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伸び悩みの男性の育休取得2020年が転換点に?【連載】日経「スマートワーク経営」調査結果解説コラム 第4回

国内有力企業710社が回答した第4回日経「スマートワーク経営」調査。2020年11月に公表された調査結果から、企業の働き方改革推進や生産性向上に役立つデータをご紹介します。(全5回中第4回、隔週掲載予定)

今回は官民をあげた取り組みが求められる日本の喫緊の課題、少子化問題への対応策として、企業が進めている出産・育児のしやすい職場環境づくりの現況を見てみます。

まず、育児をしやすくする働き方として、どのような制度が導入されているのでしょうか。2020年度の日経「スマートワーク経営」調査で、社員が1人でも利用したことがある制度を企業に答えてもらった結果が図1です。女性正社員の「育児休業」と女性社員の「育児による短時間勤務」が80%を超えています。ほとんどの項目は19年度調査の数値から大きな変動がありませんでしたが、例外的に大幅上昇したのが男性の育児休業です。19年度は連続1カ月以上の取得に限定して聞き、利用者が1人でもいた企業は41.9%でしたが、20年度は連続1カ月以上(以下、長期)と、新たに聞いた連続1週間以上1カ月未満(以下、短期)の取得のどちらも50%を超えました。諸制度は着実に広がりを見せていると言えますが、では、実際の利用状況はどうなっているのでしょう。

図1 育児に関する多様な働き方を活用している企業  (N=710)

C7716-01

※2020年度調査。各制度の利用者が1人以上いた企業の割合

育児休業制度はいわゆる育児・介護休業法により、全事業所に義務付けられ、男女ともに取得する権利があります。本調査では2017年度の第1回から男女の取得者率を質問しており、出産者に占める育休取得者率は女性正社員の場合、95%前後で推移しています(それでも5%程度は何らかの理由で取得していないのですが)。女性非正社員も17年度の84.3%が20年度の第4回は89.6%と、90%目前まで上昇しています。

一方、男性の育休取得はどうでしょうか。男性正社員1000人あたりの育休取得者数の平均値と中央値の推移を示したのが表1です。年々増加はしていますが、そのペースは遅々たるものです。ただ、ここでも20年度には過去見られなかった伸びを示しており、短期の取得者の平均は5人になっています。また、中央値が2人で平均とやや乖離があるということは、短期とはいえ、一部にかなり取得が進んでいる企業があり、平均を押し上げていると思われます。20年度は潮目が変わる年になるかも知れません。

表1 男性正社員1000人あたりの育休取得者数(人)

  2017 2018 2019 2020 2020(短期)
平均値 0.6 0.8 1.0 1.5 5.1
中央値 0 0.1 0.2 0.7 2.0
※長期の育休取得者。ただし、2020年度は短期の取得者数も同時に調査。
2017年:602社 2018年:663社 2019年:708社 2020年:710社

それでは、20年度調査の結果から男性の育休の取得状況をもう少し詳しく見てみましょう。従来、育休についての設問では長期の休みのみを休業と定義し、取得者数を聞いていましたが、今回は短期の取得者についても質問しましたので、両方の結果を比べてみたいと思います。(図2)

図2 男性正社員1000人あたりの育休取得者数(2020年度調査)  (N=710)

C7716-03

どちらも0人が最も多く、特に長期の連続休暇は3割近い企業で取得者がいませんでした。次いで多かったのは(無回答を除く)、短期・長期ともに1人以上2人未満でしたが、長期では利用者3人以上の企業が急減します。20人以上になると、短期が32社(4,5%)なのに対し、長期は3社(0.4%)しかありません。短期の育休取得は企業に広がりつつあるものの、長期の連続休暇となるとまだこれからという企業が多いようです。

政府の「少子化社会対策大綱」は2025年までに男性の育休取得率を30%に引き上げる目標を掲げています。厚生労働省が発表した男性育休取得率が19年度で7.48%ですから、ハードルはかなり高そうですが、菅首相が国会で「男性が育児をするという当たり前のことを実現する」と述べ、男性の1カ月以上の育休取得を推進する考えを示すなど、機運は高まっています。政府は男性が育休を取得しやすい職場環境の整備を企業に義務付ける育児・介護休業法と雇用保険法の改正案を閣議決定し、今国会での成立を目指しており、田村厚労相も「男性にしっかり育休を取ってもらうためには、環境整備が非常に重要だ。その責任は各企業にある」と強調しています。企業にも待ったなしの対応が求められそうで、次回調査の結果が注目されます。


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