京都発グローバル企業-オムロン、京セラ、島津製作所、Nidec、村田製作所-、各社のポジションを独自解説 ~ブランド貢献にみる各社の独自性【GLOBAL BRAND SURVEY 2024[BtoB編]より】~
日経リサーチは2024年10月にリリースした「GLOBAL BRAND SURVEY 2024」(以下、GBS)BtoC編に続き、11月にBtoB編をリリースした。
BtoB企業におけるブランディングは、各社課題が異なり、注力したいターゲットも各社各様だ。特に「ビジネス」シーンにおいては、取引をする上で、候補企業の一つとして想起していただくという、認知度向上を目指すレベルから、競合社とほぼ互角の金額、製品・サービスだった場合に、最後に決断の一押しとなる、当該企業に対する期待、信頼感を得るレベルまで、コーポレートブランディングの効用は様々だ。
特に後者においては、ビジネスに直結する業種・業界に勤務するキーパーソンを対象としたブランド認知・浸透の可視化、企業イメージの把握は、定期的に確認しておくべきと考える。
また、リクルートの観点からは、一般生活者、一般ビジネスパーソン、学生における自社の認知・浸透の方が、課題が大きく、重要だと考える企業も少なくないだろう。
日経リサーチ、GLOBAL BRAND SURVEY2024 [BtoB編]の概要
日経リサーチ、GBSのBtoB編は、ビジネスに直結する業種・業界に勤務するキーパーソンを対象としたもので、評価フレーム、聴取項目を知っていただくためのサンプル調査として実施した。
個別企業の課題解決のため、この評価フレームを使って、適切な調査対象者をグローバルでアレンジし、個別に調査を実施することを想定している。日本は日経電子版のID会員を対象に実施することが可能で、一般的なパネルよりもビジネス感度が高く、かつ決裁権を有している登録者から回答を得るように設計している。
本コラムでは、サンプル調査として実施した、日本、アメリカ、ドイツの下記の23業種に勤務する製品・サービス選定時の意思決定者・関与者を対象とした調査の結果をとりあげる。
日本は日経電子版会員などで構成される日経IDリサーチモニター、アメリカ、ドイツは現地委託先のスペシャルパネルを対象とした。
日経リサーチのブランド価値の測り方
はじめに「ブランド価値」の測り方を整理する。日経リサーチはブランドを資産として捉え、その価値を総合指標・日経リサーチ Brand Equity Scoreとして算出した(図1.日経リサーチブランド測定の構造参照)。
このスコアが高いほど、ブランドの価値が高い状態であると判断する。ここでいうブランド価値のスコアとは、ブランドが顧客に評価されていることを定量的に表したものであり、ブランド力(日経リサーチBrand Power)とブランド貢献分析(日経リサーチBrand Contribution)から算出する。
図1. 日経リサーチブランド測定の構造
「ブランド力」は、基礎となる「認知度」と、ブランドの「エンゲージメント」を「先進性」
「信頼度」「推奨度」「企業への支持」の4項目から測定している(図2.「ブランド力」の測定項目参照)。
生活者視点では、愛着や好感、ユニークさ、特別感など、エンゲージメントの要素として測る場合がある。一方、ビジネスにおいては企業に対する信用・信頼のほか、時代の先を行く動きや、ビジョンを掲げた事業活動が重要であり、企業の「先進性」の有無がエンゲージメントに深く関係していると考え、測定している。
図2.「ブランド力」の測定項目
「ブランド貢献分析」は、情報のアクセスのしやすさなどをあらわす「利便性」や購入後の「カスタマーサービス」に関する項目を、BtoB特有の項目で測定している(図3.「ブランド貢献分析」の測定項目参照)。
図3.「ブランド貢献分析」の測定項目
ドイツにおける各社の評価
ここからは、京都に本社をおく、下記の5社のドイツにおける評価をとりあげたい。オムロン、京セラ、島津製作所、Nidec、村田製作所 (五十音順)。
ドイツは自動車産業を中心としたその産業構造と欧州における立地からも、各社とも重要な拠点国であることは間違いなく、企業買収や出資の動きも活発な地域だ。まず5社のブランド価値の総合結果(日経リサーチ Brand Equity Score=NBES)からみてみよう(図4.NBES結果参照)。トップは京セラ。以下、オムロン、村田製作所、Nidec、島津製作所の順となった。
図4.NBES結果
総合指標(NBES)は、ブランド力(NBP)とブランド貢献分析(NBC)から算出していると説明した。スコアを見てみると、5社のうち京セラがいずれのスコアも比較1位であることがわかる。しかし個社ごとにみてみると、状況が異なっていることがわかる。
例えば、5社比較においては全体4位のNidec。ブランド力(NBP)はスコア40台とOMRONに並ぶレベルで決して悪くないことがわかる。結果、全体順位が低い理由は、ブランド貢献分析(NBC)であることがわかる。一方で、5社比較においては5位となった島津製作所は、Nidecと異なり、ブランド貢献分析(NBC)は、村田製作所、Nidecを上回っているが、ブランド力(NBP)のスコアの低さが全体に影響していることがわかる。
ではここから島津製作所がNBESのスコアアップのために何が必要か、その視点でみてみよう。
NBPスコアが低いということは、構成する「認知度」と「エンゲージメント」のどちらかに要因があるということになる。 島津製作所の認知度は、47.0%。他社が50%超の中、やや低いことがわかる(図5.NBP結果参照)。では認知を獲得できればスコアが上昇するのか。一方の「エンゲージメント」のスコアを見てみよう。エンゲージメントは、トップの京セラやOMRONと同じレベルであることがわかる。
さらに詳細を見てみると、「推奨度」 や「企業への支持」は5社中トップであることがわかる。
エンゲージメントは、認知者に絞って測定していることから、つまり島津製作所は、認知されている決裁者におけるエンゲージメントでは強いことがわかる。
図5.NBP結果
さて、島津製作所を認知している決裁者の人々はどのような点に魅力を感じているのだろうか(図6.島津製作所の魅力点参照)。15の聴取項目をスコアの高い順に見ていると、トップは、「情報のアクセスのしやすさ」。以下、「伝統・歴史」、「広告CM」、「品質」「テクニカルサポート」が続いた。「エンゲージメント」の高さにつながっている要素と推察できる。
BtoBブランディングの戦略として、認知率の向上よりも、認知している方々と確実にエンゲージメントが築けていることを重視する志向であるならば、この結果はある種、成功していると言える。
図6.島津製作所の魅力点
さらに上を目指す上で、ベンチマークとして、トップの京セラをみてみよう(図7.京セラの魅力点参照)。企業としての魅力のトップはスコアからは「専門性」、2位に「価格」。以下「情報へのアクセスのしやすさ」、「伝統・歴史」と続く。これら京セラに対する魅力度と、本来、回答者(決裁者)自身の製品・サービスの購買利用時に重視する点との合致度が5社の中では高く、高順位になる要因と考えられる。
図7.京セラの魅力点
日経リサーチGBSでは、あらかじめ選択肢を提示して、各社の企業に対する評価・印象と、製品・サービスに対する印象の2種類のイメージ項目を聴取しているほか、また選択肢式の設問とは別に、自由記述で、各社へのコメントも収集している。
結果として表れるスコアの背景、読み解きを様々なデータやWordからアプローチできるようにしている(図8.自由回答の可視化参照)。下記は、今回比較対象とした5社に対して、それぞれ「思い浮かべることやものは何か」を尋ね、自由に記述があった現地語を英語で表示した結果だ。
言及された頻度が高いほど大きく表示されるWord Cloudからも各社の個性が表れているようだ。
図8. 自由回答の可視化
※現地語での記述は英語に機械翻訳して分析した
ビジネスのグローバル展開においては、各社、国により売り方・商流が異なり、直接販売ではなく代理店がその役割を担うケースも多く見受けられる。テクニカルなサポートも自社が直接対応していないケースも多いだろう。
企業の魅力として、重視される傾向がみられる「専門性」や「情報へのアクセスしやすさ」「テクニカルサポート」は、誰がその役割を担っているかによって、施策の打ち方も変わってくる。
BtoBはBtoCと比較すると、ユーザー・取引先の顔が見える世界。お客様、取引先は自社・競合社をどう見ているのか。自社のコーポレートブランド戦略に合わせて、GLOBAL BRAND SURVEYの評価・分析データをぜひご活用いただきたい。
(エグゼクティブ・グローバルリサーチ・コンサルタント 香本真江)
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