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オンライン座談会でみえたテレワークの課題

 日経リサーチは、全国で緊急事態宣言が解除された5月下旬~6月中旬に、新型コロナウイルス流行の影響でテレワークとなったビジネスパーソンの公私にわたる意識変化を捉えるため、オンライン座談会を開いた。初回は働き方編。テレワークはペーパーレス化の推進や利便性を評価する声があるものの、コミュニケーションの方法や部員の評価のはかり方など課題も多いようだ。

実施概要

C7300_zoom
手法 オンライン座談会
対象者 テレワーク中のビジネスパーソン9名
若手層 20~30代独身男女 6名
中堅層 30~40代既婚男女 3名
実施時期 2020年5月27日~6月14日
調査対象地域 全国
企画・実施機関 日経リサーチ

 

 会社側は承認プロセスのデジタル化や定例会議の見直しに動いている。それ以上に、既存の業務フローを見直して生産性を高める好機と位置付けているようだ。例えば、複数の部署にまたがって作り直していた資料を、一回で済ますことで資料作成に要する時間を短縮化。働く側も、急なテレワークに対応する過程で、不要な業務を洗い出したり、テレワークと会社で業務をどう割り振ったりするのに知恵を絞っている。こうした業務の見直しを加速させることが生産性向上には欠かせない。

 社員同士のコミュニケーション面では、テレワークは大きな課題があるようだ。Web会議などでは個人の表情の変化や仕事で悩んでいることを察知することが難しい面がある。ただコミュニケーションツールを活用すれば上司との心理的な距離も縮まる、といった意見もあった。
 参加者が共通して挙げたのが雑談の重要性。雑談は仕事を円滑にし、職場への帰属意識を高める効果がある。雑談がきっかけとなり事業のアイデアが生まれることもある。テレワーク時でも部員との意思疎通を工夫することで、部員との距離感を縮めることができる上司もいるという。まずは、コミュニケーションがうまくいっている上司の工夫や経験を職場で集め、他の管理職らと共有するなどの取り組みが大切なようだ。

 テレワークは職場で共に仕事をする重要性を再認識させることになった。職場だと部員同士がお互い困りごとを察知しやすいし、不明な点はすぐ質問しやすい。特に若手は、先輩の働きぶりから学ぶことも多い。テレワークだとこうした経験は限定されてしまう。テレワークで壁にぶち当たると、自分ひとりで解決しがちになる。自己解決能力が低い人は、どうしても「待ち」の姿勢となり業務遂行力が低下してしまう。
 テレワークが進むと仕事の成果をどう評価するかも課題となる。座談会では仕事のプロセスが見えにくくなることへの不安の声もあった。成果の評価方法の見直しなども新たに考えなければならない。

 一気に進んだテレワークだが、業務プロセスの見直しや他者と連携したプロジェクトを着実に推進していくなど、企業は試行錯誤を続けながらも新たな働き方に対応しているようだ。今後、テレワークをうまく使いこなし、生産性を高めるにはIT技術や上司との新しい意思疎通ツールの導入のほか、機密性が高い情報の取り扱い方の改善にも取り組む必要があろう。

 今回の座談会では通勤時間が減った余力を有効活用できていない姿も垣間見えた。成果主義が叫ばれる中、今後テレワークを織り交ぜた働き方が定着すれば、増えた可処分時間をどう有効に使うのか。学びや社会貢献、副業、趣味といった様々な人生の選択肢を得られる好機となる。

 

オンライン座談会で見えたテレワークによる変化・課題~実際の発言を抜粋~

  若手層 中堅層
業務上の変化
社内プロセス
の見直し
定例会議の精査

「外部との定例会議は、書面に切り替えるなど、会社側で精査してくれた」(団体職員・男性)

周囲への遠慮からの残業がなくなる

「上層部への報告を待つための残業がなくなったのはよかった」(メーカー・男性)

風通しがよくなった

「縦割り・年功序列の職場だが、テレワーク後はオンライングループチャットで連絡を取るようになった。部長・課長に報告する前に不要な気遣いをせずに、連絡できるようになったのは大きなメリット」(団体職員・男性)
報告プロセス・資料の簡略化

「予算進捗管理の更新・報告頻度を減らした結果、業務にスピードが出て、経営層からも好評」(エネルギー・男性)

「資料作成を事前に二回修正していたが、一回にした。資料を作り込みしすぎない」(エネルギー・男性)

出社とテレワークでの業務の区分け

「顧客とは出社して対面で接する一方、事務作業はテレワークでこなすなどの組み合わせが理想」(金融・女性)

社内情報へのアクセス制限

「個人情報のため、お客様と話したことを記録しておく術がない。お客様への連絡は、携帯電話からだと不審がられる」(金融・女性)
社員同士の
つながり
1)全般
オンラインでは上司との心理的な距離が縮まる、またその逆も混在

「LINEグループで部署連絡を取るようになり、部長・課長への気遣いをしすぎずに連絡できるようになったのは大きなメリット」(団体職員・男性)
「上司に気軽に相談できなくなった」(メーカー・男性)

同僚の状況が分からない

「テレワークだとほかの人の困り度合いが見えない、職場でないとほかの人の進捗を把握できない」(団体職員・男性)
部下の状況を察するのが難しい

「席の後ろに立てば、困っているかどうか察することができる。テレワークだと表情や様子が感じ取れない」(IT・男性)

業務プロセスが把握しにくい

「細かい情報共有が不足。ミスが分かるタイミングが遅くなり、手戻りが生じる」(エネルギー・男性)
2)雑談の持つ力
雑談は社内連携を円滑にする。重要性の認識は共通

「周りの人と会話できないので、同僚の業務や他部署の状況がわからない。気軽に他部署へ相談がしにくくなった」(サービス・女性)

「オンラインだと雑談が生まれない。予測していない話題や交流がない。」(サービス・男性)

「会社に行かないと不安。職場だとほかの社員との立ち話でちょっとした情報共有ができ、助かることもある」(エネルギー・男性)

「会社の電話以外、誰とも話さないのは独身には辛いし、さみしさが募る」(メーカー・女性)
成長の機会
「真似て学ぶ」非言語の学びに欠ける

「先輩の働き方が学びにくい」(サービス・男性)

メリハリの維持・成果を出す意識の醸成が肝

「誰にも見られていないので緊張感がなくなり、だらける」(メーカー・女性)

「仕事は『成果』が大事だと気付いた」(サービス・男性)
ちょっとした質問がしにくく、自己解決

「自分が調べれば分かることは人に聞かず自己解決。自分への質問も、厳選して聞いてくるので、時間の節約にはなるが、切迫度が分からない。本当に確かめたいときは通話で確認」(エネルギー・男性)

段取り力の向上・プロセス効率化

「短時間のオンライン会議で仕事を進めないといけないので、効率的な段取りを自分で考えるようになった」

評価の方法は手探り

「評価に関して、プロセスの頑張りを見ていただけなくなるので不安。職場で間近で見てもらうのと、オンラインの朝礼・夕礼だけで業務を進めていくのでは、印象は異なると思う」(エネルギー・男性)

(オンライン定性プロジェクト 遠藤雅子)

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