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「情報爆発時代に埋没しない」コーポレートブランド戦略をデータから考える

企業価値向上に密接に関係するコーポレートブランド戦略。情報があふれる時代、高度なブランディング&コミュニケーション戦略が企業に求められている。今回のコラムでは、2022年に20周年を迎えた日経リサーチが独自にコーポレートブランド力を測定する「ブランド戦略サーベイ」のデータから、企業のブランド力の変遷を紹介し、コーポレートブランディング成功のポイントを解説する。

ブランド力は情報の蓄積により成長する

 世の中には様々な「ブランド戦略」が存在している。共通していることは企業の能動的な発信による「情報の蓄積」なしにブランドの成長はあり得ないということだ。そして、各企業はターゲットとなる消費者やビジネスパーソン等の様々なステークホルダーに向けて、多様なメディアを通して情報を発信し、効率的に情報を蓄積・定着させようと日々苦心している。

広告費は増加傾向も、情報がターゲットに届きづらい時代に

 それが最も顕著に現れるのが広告費だろう。下のグラフは2011年~2021年にかけて日本の広告宣伝費がどう推移したかを示したものである。(図1参照)コロナ禍により、2020年に一時的に総額は減少に転じたが、この10年間は概ね上昇傾向が続いてきた。その中でも、伸びが顕著であるのが「インターネット」だ。2019年に「テレビメディア」、2020年には「プロモーションメディア」の金額を超え、2021年には広告宣伝費全体の4割程度を占めるに至っている。

 

図1:日本の媒体別広告費の推移

出典_総務省 情報通信白書

出典:総務省 情報通信白書 令和4年版

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r04/html/nd233220.html

データ出典:電通「日本の広告費(各年)」より

https://www.dentsu.co.jp/knowledge/ad_cost/index.html

 

 この動きは、消費者のメディア接触の変化に対応している。図2から一般消費者のメディア毎の接触時間の推移(1日あたり・週平均)をみてみよう。1日のうち、メディアに接触する合計時間は年を経るごとに増えている一方で、メディアの種類によって接触時間は大きく変動している。テレビを中心としたマスメディアが減少する一方、携帯電話/スマートフォンは急増している。接触時間全体に占める構成比のグラフをみると、スマホへの主役交代が鮮明になる。(図3参照)

 

図2:一般消費者のメディア毎の接触時間の推移

一般消費者のメディア毎の接触時間の推移

出典:【博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所「メディア定点調査2023」】

 

 

図3:メディア毎の接触時間の構成比メディア毎の接触時間の構成比

出典:【博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所「メディア定点調査2023」】

 

 

検索機能の発達で、能動的に情報を取得できるスマートフォン等の端末を用いたインターネット利用が増えている。これは、消費者が「自分の欲しい情報以外の情報に接触する機会」が減っていることを意味する。企業が従来のように、テレビを中心としたマスメディアを通じて情報発信を続けるだけでは、伝えたい情報が想定顧客へ届きにくくなっていくことは避けられないと言える。

情報爆発時代の到来

 それに拍車をかけているのが、加速度を増す「情報爆発」である。そのスピードは、消費者のメディア接触時間の増加ペースをはるかに凌ぐ。次のグラフは総務省情報通信白書のインターネットトラヒックの推移である。(図4参照)ビッグデータや動画データの拡大の影響もあり、世の中で取り扱われる情報量は指数関数的に増加していることがわかる。

 

図4:インターネットトラヒックの推移

出典_総務省(2022)「我が国のインターネットにおけるトラヒックの集計結果  (2021年11月分)

(出典)総務省(2022)「我が国のインターネットにおけるトラヒックの集計結果

(2021年11月分)」

 

日本のブランド評価上位企業も情報爆発時代に対応できていない

 消費者のメディアへの接触状況が変わり、企業が届けたい情報がターゲットに届きづらくなっている上に、世の中の情報量が激しい勢いで増加している。そんな中で、コーポレートブランドに対する消費者の評価はどのように推移しているのだろうか。

 以下に列挙するグラフは、日経リサーチが2003年から毎年実施している「ブランド戦略サーベイ」の一部指標である。(図5~図7参照)本調査はコーポレートブランドに対する日本の消費者からの評価を測定するものだ。

 グラフでは、自分にとってどの程度必要と感じるかを測定する「自分必要度」その企業にどの程度愛着を感じるかを測定する「愛着度」他の企業とは違う独自性を感じるかを測定する「独自性」3つについて、米IT大手のGAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック=現メタ、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフトを指す。ただし、本データではメタは除いている)と、ブランド力総合指標(総合PQ)*600社中の上位10位以内に入った日系企業の時系列評価をそれぞれ示している。

 注目すべき点は、消費者からの評価が高い日本の代表企業ですら、この20年間でスコアを伸ばすどころか維持さえもできていないということだ。

 一方で、GAFAMのスコアが対照的に維持・安定している点は、情報爆発という時代を表していると言えるだろう。

 

*日経リサーチが独自に開発したPQ(Perception Quotient=知覚指数)でブランドの総合力を指標化。人々の心の中に蓄積したコーポレートブランドが持つ求心力を可視化コンシューマーとビジネスパーソンのそれぞれについて、5つの評価項目から算出。

 

 

図5:『自分必要度』 「ブランド戦略サーベイ」より

図5_ブランド戦略サーベイ「自分必要度」

 

 

図6:『愛着度』 「ブランド戦略サーベイ」より

図6_ブランド戦略サーベイ「愛着度」

 

図7:『独自性』  「ブランド戦略サーベイ」より

 

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モノづくり日本の衰退

 コーポレートブランドの評価低落は、日本のお家芸であったモノづくり企業でも同様に起きている。次のグラフは輸送用機器業界、電機・精密機械業界の「技術・ノウハウ」イメージの平均スコアの推移である。(図8参照)2006年から2022年のわずか16年間でスコアが半減している。日本のモノづくりを牽引してきた自動車、電機製品の技術イメージ評価が国内からも失われていることがよくわかる。

 

図8:輸送用機器業界、電機・精密機械業界の

「技術・ノウハウ」イメージの平均スコアの推移(コンシューマー編)

 

図8_ブランド戦略サーベイ「技術・ノウハウ」イメージの平均スコアの推移

モノ売りからコト売りにシフトした企業の成功事例

 日本の製造業が苦境に立たされている一方で、コーポレートブランド評価を維持・向上させてきた企業もある。その事例として明治とタニタを取り上げる。

 2009年4月に明治製菓と明治乳業が経営統合して誕生した明治グループは、自社の強みを活かした「LG21」や「R-1」等の健康を意識したヒット商品の開発、事業再編による薬品事業会社「Meiji Seika ファルマ」の発足などで、「健康」という提供価値をわかりやすく着実に浸透させることで企業評価の底上げに成功している。(図9参照)

 

図9:コンシューマーPQ(明治、明治製菓、明治乳業)

図9_ブランド戦略サーベイ「コンシューマーPQ(明治、明治製菓、明治乳業)」

 

 

 タニタは計測器の大手メーカーであるが、社員の健康維持・増進を目的とした社員食堂を皮切りに、「丸の内タニタ食堂」のオープン、レシピ本などで話題を集め、「健康をはかる」企業から「健康をつくる」企業に変革を果たすことに成功した。ブランド戦略サーベイの経験価値の項目の1つである「健康への配慮が感じられる」では、全社平均が4%程度のところ、10年以上20%台のスコアを維持している。(図10参照)

 

図10:「健康への配慮が感じられる」(コンシューマー編)

図10_「ブランド戦略サーベイ」(健康への配慮が感じられる)

 

 明治とタニタの共通点は、単なるモノづくりの企業から、自社の強みを活かしたモノを活用して、健康という価値(コト)をわかりやすく提供する企業にシフトすることに成功したことである。急速な技術の進展と情報量の拡大により、製品のコモディティ化のスピードが一段と上がっている中で、製品のスペックだけでなく、提供価値をわかりやすく表現することの重要性は今後益々大きくなっていくと考えられる。

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 コーポレートブランドの成長は一朝一夕で成し遂げられるものではない。中長期を見据えた施策の立案、実行と共に、施策の効果検証も必要不可欠である。


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