調査レポート「ビジネスパーソン6,000人に聞くDXの実態」~日経ID会員対象、取り組み状況明らかに~「戦略作成」23%、「営業DX」18%にとどまる
新型コロナウイルスの感染状況は足元、落ち着いてきた。2年近いコロナ禍でビジネス環境が変わる中、デジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性がうたわれた。DXを推進して仕事のやり方を変えた企業がある一方で、中小を中心にまったく手付かずの企業も多い。日経リサーチはこのほど、DXへの意識や取り組み状況について、日本経済新聞電子版などの登録読者である「日経ID会員」に対してアンケートを実施した(回答数6,700)。DXの実態とともに、それを推進するうえでの課題も浮き彫りになった。
中小企業勤務者、DXへの意識高くなく
勤め先が抱えている課題として18項目提示し、回答者の考えに当てはまるものをすべて選んでもらった。下表は全体の回答比率が高いもの上位10項目を表示している。「業務プロセス・スピードの変革」「生産性の向上」「スタッフ・事務の効率化」が上位5項目のうち3項目を占め、「生産性」が依然として日本企業の課題であることがわかる。従業員規模でみると、従業員規模が1,000人未満の中小企業では実は生産性関連は突出した課題ではなく、逆に人材の採用や営業力強化という日々の業務を回すところにもそれなりの回答者が課題と感じていることがわかる。
Q. あなたの勤め先が抱える課題として、あなたの考えとしてあてはまるものを選んでください。(いくつでも)
企業規模が大きくなるにつれて課題と感じる回答者が増えた項目に、網掛けをした。特に「DXの推進」は、従業員100人未満の企業と10,000人以上の企業を比較すると、3倍近い差となった。前述のように、100人未満の企業では「営業力強化」など日々の業務に課題があり、DXにまで意識が向いていない可能性がある。また、DXへの認知を聞いたところ(下表)、「知っている」は全体の72.6%、「聞いたことはあるが、内容はよく知らない」は20。6%だった。従業員規模が小さくなるにつれ、DXへの認知も低くなる傾向があり、従業員が100人未満の企業では、約3割が「内容はよく知らない」と答えた。
Q. あなたは「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉を知っていますか。(ひとつだけ)
役職と企業規模を組み合わせてみると、1万人以上の大企業役員・本部長などの上位層は多くのことを課題と考えている一方で、100人未満の小企業は役員層から一般社員層に至るまで課題と感じていることが少なくなる。
■従業員x規模別の「勤務先の課題」と考えている上位10項目
注)緑網掛けは全体と比べて5ポイント(濃い色は10ポイント)以上低いもの
ピンク網掛けは全体と比べて5ポイント(濃い色は10ポイント)以上高いもの
今後投資すべき優先分野も聞いた。全体で見ると「DXの推進」5番目となったが、やはり大規模企業からの回答が中心であり、従業員規模が小さいと「DXの推進」は優先分野にはなっていない結果となった。
Q. 今後、あなたの勤め先で、優先的に投資を行うべき分野はどれだと思いますか。あてはまるものを選んでください。(いくつでも)
■従業員規模別の「DXの推進」が優先投資分野と回答した比率
DXの取り組み、具体策はこれから
DXの進捗状況をDX推進の基本をなす「DXの戦略作成」、そこから派生する「新サービス・市場創出DX」「営業活動・マーケティング活動DX」「業務DX(コーポレート業務、バックオフィスなど)」「事業プロセスDX(サプライチェーン改革など)」の4つの領域、それらに加えてDX推進には欠かせない「IT・インフラ強化」について聞いた。従業員の規模別で多少の濃淡はあるものの、もっとも高い「IT・インフラ強化」でも30%にとどまる。他の項目の進捗は10~20%に過ぎず、DXの具体的な取り組みはこれからと言えそうだ。
Q. あなたは勤め先では、以下の項目についてどの程度取り組みが進んでいますか。(それぞれひとつだけ)
■従業員規模別の、それぞれのDXが「進んでいる(非常に進んでいる+進んでいる)」比率
2021年1月に今回と同様、日経ID会員に実施した調査では「DXの戦略策定」と「DXを推進するためのITインフラ強化」に取り組んでいると回答した人はそれぞれ13.7%、18.9%であった。今回は10ポイントかそれ以上増えており、低水準ながら企業の取り組みは進んでいるとは言えそうだ。
今後のDX推進の課題
DXを推進するうえで課題となっていることを12の選択肢から選んでもらい、前回1月調査と比較した。(選択肢の数は異なる)。上位2項目は変化なく、「人材・スキル不足」と「費用対効果」が挙がった。網をかけている項目は、1月調査と比較して変化が大きいものだ。1月調査よりも改善したのは「既存システムによる制約」と「セキュリティ面の不安」。一方悪化したのは「DXを推進する組織・体制がない」と「必要性がわからない」。規模が小さいと人員の制約が強まる傾向がうかがえる。大企業になれば逆に「縦割り組織」を課題とする回答は多く、全社最適ではなく部門最適のDXが進む可能性がありそうだ。「必要性がわからない」は特に100人未満の企業での回答が多くなった。
Q. あなたの勤め先で、DXの取り組みを進める上で課題となっていることは何ですか。
テレワークの実施状況は? 30%が「なし」
回答者本人のリモートワーク状況について聞いた(9月調査のため多くの自治体で緊急事態宣言中であった点は留意が必要)。完全リモートは1万人以上の大企業でも10%程度にとどまっている。100人未満でも8%程度で、規模の違いによる差は大きくない。リモート比率が0%は1万人以上の大企業で17%なのに対し、中堅・中小企業では30~40%前後と開きが出た。
Q. あなたの直近1ヶ月のリモートワーク比率はどれくらいですか。
今後の理想的なリモートワーク比率は、やはり企業規模が小さいと0%(完全出社)が高くなり、企業規模が大きくなるとリモート比率が高くなる。ただし、100%(完全リモート)という人は一部にとどまる。どの企業規模でもリモート・出社比率が半々もしくは出社比率のほうが高いのが理想的という回答だった。
Q. 今後、新型コロナウィルスの問題がなくなった時に、あなたの思う理想的なリモートワーク比率はどれくらいだと思いますか。
出社比率が半々かリモートよりも多くというのが回答者の意向だが、出社のほうが高くなる要因を探るために、リモートワークのするうえでの問題点を聞いた。上位3番目までの問題はどの従業員規模の回答者でも同じだったが、従業員規模が大きくなるとコミュニケーション不足が一番の問題点になる。チームやほかの人が関わる事項は、企業規模が大きくなると問題とする回答者が多い。例えば「対面に比べて説明がしにくい/わかりにくい」「組織の一体感やチームワークの情勢が難しい」などだ。一方、個人の問題である「仕事とプライベートの切り替えが難しい」「仕事のパフォーマンスが低下する」などは、どのような企業規模でも似たような傾向だった。
Q. あなたがリモートワークをするうえで問題となることをお選びください。(いくつでも)
日経ID会員について
今回の調査は日本経済新聞電子版などの登録読者である日経ID会員に対して実施した。ビジネスの第一線で活躍するビジネスパーソン1,000万人からなる会員組織であり、多種多様な業種、役職の方々から回答を得られる。今回の調査は下表のような業種・役職の方々に協力を得た。BtoB向けのニッチなターゲットの調査はこれまで困難だった。日経ID会員に調査を依頼することにより、調査できるようになった。
※日経IDを利用した調査に関心を持たれた方はお気軽にお問合せください。
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-従業員規模、役職別での実態分析-
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- 勤め先企業の課題と優先投資先
- 勤め先のDXについて(従業員規模別)
- 勤め先のDXについて(役職別)
- 対象者の勤務状況
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