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「求心力」と「遠心力」を成長の原動力に変えるグローバル経営 ―顧客の声を共通言語に、本社のガバナンスと拠点の自走を両立させるCS調査とは

 

製造業を中心に、海外売上が大きい日本企業は多い。例えば、売上500億円以上の製造業では実に3社に1社で海外売上比率が30%を超えている。

 

当然、グローバルに売上や利益等の計数管理はしているが、営業・マーケティング的な側面での情報はどうだろうか?自社のターゲット層の中での認知度やイメージ・評価への関心が高そうだが、まず押さえるべきは顧客の声、顧客からの評価だろう。


グローバル展開において、本社と現地法人・各国拠点の役割分担はさまざまだろうが、グローバルにベクトルを寄せて成長するための基本的な情報として、顧客からの評価をグローバルで取得するCS調査をお勧めしたい。

本稿では、グローバルCS調査の重要性と、実施・活用におけるポイントをまとめた。

 

本社の「求心力」と拠点の「遠心力」のバランスは?

CS調査で得られる企業にとっての大きなベネフィットは、多くの顧客からの定型的で客観的な情報のベースを得られるということだ。また、それによって自社都合や自社の制約の中で考えるのではなく、“顧客視点”で考えるという姿勢や企業文化の醸成につながっていく。

 

したがって、ビジネスでクローバル展開を目指すならば、CS調査をグローバルでもぜひやるべきだ。しかし、本社と各国拠点の関係は悩ましいのか、なかなか実現できないケースを多く見てきた。本社としてはガバナンスを効かせたいし、各国拠点としては自由にやりたい。しかし、企業経営に限らず、組織というものは、組織としての一体感を維持する求心力とそれぞれが自走する自主性という遠心力がほどよく保たれていることが健全であり、組織としても強い。

 

そのためには、ルールやプロセス、組織構造、そして文化のようなものは大切だろう。しかし、それ以前に商売の基本として重要なのは、「顧客の声」を公正に獲得し、それを戦略や事業運営に活用していくことだろう。

 

顧客の声としては、営業活動でのやりとり、クレームなどが代表的だが、それらはどうしても限定的で偏りがちになる。

 

そこでCS調査とその活用をお勧めしたい。CS調査は設計・分析をしっかり行えば、改善活動・変革、商品開発、差別化などにつながる有効な情報を効率的に収集できる優れた手法だ。


特にグローバル展開にあたっては、生産、物流、商品開発、研究開発などを担う拠点がさまざまに連携する流れの中で、各国それぞれでCS調査をやるのではなく、各拠点を俯瞰した形で結果を見る必要性が高まっている。こういう状況は、BtoCビジネスに限らない。むしろ日本企業の場合はBtoBビジネスこそ必要になってきていると考えている。


ぜひ、この各拠点を俯瞰できる客観的な情報をベースにすることで、本社の求心力と拠点の遠心力を、力関係などによらない前向きなエネルギーにつなげてほしい。

CS調査で、顧客視点による共通の土台で考える

CS調査の大きなベネフィットは、顧客の客観的な情報の”土台“を得られることだ。

具体的には、各国の拠点の顧客からの評価を俯瞰した形で見える化をし、水準管理および適正な資源の配分の根拠の一つにしようという意向が共通で見られる。

 

ただ、その土台の上に載せるCS調査の目的、活用はさまざまだ。当社で支援させていただいたケースから、典型的なケースを紹介する。

 

ケース1:大手制御機器メーカーA社

課題:

継続的なPDCA活動の促進

海外で継続的な成長をするために、顧客ニーズ対応や顧客との関係性の観点でPDCAを確実に回していきたい、

 

結果・活用:

顧客の評価をさまざまな角度でお伺いし、顧客との関係性の観点から優先すべき課題を分析。その結果を年1回のグローバル会議を活用して共有し、議論して、各拠点で自分ごと化を図った

 

ケース2:総合重機械メーカーB社

課題:

営業・マーケティング強化

市場での自社の強みを把握して、もっと戦略的に売上を増やしていきたい

 

結果・活用:

CS調査項目やニーズの聴取の他に、商品選択時のポイント・競合比較などについても調査し、自社が選ばれている理由・強みを明確化

カタログなどの営業ツールの整備、ニーズに基づく商品開発と効果的な情報提供などマーケティング施策に活用

 

ケース3:環境ソリューション提供企業C社

課題:

顧客ニーズ抽出の仕組み化

商品のコモディティ化が強まる中で、いち早く顧客インサイトを見つけて差別化を図りたい

 

結果・活用:

CS調査項目について評価していただく中で、既存製品・サービスの改良・改善点、ニーズの確認

差別化につながる新商品開発・商品改良の顧客インサイトを見出す仕組み(プロセス)を構築

 

いずれも海外売上が大きい製造業の例であるが、CS調査を上手にさまざまに活用していることがわかる。各拠点を俯瞰した情報で何をしていくのかは、CS調査の活用の肝になることを改めて強調しておきたい。

グローバルCS調査での留意点は?

グローバルでCS調査を実施するにあたっては、海外ならではの難しさ、煩雑さがある。

 

第一には、本社と各国拠点の関係性への配慮だ。日本国内においても、CS調査の実施にあたっては現場からの抵抗があるケースを聞くが、海外においては一層の留意が必要だ。調査結果を有意義に活用するには、拠点間で優劣の比較に用いるのではなく、調査の意義や活用方法を丁寧に説明することがポイントとなる。CS調査によらず、参加社/者が目的について納得し、共有することが、そのプロジェクトを完遂させる原動力なのだ。


実施の観点では、多言語対応はもちろんだが、調査を実施する上では海外の個人情報保護法への対応も必要となる。このあたりは、調査会社に相談すればよい対処法は教えてくれる。


また、各拠点からの対象者リストの濃淡の問題も大きい。対象者条件を明確に決めたとしても、その条件通りのリストになっていないケースも多い。したがって、分析の際には、対象者条件によるしかるべき件数、実際の対象者リスト件数、回収率なども慎重に検討して、リストによるバイアスを十分に考慮して解釈する努力が求められる。


またグローバル特有の留意点としては、数値の背後にある「国民性による回答傾向の差」もある。学術的に広く知られる研究(Harzing, 2006)*によれば、ブラジルなどのラテン諸国では最高評価を多用する「極端回答傾向」が強く、対照的に日本や韓国では中央の選択肢を選びがちな「中心化傾向」が顕著であると示唆されている。


したがって、グローバル比較においては、単純なスコアの横並び比較や数字の高低のみで判断するのではなく、各国内での時系列推移や、国別の特性を踏まえた「読み解き」が必要になる。あわせて、各国の課題を掘り下げるような分析も大切だ。

ベクトルを合わせて効率よく成長する

グローバルで実施する難しさ、煩雑さはあるが、CS調査は多くの顧客の声を定型的で客観的に俯瞰した情報のベースを提供するものである。目的を明確にして、課題を抽出し、議論をしてベクトルを合わせ、課題に取り組む仕組みを構築することで、組織的な成長につなげてほしい。

 


日経リサーチは、長年、BtoB企業のCS活動を支援しております。顧客との関係性強化における組織的かつ効率的な対応に課題を感じている方は、ぜひお問い合わせください。

 

*出典: Harzing, A.-W. (2006). "Response Styles in Cross-National Survey Research: A 26-Country Study", International Journal of Cross Cultural Management.

 

この記事を書いた人

コラム執筆者_市嶋
エグゼクティブ・コンサルタント
市嶋 信子

国内外のCS・CX、マーケティング・営業、ブランディング、経営戦略・ビジョン策定などの多くのプロジェクトに従事。特に、B2B企業向けのCS・CX、営業改革を専門とする。アンケート結果に加え、企業が保有する実態データも合わせた分析も行い、データドリブンでの実践的な企業課題の解決を支援している。

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