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脱炭素社会 地域の再エネ普及がカギ

日経リサーチは日経「SDGs経営」調査、全国市区「SDGs先進度調査」など、企業や自治体の取り組みを評価する様々な調査を実施しています。喫緊の課題になっている気候変動対策、カーボンゼロ達成の取り組み状況や先進事例、SDGs経営で得られるアウトカムを紹介します。掲載は6回を予定しています。
今回は、自治体の脱炭素社会への取り組みについて紹介します。

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「宣言」先行も計画具体化はこれから

2050年までにCO2排出量を実質ゼロにするという2020年10月の菅首相の所信表明演説での方針発表を受けて、企業だけでなく自治体でも脱炭素社会の実現に向けた取り組みが加速しています。 CO2排出量実質ゼロを目指す「ゼロカーボンシティ」を宣言する自治体は8月末時点で444自治体、人口ベースでは1億1000万人を超えています。

SDGs17の目標に「13気候変動に具体的な対策を」があります。政府の「国・地方脱炭素実現会議」(議長・加藤勝信官房長官)は6月に、2050年の脱炭素社会実現に向けた工程表をまとめました。今後5年間に政策を総動員し、人材や資金、技術、情報面から自治体を積極的に支援し、2030年度までに少なくとも100カ所の「脱炭素先行地域」をつくる方針を打ち出しました。

昨秋に日経グローカルが全国815市区を対象に実施した「SDGs先進度調査」の結果から、地域の環施策の推進状況を見てみます。地球温暖化対策推進法で自治体は、2016年から市内全域を対象にした実行計画の策定が義務付けられています。具体的な目標を設定し、実現のための削減プランを策定しているかという設問に、「策定し、改訂も実施している」という回答は42.3%、「策定はしたが、改訂はしていない」が18.8%でした。策定済みの合計は6割強で、具体的な計画づくりがこれからのところが少なくない実態が明らかになりました。

市区内全域を対象にした地球温暖化対策のための計画策定

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再エネ導入を地方創生のチャンスに

地域の脱炭素工程表で、国は地域に根差した再生可能エネルギーの導入推進を重点対策に選定し、様々な支援メニューを用意しました。

SDGs先進度調査でも評価指標の一つとして用いた「SDGsを意識して取り組んでいる施策・事業」から、再エネの導入事例についてみてみます。木質バイオマスを活用した施策として、「キノコ栽培で発生する使用済み培地(バイオマス)の活用を推進」(長野県中野市)や「六甲山等森林整備により発生する伐採材や木質系廃棄物等を、バイオマス資源として有効活用」(兵庫県神戸市)など地域特性を活かした取り組みが挙げられていました。また、風力発電では「洋上風力発電施設を誘致し、地元港湾を整備することで地元企業の活用、関連産業の集積を図る」(千葉県銚子市)のように、再エネを軸に地域全体を盛り上げる施策もありました。

SDGsを意識して取り組んでいる施策・事業(一部抜粋)

施策・事業 自治体
メガソーラーをはじめとした再生可能エネルギー施設の分散配置及びスマートグリッドによるエネルギー利用の最適化を図り、災害に強く持続可能な都市の実現に向け取組を行っている。 岩手県北上市
地熱エネルギーを活かした、熱水ハウスによるスマート農業の推進。環境学習プログラムの開発とモデルコースの作成による視察の誘致及び人材育成。 岩手県八幡平市
漁業と共生・共栄し、景観と調和する洋上風力発電施設を本市沖に誘致。地元港湾を整備することで地元企業の活用、洋上風力発電の関連産業の集積を図り、税収の増加、雇用創出など地域の活性化に繋げる。 千葉県銚子市
基幹産業のキノコ栽培で発生する、使用済み培地の活用(バイオマス)を推進し、エネルギーの地産地消及び地球温暖化の防止、低炭素社会の実現に取り組む。 長野県中野市
市有配水池近くの送水管に民間発電機器を設置し、落差の自然圧による小水力発電事業を実施。 大阪府富田林市
六甲山等森林整備により発生する伐採材や木質系廃棄物等を、バイオマス資源として有効活用するとともに、下水由来のこうべバイオガス、小水力、風力、下水熱など再生可能・未利用エネルギーの開発・利用を進める。 兵庫県神戸市

再エネの導入は住宅用太陽光発電や小水力発電・バイオマスなど地域資源を活用することでエネルギーを地産地消し、経済を循環させることができます。災害時にもエネルギー源の確保として役立ちます。一方で、大規模太陽光発電や風力発電のように技術革新等を通じて大規模に生み出す再エネは、企業誘致の目玉にもなります。誘致することで雇用の創出、さらには住民移住を促進させる可能性も期待されます。いずれにしても、再エネの導入は経済の活性化を促し、地域課題を解決するための近道となるのではないでしょうか。

 

「SDGs経営」推進プロジェクト 岡田 志保

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