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電子カルテ、クラウドに存在感~「AIで画像診断」期待高く

医療情報システム導入状況調査〈前編〉

患者と向き合いながら膨大なデータを処理しなければならない医療現場。デジタル技術を駆使した情報システムの導入が欠かせない時代になっている。実際、どの程度まで普及が進んでいるのか。日経リサーチは2023年3月に日経BPが運営する「日経メディカルonline」の登録者を対象に、勤務する医療機関の「医療情報システム導入状況」について調査した。調査結果からは電子カルテなどの導入が着実に進み、「AI」や「ロボット」といった最先端のデジタル技術への期待も高まっていることがわかった。詳細を2回に分けて紹介する。

診療所でも電子カルテ導入進む

調査には大学病院など一般病院のほか、医院、診療所に勤務する医師5,593人が回答。まず「勤務先施設に設置されている医療情報システム」について聞いたところ、「電子カルテ(オンプレミス型)」は78.5%が「導入済」とし、「クラウド型電子カルテ」を導入しているとの回答も12.7%に上った。

厚生労働省がまとめた電子カルテ普及率の資料によると、2020年(令和2年)段階で400床以上の一般病院で91.2%に達し、診療所でも49.9%が導入している。今回の調査から施設別の導入率をみると大学病院では95%超、医院・診療所でも64%弱に達しており、電子カルテは医療施設の規模に関わらず、導入が進んでいることが改めて確認できた。

 

その中でも、今回の調査で特筆すべきはクラウド型電子カルテの普及だろう。日経リサーチは2021年8月に同様の調査を実施(4,508人が回答)している。21年時点では「オンプレミス型」を導入している医療機関は79.3%だったのに対し、「クラウド型」の導入率は8.9%にとどまっていた。今回の調査ではオンプレミス型が前回調査を0.8ポイント下落したのに対して、クラウド型は3.8ポイント上昇した。施設の種別でみるとクラウド型電子カルテの導入が最も進んでいるのは小規模の「医院・診療所」で15.8%。大学病院が15.1%で続いた。21年調査結果と比較すると、それぞれ5.6ポイント、5.8ポイント上昇した。

クラウド型は施設内にサーバーなどを設置・管理する手間とコストが軽減できる。さらに医療施設間、医師間で患者情報を共有しやすいメリットもある。一方、インターネットで医療情報をやり取りするリスクを指摘する医療関係者が多いとされてきた。
医療現場にクラウドの利用が「解禁」になって10年以上経過し、徐々にではあるがクラウドのメリットを重視する機関が増え始めているといえるだろう。オンプレミス型の機能向上も進んでいることから、医療機関は地域性や専門領域などに応じて、オンプレミス型とクラウド型を使い分けているようだ。
「クラウドシフト」は電子カルテだけでなく、PACS(医療用画像管理システム)についても進んでいる。今回の調査で「オンプレミス型PACS」を導入していると回答した医師の割合は41.2%で、21年実施の調査から0.7ポイント下落。一方、クラウド型は7.7%で2ポイント上昇している。
そのほかの医療情報システムの導入状況をみると、コロナ禍の患者の通院が難しくなる中で注目を集めた「オンライン診療システム」の導入率が10.3%だった。21年実施の調査結果と比較すると3.7ポイントも上昇した。

「AIで画像診断」に圧倒的ニーズ

調査では「今後期待する技術」についても自由回答で聞いた。記述された回答に含まれていた単語の頻度と関連性をワードクラウドによってグラフィックで表現したのがこちらだ。
単語の構成比で説明すると「画像診断」が29.7%と最も多く、「AI」(23.7%)、「診断」(19.9%)と続いた。自由回答に目を通すと「AIによる画像診断技術」を求めている医師が圧倒的に多いことがわかる。CTやMRIが世界で最も普及している日本では、診療所や医院でも画像診断が当たり前になっている。多忙を極める医師はAIを活用し、今まで以上に迅速かつ正確に画像診断をこなしたいというニーズが高まっているようだ。さらに、より高度な診断を求められる大学病院など地域中核病院では「読影専門医」の不足が深刻な状態になっており、専門医の作業を少しでも軽減できるAIシステムの開発を待ち望んでいる。
続いて目立ったワードは「自動」(6.5%)、「ロボット手術」(6.4%)だった。外科医にとっては「ダ・ビンチ」など手術ロボットやナビゲーションシステムに対する期待が高いようだ。
自由回答の中には「ロボットによる介護」「音声入力でできるカルテ」といった作業を効率化できる先端技術を求めることも目立った。少子高齢化が進む日本の医療・介護の現場では、人手不足が深刻さを増すばかり。今回の調査は、こうした窮状を如実に表した。

期待が一気に高まっているAI。実際に医療現場への導入は着々と進んでいるのだろうか。AI普及の課題などについては後編で紹介する。

 

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