重要度増す顧客ごとの金融リテラシー把握
日経リサーチは、全国の一般消費者約17万人を対象に今年8月に実施した金融機関顧客評価調査「金融METER®」の結果をまとめた。利用者の金融リテラシーの違いによって、金融機関への信頼度に差があることが明らかになった。顧客からの信頼を獲得するためにも、金融リテラシーを高める取り組みの強化が欠かせない。
今回の調査では、「金融機関への信頼度」「金融機関や担当者が紹介する商品や情報への信頼度」について聞いた。本コラムでは、利用者の金融リテラシーによってそうした信頼度に差があるかどうかを分析した。
金融機関への信頼度(図1)では、「金融機関を信頼しているか」との設問に対して、「あてはまる」「ややあてはまる」と肯定的に回答した人が全体で41.3%となった。そのうち、金融リテラシーの違いによる差をみると、リテラシーが低い層よりもリテラシーが高い層の信頼度が高い傾向が示された。
調査内で金融リテラシーを測定し、最も低い層を「レベル1」、最も高い層を「レベル5」として分析したところ、「レベル1」では「金融機関を信頼しているか」との設問に、「あてはまる」「ややあてはまる」との回答が3割弱にとどまる一方で、「レベル3」以上の層ではいずれも5割超だった(金融リテラシーの測定方法については本文末尾を参照)。
図1.金融機関への信頼度
同様に金融機関・担当者について(1)相談のしやすさ、(2)紹介する商品を購入したいかどうか、(3)提供された情報の有用性、3点を聞いた(図2)。結果をみると「レベル1」のスコアが最も低く、「レベル3」「レベル4」は高いスコア となった。また、「レベル5」の利用者は「レベル3」「レベル4」に比べるとスコアがやや低いことから、リテラシーが一定水準以上に高くなると金融機関よりも自分の知識や判断に頼るようになる傾向もうかがえる。こうした層を意識した対応も今後、必要とされる可能性がある。
図2.金融機関・担当者に対する各項目評価
金融リテラシーが高まると、金融機関からの情報も理解でき、金融機関と利用者との間で一方通行ではないコミュニケーションが生まれ、信頼度の向上にもつながってくる。一方で、金融リテラシーが低い層からの信頼度が低い背景には、金融の知識は専門性が高いとのイメージから、わからないことに対する拒絶感が生まれている可能性が考えられる。
「貯蓄から投資へ」の動きとともに消費者の金融リテラシー向上にむけた取り組みの重要性が増してきている。金融機関への信頼度を上げるためにも利用者の金融リテラシーを高めていくことが重要となり、顧客への商品やサービスの提案とともに、金融への理解を深めてもらうことも重要となるだろう。 金融機関は顧客のリテラシーを把握し、それぞれのレベルに合わせた情報を提供することが求められる。
※金融リテラシー測定方法:
金融知識を聞く設問10問について、それぞれ「正しい」「たぶん正しい」「たぶん正しくない」「正しくない」「わからない」の5つの選択肢で設問から回答してもらい、「正しい」が正答の場合、「正しい」に2点、「たぶん正しい」に1点、「正しくない」が正答の場合、「正しくない」に2点、「たぶん正しくない」に1点を配点する。 それ以外は0点として、合計得点を計算し、0~3点を「レベル1」、4~7点を「レベル2」、8~11点を「レベル3」、12~15点を「レベル4」、16~20点を「レベル5」とレベル分けした。
日経リサーチ「金融METER®」は、個別金融機関の調査結果の提供も可能です。利用者の金融リテラシーの把握やアプローチ施策の検討材料として、「金融METER®」をご活用いただければ幸いです。
(ソリューション本部アカウント第1部 五十川 陸斗 )
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