コロナ禍で広がるテレワーク~働き方改革にどう影響
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るうなか、各社は感染拡大防止と事業継続の両面から様々な対策を講じている。その代表例がテレワークであるが、現場では、急激な働き方の変化に直面しているビジネスパーソンも多いはずだ。一方、こうした働き方の変化は従業員の「働きがい」にどのような影響を与えるのか、急激な変化を成功に導くにはどうしたら良いか、といったことは経営層にとって気になるところだろう。
そこで日経リサーチは2020年3月27日~30日に三大都市圏の民間企業勤務者に対する調査を実施し、テレワークの実態や課題、働き方の変化が働く意識や意欲、勤め先への評価に与える影響を分析した。本稿はテレワークの中核をなす在宅勤務制度に焦点をあて、働き方の変革を従業員の「働きがい」向上につなげるにはどうしたらよいか考えてみたい。
在宅勤務制度は「働きがい」に好影響、カギは職場浸透
在宅勤務制度は新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の問題を契機に、民間企業で急速に整備が進んでいることが確認できた。勤め先の在宅勤務制度は「問題以前から利用が浸透」していた割合は7.2%に過ぎないが、問題を契機に制度が「新規導入」「利用拡大」された割合は40.3%にのぼる。 では、この状況において、「働きがい」にはどのような変化が生じているだろうか。
新型コロナに対する勤め先の取り組みを通じ、「働きがいのある会社だと思う気持ちが高まったか」を聞き、在宅勤務制度導入の有無別に分析した結果が【図1】である。
「働きがいが高まった」との回答割合は、制度導入ありの企業勤務者で25.0%であるが、導入なしの企業勤務者では10.6%と大きな差がみられる。さらに、導入なし企業の勤務者では「働きがいが高まっていない」が41.3%とネガティブな傾向が強い結果が示された。
【図1】
Q.お勤めの会社の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」への取り組みを通して、【働きがいのある会社だと思う気持ちが高まった】
※「働きがいが高まった計」…「そう思う」「ややそう思う」の計、
「働きがいが高まっていない計」…「そう思わない」「あまりそう思わない」の計
それでは、在宅勤務制度を導入しさえすれば、すぐにビジネスパーソンの「働きがい」向上につながるのだろうか。 在宅勤務制度が新型コロナ問題以前から導入されて職場に浸透しているのか、それとも問題をきっかけに新規導入や利用拡大されたのかという制度導入状況の違いが、ビジネスパーソンの働きがいに与える影響を分析した結果【図2】をご覧いただきたい。
【図2】
Q.お勤めの会社の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」への取り組みを通して、【働きがいのある会社だと思う気持ちが高まった】
※「そう思う」「ややそう思う」の計
在宅勤務制度が新型コロナ問題以前から「浸透」している企業では、勤め先の取り組みを通じて働きがいが高まったと感じる割合が34.8%なのに対して、問題を契機に「新規導入」「利用拡大」した企業では20%強にとどまった。この水準は「変化なし」企業とほぼ同程度の結果であり、「浸透」企業とは10ポイント以上の差がついた。
つまり、在宅勤務の職場浸透を努力していた企業においては、従業員のマインドにより強くポジティブな変化をもたらした可能性が推測される。一方、それ以外の企業では、準備期間が十分でないままに働き方が突然変化し、戸惑ったビジネスパーソンも少なくないと思われる。「働きがい」を高めるには、制度を導入するだけでなく、いかに効果的に職場に浸透させられるかがカギになるのではないだろうか。
在宅勤務では職場コミュニケーションやマネジメントが課題に
在宅勤務制度の職場運用を成功させるためには、在宅勤務によって生じる問題を把握することが有効であろう。
在宅勤務経験者が挙げたテレワーク時のデメリット【図3】をみると、「上司・部下・同僚とのコミュニケーションが不足」が38.3%と最も多い。また、「職場メンバーと議論・ディスカッションがしにくい」「業務の相談がしにくい」も多く挙がり、職場コミュニケーションに課題を感じる人が多いことがわかる。
また、職場メンバーの「働きぶりが見えない」「予定がわかりにくい」や、「自己管理が難しい」「上司の管理が行き届きにくい」といった職場マネジメントの問題も顕在化している。これらの問題は、以前から制度が「浸透」している企業に比べ、「新規導入」あるいは「利用拡大」した企業の勤務者の方がより強く感じている傾向もみられた。急な制度導入や利用拡大に対して、職場の運用が追いついていないことが推測される。
【図3】テレワーク時のデメリットTOP10
Q.あなたにとって、テレワーク(在宅勤務/サテライトオフィス勤務/モバイルワーク)をするデメリットは何だと思いますか。
新型コロナ問題を契機として、在宅勤務制度が新規導入あるいは利用拡大され、ビジネスパーソンの働き方に大きな変化が起こっている。今回の調査では、制度導入がもたらすポジティブな影響と、導入に伴う急激な働き方の変化に制度の運用面が追いついていない企業実態が明らかになった。
働き方の変化を職場の「混乱」に終わらせず、従業員の「働きがい」向上につなげ、企業経営の源泉とするにはどうしたらよいか。制度の運営を現場任せにせず、全社一体となって取り組むべき課題であろう。今後は今まで以上に、職場実態の把握や適切な運用管理、従業員の声を反映した制度の設計・改定が重要となりそうだ。
【調査概要】
調査対象者 | 20~60歳代で従業員数100名以上の民間企業勤務者 |
---|---|
調査手法 | 弊社保有の調査モニターに対するインターネット調査 |
調査対象地域 | 三大都市圏※) ※)東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)、名古屋圏(愛知県、岐阜県、三重県)、大阪圏(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県) |
調査実施時期 | 2020年3月27日~30日 |
(ソリューション本部ソリューション第2部 小山 愛子)
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