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SDGsは「守り」から「攻め」へ ~時系列データで見るビジネスの変遷~

SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みは、もはや企業にとって「特別な活動」ではなく、「経営の前提」となりました。しかし、多くの企業がSDGsを掲げるようになった結果、「他社との差別化が難しくなってきた」、「次に注力すべきテーマが見えにくい」といった声もあります。

本コラムでは、「サステナブル総合調査 SDGs経営編」における各社の自由記述回答をテキストマイニングし、2021年から2025年までの5年間にわたるキーワードの推移を分析しました。

そこから見えてきたのは、企業の関心がパンデミック対応やデジタルトランスフォーメーション(DX)といった「手段」から、資源循環やウェルビーイングといった「本質的な価値創造」へとシフトしている姿です。データから見た企業の意識変化と、これからビジネスが目指すべき方向性を解説します。

 

 

 

 

 

「ビジネスを通じた社会課題解決」の現在地

まず、過去5年間にわたる調査結果から、「自社の環境・社会・経済の課題解決(SDGsへの貢献)をする製品・サービス」の概要説明として記述した自由回答で出現頻度の高い100個のキーワードを抽出しました。

 

Q.自社および自社グループの環境・社会・経済の課題を解決(SDGsへ貢献)するビジネス(製品・サービス)についてお答えください

SDGsコラム_1

*2021~25年の該当設問の自由記述回答における頻出キーワード。傾向を分かりやすくするため、一般的な単語は除外
*(出所)日経サステナブル総合調査 SDGs経営編

 

気候変動関連のキーワードが目立ちますが、これだけでは細かい特徴や変遷を追うのは難しそうです。そこで、さらに詳細な分析を行うため、頻出500キーワードを12のカテゴリーに分類し、業種別の傾向をまとめました。

 

SDGsコラム_2

2021~25年の「ビジネスによるSDGsへの貢献」の自由記述回答における頻出キーワード(上位500)をカテゴリー別に分類したもの。業種は分析用の独自分類を用いている
(出所)日経サステナブル総合調査 SDGs経営編

 

 

業種別にみると、業界ごとに注力するテーマが大きく異なることがよくわかります。例えば、製造業では「気候変動」や「資源循環」といったサプライチェーン直結の課題が中心である一方、非製造業では「ライフスタイル」や「経済」などの比重が大きい傾向にあります。

各企業が自社の事業特性に基づき、SDGsを「自社らしいビジネス」へと昇華させている状況が、データからも裏付けられています。

 

データが示す関心のシフト―「効率化」から「価値創造」へ

次に、それぞれのカテゴリーについて、出現頻度と5年間の増減を分析しました。この図からは企業の関心がどこからどこへ移りつつあるのかが見えてきます。

 

 

SDGsコラム_3

*横軸は2025年のカテゴリー別出現割合、縦軸は2021~25年の出現割合の推移(直線回帰の傾き)
*(出所)日経サステナブル総合調査 SDGs経営編

 

 

「気候変動」や「資源循環」に関するキーワードは、もともと出現頻度が高い上に、近年さらに増加傾向にあります。これらはもはや一過性のトレンドではなく、企業の持続可能性を支えるのに不可欠な土台として定着したと考えられます。

一方で、「DX」「ものづくり」といったカテゴリーは、出現頻度こそ一定のボリュームを維持しているものの、トレンドとしては減少傾向にあります。DXや技術革新そのものを目的とするフェーズが終わり、それらの手段を活用して「何を実現するか」という、より具体的な目的(例えば資源循環の最適化など)へと企業の意識が移行したためと推察されます。

各年で他の年よりも出現率が高いキーワードを見てみると、その年ごとのトレンドのイメージがより鮮明になります。

 

 

SDGsコラム_4

*各年の相対的な出現率が高いキーワードから抜粋
*(出所)日経サステナブル総合調査 SDGs経営編

 

 

2021-2025年の軌跡―「危機対応」から「ウェルビーイング」の追求へ

以上を踏まえて、過去5年間のキーワードの変遷を振り返ると、SDGsに関する企業のパラダイムシフトが見えてきます。

具体的に、各年の特徴的なキーワードを振り返りながら、変化について見ていきましょう。

 

2021年~2023年:「危機対応」から「仕組み化」への助走

2021年:危機への対応とデジタル化の加速
コロナ禍の真っただ中であった2021年は、まさに「守り」のフェーズでした。キーワードとしては、医療機関への負担軽減や感染予防に関連する語句に加え、「ICT」「自動化」などが挙げられます。目前の危機を乗り越えるため、医療とデジタル技術の融合が急ピッチで進んだ年と言えます。

2022年:SDGsの定着と「暮らし」の再構築
翌2022年は、SDGsという概念自体が社会に深く浸透し始めた年です。サステナブルファイナンスの台頭により環境配慮が資金調達の条件となるなど、企業の取り組みが経営システム(仕組み)として定着しました。また、人々の関心が家庭内などの身近な生活に向けられ、快適な空間づくりや耐久性の高い商品へのニーズが高まりました。

2023年:カーボンニュートラルへの具体策と可視化
2023年は、地球環境への危機感が具体的なアクションへと変わった年です。カーボンニュートラル実現に向け、サプライチェーン全体での可視化が進み、物流やエネルギーインフラを環境仕様に置き換える動きが本格化しました。

2024年~2025年:「インフラ」から「ウェルビーイング」へ

2024年:脱炭素社会のインフラ構築と地域課題
2024年のキーワードは、単なる環境対策を超え、社会インフラそのものの変革を示すものが多く登場します。再生可能エネルギーやEV普及への投資と並行して、人口減少社会における生活基盤をどう守るかという、地域課題への言及も目立つようになりました。

2025年:循環型社会とウェルビーイングの追求
そして2025年は「生物多様性」と「ウェルビーイング」といった、今後を象徴するキーワードが並びます。 これまでのCO2削減という単一の指標だけでなく、生態系の保全を含めた包括的な環境負荷低減が求められています。

また、社会面においては、技術による効率化が進んだ先にある価値として、健康寿命の延伸や障がい者支援など、人の幸せ(ウェルビーイング)がビジネスの主眼に置かれるようになってきました。未来社会における「豊かさ」の再定義が進んでいると言えます。

まとめ:次の5年に向けた企業の羅針盤

5年間のデータを俯瞰すると、企業のSDGs戦略は以下のように進化してきました。


 1.    2021年: パンデミックへの緊急対応(守りのデジタル化)
 2.    2022-23年: 環境対応の仕組み化と実行
 3.    2024-25年: 社会課題の解決と新たな価値創造(攻めのウェルビーイング)

今後のビジネス開発において、DXやものづくりの技術力そのものをアピールするだけでは差別化が困難です。それらの技術はあくまで土台や手段であり、「そのビジネスがいかに生物多様性を守り、人々のウェルビーイングに貢献できるか」というストーリーを語れるかどうかが、今後の成長の鍵を握っているといえるでしょう。

 


日本経済新聞社と日経リサーチが実施している「日経サステナブル総合調査 SDGs経営編」のデータを活用し、 SDGsを経営戦略の一環として推進したい企業をサポートしています。サステナビリティ経営の実現・強化に関心がある方は、ぜひお問い合わせください。

 

 

この記事を書いた人

コラム執筆者_堀江
デジタルキュレーション本部 DC第3部 部長
堀江 晶子

日本経済新聞社の媒体に掲載される財務情報を担う部門を統括する。スマートワーク経営調査などの企業評価調査の他、採用計画調査、賃金動向・ボーナス調査など人事・労務系調査や、アナリストランキング、銀行ランキングなど金融系調査をこれまでに担当。

 

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