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サステナビリティ対応が企業の成長を左右する時代

 この春、昭和から令和への劇的な社会の変化をコミカルに描き、話題となったテレビドラマを楽しみに見ていました。昭和の感覚を「不適切」と一刀両断する場面のたびに思い出したのは、20年以上前に新聞記者として「環境経営」をテーマに取材していた頃のこと。

 

 ある中堅機械部品メーカーの経営者に、「取引先の温暖化対策をどこまで把握していますか」と質問したところ、「自分の工場の対策で手一杯なのに、下請けの状況まで管理しろと言われたら中小企業はつぶれる」と怒鳴られたことを、今も鮮明に覚えています。

早ければ27年3月期にも有報で開示

 時は過ぎ、サプライチェーン全体のサステナビリティに関する情報開示が企業に求められる時代がやって参りました。

 

 「環境」だけでなく「人権」や「公正な事業慣行」に至るまで、ESGに関するリスクと機会を把握・開示することが求められています。20年前の経営者の言葉は、今ではまさに「不適切」となります。

 

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 今年3月末には、サステナビリティ開示に関する国内基準を開発しているサステナビリティ基準委員会(SSBJ)が草案を公開、来年3月末までに最終基準を公表するとしています。

 

 金融庁も、プライム上場企業を対象に、有価証券報告書においてSSBJ基準のデータ開示を義務化する方針です。3月末に開いた金融制度などの重要事項を調査・審議する金融審議会(首相の諮問機関)のワーキンググループでは、まず時価総額3兆円以上の企業から27年3月期にも義務化し、数年かけて全てのプライム企業を対象にする方向が示されました。5月に開かれた第2回ワーキンググループでは企業の負担を軽減する方策なども議論されたとのことです。


 欧米を中心とした機関投資家は、サステナビリティ情報を投資先選別の「物差し」としてさらに重視するようになるでしょう。消費者も環境、人権、公正な事業慣行に関する情報に敏感になり、優良な企業の製品・サービスを購入する流れは拡大するでしょう。品質やコストなどと同等に、持続可能な社会実現に対する貢献が、企業の競争力に直結する時代が始まっています。

 

サプライチェーンの実態把握、待ったなし

 企業の対応は待ったなし。しかし事業領域が多岐にわたり、広大なサプライチェーンを形成するグローバル企業の中には、まだまだ実態を把握できていない企業も多いのが現実です。

 

 2月にGX(グリーン・トランスフォーメーション)をテーマにした展示会の会場を訪れた際、取引先を含む事業活動全体の温暖化ガス排出状況を把握するシステムなどのブースに人だかりができ、出展者の説明に熱心に耳を傾けていました。

 

 

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 サプライチェーン規模でのサステナビリティの取り組みは、企業に多大な負担を強いることになります。個社の努力では足りず、業界全体で足並みをそろえて難局を乗り切る必要もあります。言い換えれば、いち早く態勢を整えて企業体質の強化につなげた企業群が、新たなビジネスチャンスをつかむ。そんな分かれ道に来ているのだと感じています。

 

 

執筆:フリーライター 大西穣(おおにし・ゆたか)

[プロフィール]

1991年に日本経済新聞社入社。産業機械から医療医薬、自動車まで幅広い業種の企業経営を取材したほか、環境経営をテーマに全産業横断で3年半取材した経験を持つ。2022年に独立しフリーライターとして活動中。

 

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