医療のICT化実態調査、医師4500人回答「院内教育コスト」「患者サポート」…導入の課題浮き彫りに
コロナ禍で業務のICT化・ネットワーク化が進み、大手を中心に多くの企業でリモートワークの体制が整った。しかし医療の現場では進展が遅い。日経リサーチは2021年3月、日経BPの「日経メディカルOnlineパネル」を利用し、全国の医師を対象に勤務先に設置されている医療情報システムの種類や、それらを導入するに際しての課題についてアンケート調査をした。4,508人から回答を得た。
設置されている医療情報システムは電子カルテが8割と最も多く、レセプトコンピュータ、PACS(医療用画像管理システム)が4割、診療予約システムが3割と続く。クラウド型のシステムやオンライン診療システムは1割に満たず、導入が進んでいない実態が明らかになった。
施設形態別にみると、医療情報システムはクリニックよりも病院での導入率が高いものが多く、特に電子カルテやPACS(医療用画像管理費ステム)、診療予約システムはその差が顕著である。対してレセプトコンピュータはクリニックでよく使われている。クラウド型電子カルテやオンライン診療システム、訪問診療システムの導入率は低く、病院とクリニック間の差は小さい。
Q.勤務先施設に設置されている医療情報システムを教えてください。(いくつでも)
ICT化やネットワーク化のメリットを自由記述式で聞いたところ、「情報共有、データ管理が容易になる」「業務の効率化につながる」といった回答が目立った。
- スタッフ間の迅速な情報の共有がなされれば、無駄なオーダー認証などの手間がかからなくなることを期待したい。(私立一般病院、100~199床、院長)
- カルテ管理が簡単になる。読めないカルテや紹介状に悩まされなくなる。(私立一般病院、200~399床、一般勤務医)
- 働き方改革や業務効率化による生産性向上につながる(うまく使えて、なおかつ使う側の意識変容も必要、という条件はある)。(国公立・公的病院、400床以上、一般勤務医)
- 電子カルテにより今までの諸検査、診療録がコンピュータに集約されて患者のデータが瞬時に引き出せるので作業効率は上がると思う。(医院・診療所・クリニック、無床、院長)
これらのほか、「遠隔診療」が進むことへの期待を挙げる医師も多い。
- 遠隔診療が可能になれば僻地医療の充実につながる可能性がある。(医院・診療所・クリニック、無床、理事長・理事)
- 遠隔での診療が可能になり、コロナ感染のリスクも減らせる。(国公立・公的病院、200~399床、一般勤務医)
一方で、導入への課題を聞いたところ、多くの医師が「コスト」を挙げた。システムの導入コスト以外にも、「自身やスタッフがシステムに慣れるまでかかる時間」など人件費の面でも負担が大きいとの意見があった。
- 価格、設備投資してもそれだけのペイができない。(医院・診療所・クリニック、無床、院長)
- 今まで紙カルテで仕事をしてきたものにとって作業に慣れていないため、かえって時間がかかってしまう。
(医院・診療所・クリニック、無床、院長) - 職員が使いこなすのに時間がかかる、かつ機器導入に費用がかかる。(私立一般病院、200~399床、理事長・理事)
「情報管理リスク」や「医師、患者双方のITリテラシー」もハードルとして挙がった。
- 個人情報の保護もあるし、各医療機関には独自のやり方があるので、監査しあうようになるのは問題。(国公立・公的病院、200~399床、医長)
- 医師側のICTのリテラシー、世代間のギャップ。(国公立・公的病院、400床以上、助教)
- 例えば遠隔診療の場合、ご高齢の患者さんにインターネットなどの環境を整えてもらうのは難しいと考える。(医院・診療所・クリニック、無床、一般勤務医)
医療におけるICT化・ネットワーク化の推進は国全体の課題ではあるものの、現実にはハードルが多い。各医療機関の努力はもちろん、政府の支援、機器やサービスの納入企業のサポート体制強化などが欠かせない。
調査対象 | 日経メディカルOnlineに登録している全国の医師 |
---|---|
調査方法 | インターネット調査 |
調査時期 | 2021年3月 |
回答者数 | 4,508人 |
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