日経読者に聞く|生成AI「興味はあるのに仕事で使えてない」-運輸業や医療・福祉で目立つ
生成AIは業務の効率化やクリエイティビティを向上させるための強力なツールとして注目されており、多くの企業で業務での活用が進んでいる。日経リサーチが日本経済新聞社と共同で調査を実施したところ、1年前の調査と比べて、仕事で利用している人は18%から44%と倍増した。
日経電子版記事:
生成AI「仕事で利用」4割、1年で倍増(日本経済新聞電子版)
本コラムでは、従業員300人以上の企業に勤めている2,208人のビジネスパーソンの回答に絞り込んで分析し、業種別の利用実態や課題を読み解いた。
1.運送業、医療・福祉では「生成AIを使ってみたいが、使うことができていない」
業種別で分析したところ、運輸業や医療・福祉で、生成AIの業務利用の割合が興味関心の割合を下回っていることがわかった。特定の業種では、生成AIに関心があっても実際の仕事では活用されていない実態があるようだ。
調査では、「生成AIにどの程度興味があるか(=興味関心割合)」をきいた。従業員が300人以上の企業にお勤めの人のうち「大変興味がある」と回答したのは34%で、3人に1人は生成AIに強い興味を示すという生成AIへの関心の高さがうかがえる。
業種別で「大変興味がある」の回答割合をみると、「情報通信業」(47%)や「学術・専門技術業」(44%)が高く、「製造業」(35%)、「教育・学習支援業」(32%)が続いた。「建設業」(24%)や「運輸業」(19%)は他業種と比べ低かった。
「生成AIを仕事で使ったことがあるか(=業務利用割合)」もきいた。「ある」と答えたのは47%だった。業種別でみると、興味関心割合が高水準だった「学術・専門技術業」(64%)や「情報通信業」(63%)が上位で、「医療・福祉」(25%)や「運輸業」(16%)が比較的低かった。
生成AIの興味関心割合と業務利用割合を、業種ごとに上図のように掛け合わせてみると、興味関心割合が高いほど業務利用割合も高まり、関連性がありそうだ。
その中でも「運輸業」や「医療・福祉」は、興味関心割合を業務利用割合が下回っていた。これらの業種では「生成AIを使ってみたいが、使うことができていない」状況であると読み取れる。
2.利用規定とセキュリティ面が導入障壁に
調査では「組織で生成AIを導入するために必要なものは何か」を自由回答形式できいており、運輸業では「厳しい利用規定」や「セキュリティとの両立」が挙がった。「配車業務は人手で行っており知恵・知識・経験で成り立っている、これが生成AIで半自動化されるのでは」と期待する声もあった。
「将来的に生成AIをどの場面で使いたいか」という問いに対し、医療・福祉では「電子カルテやレポート」や「処方の禁忌」などの回答があった。「画像診断やケアプランなどで生成AIが活きると思う」という声があり、すでに業務利用している人からは「精度がここ数ヶ月で飛躍的に上がった」というコメントがみられた。
経済センサスによれば、従業員が300人以上の国内企業数は約20,000社あり、そのうち運輸業は1,000社以上、医療・福祉は3,000社以上を占める。企業数という市場ボリュームでみれば、生成AI導入のポテンシャルがある業種といえる。導入にはさまざまな課題も伴うが、企業の競争力を高める大きな潜在力を秘めており、新たなビジネスチャンスとして今後の発展が期待される。
(日経IDビジネス推進グループ 持木俊介)
調査概要
「生成AIに関するアンケート」
実施日: 2024年5月30日~6月3日 対象者: 20歳以上のお勤めの方(日経ID会員) 回答者数: 3,230人 調査手法: インターネット調査
調査は日本経済新聞社と共同で、日経電子版などの購読に必要な「日経ID」の所有者で働いている人(自営・自由業を除く)を対象にオンラインで実施し、3,230人から回答を得た。本記事では、従業員300人以上の企業に勤めている2,208人の回答に絞り込んで分析した。従業員300人以上の国内企業数は経済センサス(2021年)のデータを用いた。 |
日経リサーチが提供する「日経IDリサーチサービス」では、日経電子版の読者を主な調査対象とし、幅広い層のビジネスパーソンの意識や動向を把握できます。貴社のビジネス課題解決に、「日経IDリサーチサービス」をぜひご活用ください。
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