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重要顧客だけでは不十分?“未来の顧客”を育てるCS調査の対象者選定ポイント

 

BtoBビジネスにおいて、特定の重要顧客との深い関係性は極めて大切であり、多くの企業において売上の多くを支えている基盤といえるだろう。それゆえ、CS調査の対象を、その「大切な顧客」だけに絞り込んでいる企業も多い。しかし、その「大切な顧客」だけに焦点を当てたCS調査が、実は成長の機会を限定している可能性があるとしたら、どうだろうか。

本稿では、CS調査の対象を重要顧客に限定せず、より幅広く調査をすることで、既存顧客の維持だけでなく、将来性のある顧客層や新規顧客獲得に繋げるためのポイントをまとめた。

 

「パレートの法則」の落とし穴にご注意を

「20%のお客様が80%の利益を稼ぐ」というパレートの法則は、一見すると重要顧客に手厚い営業対応を集中する理由になりえる。しかし、もしCS調査の対象を重要顧客に絞ってしまったら、どうなるだろうか。手厚い対応を受けている重要顧客からの評価は高止まりし、本当に必要な改善点や、新たな成長の芽を見つけることが難しくなってしまう。そのため、CS活動が現状維持に陥りがちになってしまう。

企業経営の安定には、既存顧客の維持が不可欠ではあるものの、既存顧客が永遠に顧客であるわけではなく、実際には一定程度の流出は避けられない。そして、全くの新規顧客を獲得するよりも、少しでも接点がある顧客企業を育てていく方が、新規獲得よりもずっと獲得コストが低く効率的である。

また、企業の成長にはイノベーションが不可欠で、従来のコア商品領域から新しい領域へのドメイン変更・拡大を模索するBtoB企業が多い中で、顧客側の認識が従来の領域に“引きずられて”しまい、新領域の認知・利用につながらないという課題も聞かれる。

 

CS調査の視野を広げ、未来の顧客を育てる

それでは、CS調査の対象者はどのように選定すればいいのだろうか?

重要顧客として、現状の売上や利益などの貢献度が高い顧客を中心にCS調査を実施しているケースの場合、下図の①と②の領域が対象となるイメージだ。

 

 

コラム図版_対象企業選定

 

 

しかし当社では、この領域だけでなく、③の将来の伸びしろがある企業「重要顧客予備群」や、取引があるすべての顧客を対象に広げて実施することを推奨している。

 

なぜなら、これによりCS調査は想像以上に活用できる強力なツールへと変わるからである。

幅広い顧客層を対象にすることで、「現在」の重要顧客が抱える課題はもちろん、手薄になりがちな「重要顧客予備群」の評価やニーズ、さらには新規事業領域への関心度まで把握できるようになる。

 

そして、これらの情報を、企業属性やビジネス特性といったセグメントで分析することで、貴社内のさまざまな施策に繋げることが可能になる。

例えば、手厚い営業対応をしている重要顧客と、十分な接点を持てていない企業とで比較すれば、それぞれの顧客層に合わせたアプローチの方向性が見えてくる。また、貴社の事業部別、商品別、地域別といった視点で分析したり、将来的な重要度や、貴社提供領域への関心度によって分析したりすることで、よりターゲットに刺さる改善策を導き出すことができるだろう。

 

 

営業とマーケティングの連携で「質」と「効率」を両立

営業対応は、担当者個人の力量に左右されがちであり、その限界が会社の限界となりやすい。多くの企業で人手不足が大きな問題であり、売上目標は増加しているのに営業人員は縮小しているという悩みも頻繁に聞かれる。このような状況下で、従来の「個人の力量」に頼る営業スタイルでは、重要顧客でさえ十分な対応が難しくなりつつある。

 

そのような状況下で求められるのは、営業およびマーケティング活動の「質の向上」と「効率の向上」である。

 

まず「質の向上」という視点では、CS調査でターゲットとする顧客の評価やニーズを把握できれば、顧客に合わせた最適な営業資料の提供や、セミナー・展示会の企画といった施策ができるようになる。

 

「効率の向上」という視点では、個々の営業担当者の力量に頼る状況から、会社として組織的に顧客に対応する体制への移行を検討できるようになる。CS調査の結果をもとに、顧客のカスタマージャーニーに沿って組織的なマーケティング活動を展開し、営業担当者をバックアップすることで、既存顧客だけでなく、重要顧客予備群、さらには新規顧客の効率的な獲得へと繋がるのである。

 

営業とマーケティングの2つの視点で成長をめざす

BtoBビジネスにおいては、顧客数が限られているケースが多く、顧客一人ひとりの顔が見えることが特徴であるため、営業の役割は非常に大きい。

 

しかし、既存顧客の維持・拡大を図りつつ、新しい事業領域への拡大やドメイン変更が必要な現代において、マーケティング的な手法をいかに導入し、営業をどこで活用するかというバランスが一層求められている。

 

ニッチな企業も多いBtoB市場において、マス対応は難しい場合が多い。このような環境下でCS調査を幅広く実施し、マーケティング的な視点をもって分析することは、BtoB企業にとって成長のための情報収集手段として極めて優れていると言える。

単なる「満足度」の数字の測定に留まらず、新規獲得につながる貴重な情報を得るための手段として、“未来の顧客”を育てるCS調査をぜひ実施していただきたい。

 


日経リサーチは、長年、BtoB企業のCS活動を支援しております。顧客との関係性強化における組織的かつ効率的な対応に課題を感じている方は、ぜひお問い合わせください。

 

 

この記事を書いた人

コラム執筆者_市嶋
エグゼクティブ・コンサルタント
市嶋 信子

国内外のCS・CX、マーケティング・営業、ブランディング、経営戦略・ビジョン策定などの多くのプロジェクトに従事。特に、B2B企業向けのCS・CX、営業改革を専門とする。アンケート結果に加え、企業が保有する実態データも合わせた分析も行い、データドリブンでの実践的な企業課題の解決を支援している。

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