Report

人的資本開示がもたらす企業価値への好循環 「ブランド戦略サーベイ」と財務データとの関係性を分析

日経リサーチは毎年コーポレートブランドに関する評価サービス「ブランド戦略サーベイ」を実施している。昨年、評価対象企業の売上高、営業利益、海外売上高、広告宣伝費と時価総額をオンラインサービスである「ブランド戦略サーベイオンライン」に掲載した。今回その財務データとブランドデータとの関係性を調べてみた。

市場で問われる人的資本の開示姿勢

今年4月より東京証券取引所が再編され、プライム市場がスタートした。プライム市場に上場し続けるために各社これまで以上に企業価値の向上が求められる。その中でもホットな話題が「人的資本の開示」である。積極的な開示を見せる企業がある中で、まだ様子見をしているところも少なくない。時価総額との関係性を見ていくと、「人的資本」のアピールが重要なことがわかる。

時価総額とブランドデータとの関係性を示したのが表1である。計算にあたっては、双方を対数変換したデータで相関係数を計算した。

表1 2021年時価総額とブランドデータとの相関係数(上位10項目)

C8460_01

※上記はブランド戦略サーベイ測定600社のうち時価総額のデータがある312社のデータで作成

相関係数が強いと言われる0.5以上なのが「優秀な人材が多い」と「国際的である」の2項目である。ESGが投資のテーマとなっている昨今、上記データはあくまでもコンシューマーのイメージではあるが「S」の部分である「人材」を意識した投資行動ともとれる。
それでは「優秀な人材が多い」と評価されているのはどのような企業であろうか。(表2)

表2「優秀な人材が多い」評価上位(2021年・ブランド戦略サーベイより)

C8460_02

財務データは日本国内企業のデータを用いているため、アップルやグーグルなどは分析対象には入っていない。トヨタ自動車、ソニーグループとともに総合商社が上位を占めている。総合商社はもともとグローバルで活躍する優秀な人材が集まっているというイメージを持たれている。また、このサーベイでは測定対象外ではあるが、双日が第1回日経統合報告書アワードでグランプリを取るなど、企業データの開示には積極的なセクターでもある。ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイが株式の取得を進めている。
評価対象者であるコンシューマーは人的資本の開示を明確に意識して回答しているとはいいがたいが、トヨタ、ソニーグループなどとともに「優秀な人材」が集まっていると認識されているようだ。「優秀な人材が多い」のイメージが高い上位企業群は、他に比べてどのような違いがでているのだろうか。

図1は、優秀な人材が多い上位18社の平均とブランド戦略サーベイ測定全社(600社)について、当社がブランドロイヤリティの総合指標と位置付けている評価項目ごとに比較したものである。特に上位18社が際立つのが「独自性」である。全体平均の25.3%に対して13ポイント上回る38.3%に達した。独自性は製品・サービスをはじめ様々な要素で評価をされ、それを支えるのも「人材」であることを反映している。

図1 ブランド評価項目比較(全体vs優秀な人材が多い18社平均)

C8460_03

さらに、「優秀な人材が多い」というイメージと連動しているイメージ項目を見ると(表3)、「国際的である」は言うまでもなく、「一流」「経営者が優れている」との相関が高いことも明らかになった。やや相関は弱くなるものの、「優れた技術・ノウハウ」という製品・サービスの差別化の源泉であったり、「将来性」にも関係していることがわかる。

表3 優秀な人材スコアと相関が高いブランドイメージ

C8460_04

人材の強さをアピールすることで、企業の力を市場に訴求できる。人的資本の開示を保守的にとらえるのではなく、積極的に行うことで、市場で評価され、さらに、優秀な人材の獲得にも寄与できるのではないかと考える。

ブランド力の向上でお悩みの方は
お気軽に相談ください

企業のブランド価値を見える化
競合比較もオンラインで簡単にできる

「ブランド戦略サーベイ」詳細はこちら
ico_information

課題からお役立ち情報を探す

調査・データ分析に役立つ資料を
ご覧いただけます。

ico_contact

調査の相談・お問い合わせ

調査手法の内容や、
調査・データ分析のお悩みまで気軽に
お問い合わせください。

ico_mail_black

メルマガ登録

企業のリサーチ、データ分析に役立つ情報を
お届けします。