日々公表される「適時開示」とは?|ビジネスチャンスとリスクを掴むための情報活用術
競合他社の新事業、取引先の業績、提携先の新たな動き―このような情報を、日頃どのようにキャッチしていますか?
上場企業の重要な意思決定の多くは、「適時開示」として公表されています。それは、新たなビジネスチャンスの”兆候”であり、時として事業リスクの”予兆”にもなり得ます。
とはいえ、日々膨大な量の開示があり、具体的にどのような内容がいつ公表されているのか、詳しく知っている人はあまりいないのではないでしょうか。本コラムでは、直近数ヶ月間の開示内容をもとに、「適時開示」の基本知識をご紹介します。
適時開示とは?その目的と、開示される情報の種類
上場企業には、投資家が適切な投資判断を行えるよう、株価に影響を与える可能性のある重要情報を迅速かつ正確に公開する義務があります。これが「適時開示」と呼ばれるものです。
適時開示は「タイムリー・ディスクロージャー」とも称され、速報性が重視されます。
適時開示には大きく分けて以下の3種類があります。
- 決定情報
企業が自らの意思に基づいて決定した情報
例えば、新株の発行や他社との合併など - 発生情報
企業の意思決定とは関係なく、企業外で発生した情報
例えば、工場の火災や大株主の異動など - 決算情報
企業の成績表ともいえる、売上高や利益の額などを集計した決算内容の開示
これらの情報は、東京証券取引所が運営する「TDnet(適時開示情報閲覧サービス)」というシステムを通じて公開され、誰でもリアルタイムで閲覧することができます。
以下のグラフは、適時開示のタイトルで内容を大まかに分類したものです。決算短信や説明資料など決算関連の資料が全体の4割以上を占めますが、それ以外にも様々な情報が開示されています。
多い月には1万件以上!適時開示の件数や内容は時期により大きく異なる
適時開示される情報の量や内容は時期によって大きく変動します。特に決算関連情報は発表が集中する時期があるため、時期ごとの開示件数には大きな波があります。
実際に2025年の2~5月の開示で見てみると、3月や4月が月間6,000件に満たないのに対し、3月決算の決算発表が集中する2月(第3四半期)や5月(本決算)は、月1万件を超える適時開示情報が公表されています。
全体の件数は、相対的に件数の多い決算関連情報の開示シーズンに大きく左右されますが、カテゴリ別にみるとやや異なる傾向もみられます。例えば人事異動やファイナンス関連の情報は、3月決算企業の決算期末や定期異動シーズンの影響か、3月後半に件数の増加がみられます。
開示のピークは15時半。時間帯別の傾向
適時開示は「株価に影響を与える可能性のある情報」であるため、一般的に証券取引所の取引時間を避けて公開する傾向にあります。
このため、最も多くの資料が開示されるのは証券取引所の取引終了直後の15:30。とはいえ、取引時間中に公開される情報もあり、情報のカテゴリによって時間帯別の傾向は異なります。
カテゴリ別でみると、午前中に出る情報としては、日々の開示が義務づけられているETFの日々開示情報に代表されるような各種定例情報が挙げられます。決算関連情報のほか、人事異動など役職者関連の情報は、15時半の取引終了直後に出ることが多いようです。
一方で、16時台や17時以降といった遅い時間に目立つのは「各種重要情報」のカテゴリで、具体的には不祥事関連のリリースやTOB、事業再編といったものが含まれます。「重大情報、特に悪い情報は遅い時間に出がち」と覚えておくとよいかもしれません。
めまぐるしく変化する経済環境の中、競合他社や協業先の動きを素早く把握することが、精度の高いマーケティングや営業戦略を行う上でのカギとなります。
日経リサーチでは、ビジネスの羅針盤となる企業情報データベースに関する様々な知見を有しています。企業情報のタイムリーな収集・活用に関して課題を感じている方はぜひお問い合わせください。
この記事を書いた人

- デジタルキュレーション本部 DC第3部 部長
- 堀江 晶子
日本経済新聞社の媒体に掲載される財務情報を担う部門を統括する。スマートワーク経営調査などの企業評価調査の他、採用計画調査、賃金動向・ボーナス調査など人事・労務系調査や、アナリストランキング、銀行ランキングなど金融系調査をこれまでに担当。
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