ニュースの見方が変わる!調査データから見る企業の動向―採用調査編
3月から4月にかけて、「採用」や「賃上げ」といった、企業の動向がわかる調査が次々に発表されます。この調査から何が分かるのか、調査データの見方を解説します。
前編ではまず、新卒採用に関する2つの調査「採用計画調査」「採用状況調査」について見ていきましょう。
採用調査とは?
採用調査は、日本を代表する企業が「来年、新人を何人採る予定か」を答えるアンケートです。
現在、日本経済新聞では年に2回の調査を実施しています(調査実施を当社が担当しています)。
● 春(3~4月頃の掲載)に「採用計画調査」
● 秋(10月中旬の掲載)に「採用状況調査」
秋の調査は、内定式の時期に合わせて「計画した人数が採用できているか」について調べているもので、春の調査で計画人数が多かった企業など、対象を限定して実施しています。
企業にとって採用は未来への投資。採用計画の増減は景気の先行きを映す「温度計」として見ることができます。
調査データの見方 ー 注目すべきは増減率
まずは、調査データの見方の基本を押さえましょう。
採用調査では、「入社する年」が調査タイトルに入るという慣習があります。例えば、「26年度調査」は2026年4月に新入社員として入社する人を対象とした調査です。実際に調査を実施し新聞に掲載しているのは2025年(その1年前)であることに注意してください。

*2026年春入社の新卒採用計画、採用内定状況
*(出所)日本経済新聞2025年4月14日付朝刊、2025年10月19日付朝刊より筆者作成
▼ 各項目の説明(クリックで開きます)
| ①採用確定社数 | 採用予定人数に数字で回答があった社数。 「学歴不問で○名」といったケースや、「高卒は採用時期が異なるのでまだ全く決まっていない」といったケースがあるため、行により社数にばらつきがある |
| ②採用予定人数 | 具体的な数字の回答があった採用予定人数の全社合計。 ①と同様の理由で足し上げは必ずしも一致しない |
| ③26年春増加率 | ②の人数÷同じ企業群の25年入社の人数(実績人数)で計算した伸び率。 26年は計画人数であるのに対し、25年は実際に入社した人数であるため、計画未達になりやすい業種は、計画を増やしていなくても高い増加率になる点に注意 |
| ④25年春増加率 | 昨年の紙面に掲載されている③の値。 つまり、25年春の計画人数÷24年入社の人数 |
<採用内定状況>
| ⑤社数・⑥人数 | 秋の調査に具体的な数字の回答があった社数・人数。 秋の調査は、春の調査で計画人数が多い企業を中心に調査を依頼しているため、春の調査に比べて回答社数は半減しているが、人数的にはかなりの割合をカバーしていることが分かる 内定人数と同じ企業群の計画人数(②)を比較すると充足率になる |
| ⑦25年度実績人数 | ⑥と同じ企業群の25年入社の人数。 |
| ⑧25年比増減率 | ⑥÷⑦で計算した伸び率。 ⑥は内定者、⑦は既に入社している新入社員の人数であるため、この増減率は実績人数同士の比較であり、③や④とは意味が異なる点に注意 |
人数は調査の対象社数、回答社数によって変わってくるので、注目すべきは③26年春増加率、④25年春増加率、⑧25年比増減率です。
ただ、単年度のデータだけでは「+5%」が良いのか悪いのか判断しづらいため、次項で長期的な推移(トレンド)を見ていきます。
時系列で見る、20年間の新卒採用「大きな波」
では、実際に時系列データを見てみましょう。

*(出所)日本経済新聞「採用計画調査」「採用状況調査」より筆者作成
青い線が採用計画の対前年実績伸び率(前項の③に該当)、黄色い線が採用内定人数の対前年実績伸び率(前項の⑧に該当)です。
青い線は企業が年度の初めに立てた「これだけ採りたい」という目標、黄色い線は実際に内定を出せた(確保できている)人数にあたるので、計画の伸び率は実績の伸び率を上回るのが普通で、実際、青い線は常に黄色い線より上を推移しています。
この2つの線の間に「隙間」があるときは基本的に、企業が「採りたくても採りきれていない」状況、つまり「人手不足(売り手市場)」を意味します。これを念頭に、過去20年の動きを見ていきます。
●「採用の崖」が起きた2010年度
2008年のリーマンショックを受け、2010年度(2009年調査)は前年比でマイナス20%を超えるような急落となりました。企業が将来への投資を極限まで抑制した時期です。
このような大きな事象(2020年のコロナ禍なども該当します)が起きた場合の採用計画と採用状況の乖離は現在のような「人手不足」によるものというより、内定取り消しや採用枠の縮小といった「下方修正」による影響が大きいと考えられます。
●「採りきれない」が続く現在
2010年代半ばから現在にかけて、青い線(採用計画)と黄色い線(採用状況)の差分は拡大傾向にあります。特に直近の数年、企業は過去20年で最大級の採用意欲を見せていますが、現実はそれに追いついていません。
かつては「景気が悪くなれば採用を止める」のが当たり前でしたが、今は「景気の変動以上に、構造的な人手不足が深刻」という新しい時代に突入していることがデータから読み取れます。
まとめ
前編では、企業の「意欲」を映す採用データの読み方をお伝えしました。目標(計画)と現実(状況)のギャップから、今の「人手不足」の深刻さが見えてきたのではないでしょうか。
後編では、会社員なら誰でも気になる「ボーナス」や「給料」に関係する、賃金関連の調査について見ていきます。
めまぐるしく変化する経済環境の中、競合他社や協業先の動きを素早く把握することが、精度の高いマーケティングや営業戦略を行う上でのカギとなります。
日経リサーチでは、ビジネスの羅針盤となる企業情報データベースに関する様々な知見を有しています。企業情報のタイムリーな収集・活用に関して課題を感じている方はぜひお問い合わせください。
この記事を書いた人
- デジタルキュレーション本部 DC第3部 部長
- 堀江 晶子
日本経済新聞社の媒体に掲載される財務情報を担う部門を統括する。スマートワーク経営調査などの企業評価調査の他、採用計画調査、賃金動向・ボーナス調査など人事・労務系調査や、アナリストランキング、銀行ランキングなど金融系調査をこれまでに担当。
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