ソフトウェア)といった点を悪い影響として挙げるコメントが目立った。「米国内の多極化による不安定さ(教育・教育学習支援関係)、「国内分断による治安の悪化」(自動車・輸送機器)を懸念する指摘もあった。

4.バイデン政権なら…継続性に安心感、景気には期待できず?

 バイデン氏当選の場合は、これまでの政策が継続されることへの安心感が大きい。「現状維持」「大きな変化がない」「良くも悪くも基本的には大きく変わらない」ことを「よい影響」として挙げる回答が目立った。 


4_ポジティブな影響

 

 自動車・輸送機器の業界の回答者からは「電気自動車を含めた環境対策に対する支援が強化される」ことを評価する声もあった。

 バイデン政権はこれまで半導体関連企業にも巨額の補助金を提供してきた。バイデン氏再選なら、こうした政策が継続される公算が大きい。「半導体市場の受注が増える」(機械・重電)といった回答も見られた。

 ネガティブな影響としては、「インフレ継続の懸念」「景気回復に期待が持てない」といった指摘があった。旅行業の回答者からは「特定の業界だけが伸び、全体の経済は委縮しそう」とのコメントも寄せられた。

またEV化促進の政策が継続すると「自社製品の需要が悪化する可能性がある」(素材)との回答もあった。

4_ネガティブな影響

 

5.「もしトラ」への対応は…6割強が「特に検討せず」

 

「もしトラ」への対策検討状況

 

 「我々は米国を再び偉大にする。11月5日は米国の歴史上で最も重要な日になる」。

 トランプ氏は5月31日、ニューヨーク市内で記者会見し、不倫の口止め料を不正に処理したとして罪に問われた裁判における有罪評決について「控訴する」と表明したうえで、11月5日に投票日を迎える大統領選にかける強い意気込みを語った。

 大統領経験者が刑事事件で有罪になるのは初めて。そうした候補が再び大統領選に挑むのも前代未聞で、トランプ氏がもし大統領に当選すれば、世界に大きな波乱を巻き起こす可能性がある。

 「トランプ政権に代わった場合の具体的な対策」についても質問したところ、「すでに検討済み」は10.9%にとどまった。63.6%は「特に検討していない」と答えた。選挙情勢が不透明なうえ、トランプ氏の政策の行方を読むのは極めて難しく、「もしトラ」に対応しようにもできないというのが実情だろう。

 

調査概要

    「大統領選挙による会社への影響アンケート」

実施日: 2024年4月16~22日
対象者: アメリカ合衆国に居住かつ有職者の方(日経ID会員)
回答者数: 55人
調査手法: インターネット調査

 


 

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