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「オフィス365」フル活用で働き方改革実現

日経「スマートワーク経営」調査2018では、生産性向上や在宅勤務など柔軟な働き方の実現に不可欠となっているテクノロジーに着目。人材活用におけるテクノロジーの導入状況を中心に、調査データの分析結果、特徴的な取り組みをしている企業の事例などを紹介します。

日清食品ホールディングスSW_4.5stars

 

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 「チキンラーメン」や「カップヌードル」など数多くのロングセラーブランドを擁する日清食品グループ。その持ち株会社である日清食品ホールディングスは今、テクノロジーを活用した業務の効率化、それがもたらす働き方改革の先端企業としても脚光を浴びている。

 

 

 例えば、2018年、企業が時代遅れの古いシステムから脱却できず業務の効率化が進まない、いわゆる「レガシー問題」を解決したとして、経済産業省の「情報化促進貢献個人等表彰」で大臣賞を受賞した。

HD体制移行の副産物

 日清食品グループがテクノロジーを本格導入するきっかけとなったのは、08年の持ち株会社制への移行だ。それを機にグローバル展開を本格化し始めた同社グループは、即戦力となる人材を外部に求め、キャリア採用を積極的に増やし始めた。すると、思わぬ問題が持ち上がった。キャリア採用組が口をそろえて「社内の情報インフラが古すぎる」と不満を訴えたのだ。
 インフラの欠陥はグローバル化の推進に致命傷となりかねないため、対応は早かった。まず、13年4月に最高情報責任者(CIO)を設置。次に、CIOの右腕として実際に改革を進めるキーマンを招へいした。同年10月に入社した中野啓太・情報企画部次長だ。
SW_nisshin_01 中野氏はアクセンチュア出身で、アクセンチュア時代は主に企業のシステム改革などを担当していた。その後は、当時、急速にグローバル展開を進めていた衣料製造販売会社に移りシステム改革を主導するなど、いわばテクノロジーを活用した業務改革のプロだ。

 中野氏の加入で改革に弾みがつき、1 4 年度から「Future Office Project(フューチャー・オフィス・プロジェクト)」がスタート。柱は、業務基盤としてマイクロソフトの「Office (オフィス)365」を導入し、無料通話ソフト「Skype for Business(スカイプ・フォー・ビジネス)」やオンラインストレージサービス「OneDrive(ワンドライブ)」、メール、アドレス帳、イントラネットなど、オフィス365の様々な機能を全社的に活用することだった。
 「テクノロジーの活用というと、いろいろな会社のサービスやツールを試したがるが、ユーザーインタフェースやIDがそれぞれ異なるために使いこなせないのが実情。どこかに一本化したほうが手厚いサポートを受けられるなどメリットは大きい」と中野氏は話す。

残業は半減、有休は倍増

 同時に、配置サーバーからクラウドサーバーへの移行や、システム数の削減なども急ピッチで進めた。その結果、クラウドの利用は4年間で12倍に増加。システム数は、改革前の180システムから17年末には29システムへと84%も減った。

SW_nisshin_02 システム改革の効果は、改革の大きな目的の一つでもある人材活用面にも、はっきりと現れた。効果検証のため、情報企画部で働き方改革を進めたところ、15年に48人いた部員は現在38人と21%減。しかし、平均残業時間は半減し、有休取得平均日数は倍増した。
 また、女性部員11人のうち4人は子育て中のママ社員だが、スカイプやワンドライブなどのお陰で、自宅にいながら会議への参加や資料のやりとりなどが可能になり、ワーク・ライフ・バランスの実現に効果があることが実証された。情報企画部は、テクノロジーを活用して多様な人材の活躍に貢献したとして、社内の「Diversity Award(ダイバーシティー・アワード)2018」で金賞を受賞した。

Surfaceを全社員に配布

 「女性社員の約3分の1がママ社員」(人事部の段村典子プロジェクトリーダー)という同社は、官民連携のイベント「テレワーク・デイズ」に参加するなど、全社的にも柔軟な働き方と生産性の向上を推進している。それを後押しするため、18年からマイクロソフトのタブレット型端末「Surface(サーフェス)」を全社員に配布。また、19年3月からは、社内の定型的な問い合わせにAI(人工知能)が自動応答する「チャットボット」の利用を始めるなど、テクノロジーの活用を一段と強化している。

SW_nisshin_03 段村氏は「サーフェスを活用すれば、例えば、テレワークを利用して自宅で取引先へのプレゼン資料を作り、そのまま取引先に出向いてサーフェスでプレゼンするなど、より柔軟な働き方が可能になる」と強調。また、チャットボットに定型的な質問への回答などを任せることができれば、社員はより付加価値の高い業務に専念できる。
 今後の課題の一つが、テクノロジーに苦手意識の強い一部の中高年管理職への啓発活動だ。中野氏は「インフラは整備されたので、それをフル活用できるかがカギ。マイクロソフトの協力も得ながら、管理職を対象としたマンツーマン指導も検討している」と話す。

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