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クレームとして顕在化する不満は半分しかない-「技術力」だけでは生き残れない!いま求められる顧客視点でのBtoBマーケティング【第2回】

BtoB企業の顧客が商品やサービスを購入・利用した際、不満や期待外れといった「痛点」をカスタマージャーニーのどのプロセスで体験しているのかを顧客視点で明らかにし、意外なところで痛点が発生していることを第1回目のコラム で紹介した。第2回目の本稿では、実際のBtoBの取引現場で痛点を感じた顧客がどれくらいいて、どう行動したか、その対応実態を明らかにする。ぜひ顧客理解を深めるアプローチを考えるヒントにしていただきたい。なお、今回も「素材・原材料・電子部品」と「産業用装置、計測・計量機器、工作機械、制御機器など生産工程機器」という典型的な2つのBtoB系事業サービスの調査結果からみていく。

85%の顧客が痛点を経験し、うち9割が「困っている」

図1は、製品・サービスの選定や導入、利用の上で、過去1年間に痛点を経験したと回答した割合である。

図1.過去1年間に何らかの「痛点」の経験率 

<「素材・原材料・電子部品」「生産工程機器」>C8686_01

「素材・原材料・電子部品」「生産工程機器」共に85%の顧客が何らかの痛点を経験していることがわかった。参考として並記したBtoC(一般生活者が1年間で経験した痛点)の経験率65%よりも20ポイントも高い。ほとんどのBtoB取引では、不便や期待外れを感じながらも取引が継続している実態が明らかになった。また、痛点を経験した回答者のうち約70%が、同じ痛点が繰り返されたとしており、約90%が「困っている」と深刻度を感じながらの取引となっている(図2)。

 

図2.「痛点」の繰返し経験度・深刻度 

<「素材・原材料・電子部品」「生産工程機器」>

C8686_02

約半数が「サイレントカスタマー」、クレームがないから良い関係とは限らない

では、痛点を感じた顧客はどう動いているのだろうか? 取引先側に、痛点を解消するために問い合せたり、苦情・不満を申し出たりしたかどうかを聞いた結果が図3である。

 

図3.痛点を解決するため取引先への問い合せ・申し出
<「素材・原材料・電子部品」「生産工程機器」>

C8686_03

 

実際に問い合わせ、申し出を「した」と答えたのは、「素材・原材料・電子部品」で56%、「生産工程機器」で52%だった。参考に並記したBtoCでの申し出率(28%)よりは高くなってはいるが、それでも半数近くの顧客は、痛点を経験しても沈黙したままでいる。
つまり、不満や期待外れを提供企業側に伝えない「サイレントカスタマー」が多く存在し、企業が把握できない「隠れた不満」が存在している。企業にとっては「不満の申し出がないこと=クレームが少なく良い関係」と喜んではいられない。取引上の実態が提供企業に伝わっていないのが現実なのである。
顧客が申し出なかった理由は、「申し出ても解決・改善が期待できない」が50%超と最も高く、あきらめ感が蔓延しているといえる(図4)。

 

図4.取引先への問合せ・申し出をしなかった理由

<「素材・原材料・電子部品」「生産工程機器」>

C8686_04

また、顧客側も軽微な痛点であれば、長期的・継続的な取引を意識してかあえて表面化させないようにしているようだ。
高い技術力はもちろんのこと、強固な営業力での市場を形成してきたBtoB系企業では、優秀な営業担当者が日々訪問したり、電話やメールなどさまざまなチャネルを駆使したりして、顧客の不満や要望を吸い上げていると過信しているところも多いのはないだろうか。

クレーム対応の9割は満足感を得られていない

さらに衝撃的な実態が、申し出(クレーム)をした際に受けた対応への満足度に表れている(図5)。

 

図5.問合せ・申し出への取引先の対応への満足度

<「素材・原材料・電子部品」「生産工程機器」>

C8686_05

問合せや苦情を申し出た際、取引先がとった対応に満足(とても満足+満足の割合)したのは、「素材・原材料・電子部品」で11%、「生産工程機器」で13%に過ぎなかった。裏を返せば約9割が取引先の対応に裏切られてしまっていることになる。
申し出をしても満足な対応が得られない体験を繰り返した結果、「解決・改善が期待できない」が申し出ない理由のトップとして5割超を占めることにつながって、悪循環のループに陥っていると推察される。

それでもなぜ取引は継続するのか

では、なぜこのような状況下でもビジネスが継続しているのだろうか。
申し出なかった理由にもあったように、BtoBビジネスは、継続的な取引関係で成り立っていることが多い。また購買した製品・サービスは単に消費するのではなく、自社製品の付加価値を形成する重要なパーツになっている。そのため、些細な痛点を表面化させるよりも、安定的で継続的な関係を維持する方がよいという日本的な判断があることも一因だと思われる。
市場が成熟している中では、日本のBtoB企業の強みである「製品・サービス」の品質の高さだけで、差別化を図ることは難しくなっている。顧客に製品も含めてどのような体験価値が提供できているかを俯瞰的に把握・理解し、抜け落ちていることはないのか、必要だとわかっていても諦めて実行していないことはないのか、など、顧客への向き合い方を今一度再確認をすることから始めてみたらどうだろうか。
技術力や製品の価値を認めてもらうためにも、顧客への情報の提供方法含めて、営業対応の在り方、マーケティングの在り方も変えていかないと、競合他社に顧客を奪われかねないのである。

最終回の第3回は、顧客体験価値を向上していく上で重要な接点のつくり方を取り上げます。顧客が期待する営業接点の在り方やその変化について調査データをもとに紹介します。次回の配信は、10月6日を予定しています。

 

調査概要【BtoB企業CX調査】
実施日 2022年5月25日(水)~6月8日(水)
対象者 民間企業に勤務し、取引先種別の選定・購買・利用やその後のサポートを受ける顧客側企業の関与者
対象商材 A)自社製品の製造や設計・開発をするための素材・原材料・電子部品
B)自社製品の製造や設計・開発をするための産業用装置、計測・計量機器、工作機械、制御機器など
C)自社の基幹システム、業務システム(CRM、ECサイト、データベース、アプリなど)
D)融資を受ける金融機関
回答者数 2,532人
調査手法 日経IDリサーチサービスを利用、上記条件に合致した方を対象にしたインターネット調査
調査概要【BtoC生活者CX調査】
実施日 2020年2月
対象者 全国の16歳以上の一般個人
回答者数 12,368人
調査手法 当社インターネットモニターを対象にしたインターネット調査

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