CXを探る~痛点のインパクトの大きさは? シリーズコラム 第6回
日経リサーチでは、生活者が感じる不便や期待外れといった「痛点」にフォーカスした調査を実施しました。生活者はどこに痛点を感じるのか、痛点の発生は企業にどのような影響をもたらすのかなどを複数回にわたってご紹介します。
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これまで5回のコラムで顧客の痛点(不便や期待外れ)が企業側にもたらすリスクを説いてきた。今回は顧客が痛点によって感じる「損害」と、口コミによる痛点体験の拡散リスクという2つのインパクトについて見ていく。
1.企業が目を向けるべき時間的損害
顧客は痛点によって、どんな「損害」を受けたのか。時間、金銭、身体の3つの側面で見たところ、6割以上が時間的な損害を受けていた。
【痛点によって受けた損害】(n=8,041)
- 時間的損害(無駄な時間を費やした、必要な時に利用できなかったなど)があった…62%
- 金銭的損害(修理費など追加で費用がかかったなど)があった…12%
- 体的損害(けがなど)があった…3%
時間的損害は「商品の不着」、「不良品・故障で代替商品手配にかかった時間」など利用前・利用時から、「問い合わせ電話がつながらない」、「窓口の知識不足で対応がたらいまわしになった」など利用開始後のサポートの場面でも起こっている。
痛点が発生して解決までに時間がかかると、「時間の無駄」や「損」といった負の感情につながる。痛点の解決を求めた顧客が企業へ問い合せた回数を見ると、1回で解決したのは約4割にとどまる。解決までに複数回かかったのも4割で、「まだ解決していない」というケースも1割以上あった。
時間的損害は問い合わせ回数と比例して増えていく(図表1)。
図表1 問い合わせの回数別に見た「無駄な時間を費やすことになった」とした割合
早い段階で痛点を解決できれば、顧客の時間的な損害を最小限に抑えられる。問い合わせへの対応が増えれば、企業のカスタマーサービスにかかるコストは高まる。最初の問い合わせで顧客の痛点を解決すれば、顧客と企業の双方によい効果が期待できる。
2.甚大なSNSでの拡散リスク
痛点を感じた顧客の5割以上はその体験を家族や知人などへ直接伝えている(図表2)。一方、SNSへ投稿した割合は1割に届かない。では、伝わる相手の人数で見るとどうか。直接の口コミで伝わる人数が平均2.6人なのに対し、SNSへの投稿は平均559人(フォロワー数)と一気に膨らむ。年代別に見ると、若い世代ほどSNSへの投稿割合が高く、フォロワー数は多い。20代、30代の顧客による痛点の拡散リスクには特段の注意が必要だ。
図表2 年代別にみた痛点の口コミ波及
カスタマー・エクスペリエンス(CX) の第一人者であるジョン・グッドマン氏によると、顧客の痛点への企業の対応と、顧客と企業の関係には以下の法則があるという。
第1の法則:ほとんどの顧客は企業との衝突を嫌がったり、あきらめたりして苦情を申し立てない
第2の法則:不満を持った顧客のうち苦情を申し立て、その解決に満足した顧客の当該商品の再購入決定率は、不満を持ちながら苦情を申し立てない顧客のそれに比較してきわめて高い(サービス リカバリー パラドックス)
第3の法則:好意的な口コミを生み出すための効果的なアプローチとして、
①想定されるトラブルを回避できる予防的な情報提供
②製品の価値を理解してもらうための案内や情報
③顧客との応対における情緒的なつながり(エモーショナルコネクション)
などがある
第4の法則:不満顧客のネガティブな口コミは満足した顧客の好意的な口コミの影響度を凌駕し、マーケティング活動のブレーキになる
第4の法則にしたがえば、顧客による痛点体験の口コミは、特にSNSによって拡散された時に企業へ負のインパクトが大きい。一方で、痛点を解決する対応に顧客が満足した場合、企業への好意的な評価が広まることが期待される。
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