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実効性のある企業のハラスメント対策とは?

 企業のパワーハラスメント対策が転換期を迎えている。2019年5月に職場でのパワハラ防止を義務付ける関連法が成立、大企業は2020年6月から、中小企業は2022年4月から適用される。企業に相談窓口の設置や発生後の再発防止策を求めており、悪質な場合は企業名を公表される。

 企業は倫理規定や体制を整備し、発生防止のための研修などを用意している。しかし、ここ数年に表面化したハラスメント問題を振り返ると、企業規模を問わず、それらの制度が「存在する」だけでは不十分なことは明らかだ。では、何が欠けているのだろうか。

ハラスメント対策のヒントをデータ分析からひも解く

 この問いへのヒントを得るため、日経リサーチが2019年に取得したコンプライアンス経営ベンチマークデータで分析を行った。約8万人の全データの中から、今回は「従業員数1000名以上の企業に勤務する正社員の男女」の約2万人データの分析結果を紹介する。

 ハラスメントの体験層と未体験層で、どのような点で違いがあるのか。今回は特に「ハラスメントを受けたことがあるか」という質問に「とてもそう思う」と回答したハラスメント体験層と「全くそう思わない」と回答したハラスメント全く体験なし層の回答傾向に着目したい。

分析結果① ハラスメントが起こりやすい背景の1つとして、人員不足で恒常的に繁忙な労働環境があるようだ

 ハラスメント体験層は、ハラスメント全く体験なし層に比べて、人員不足や常に繁忙な労働環境であるとの回答傾向が顕著であった。つまり、ハラスメントが起こりやすい体質の背景の一つと解釈できる。
 人員不足で常に繁忙な労働環境の改善は、ハラスメント体質の改善にもつながる可能性があると考えられる。

図表1 職場は、残業しないと終わらない業務量になっている

C7161-01

図表2 職場は、忙しく、仕事がまわらず疲弊している

C7161-02

分析結果② ハラスメント体験層は不当な扱いを受けることへの懸念が強く、相談窓口を利用しづらいようだ

図表3-a 職場の不正や不祥事を相談・通報したら、不当な扱いを受けると思いますか。「とてもそう思う」の回答割合

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図表3-b 職場の不正や不祥事を相談・通報したら、不当な扱いを受けると思いますか。
「とてもそう思う」の回答割合

C7161_03b

 データでみると相談や通報をしてほしいハラスメント体験層ほど、不当な扱いを受けるのではないかという懸念が強い傾向がわかる。「職場の不正や不祥事を相談・通報したら、不当な扱いを受けると思うか」という質問では、「セクハラ体験あり層」が不当な扱いを受けると思う回答割合は全体値と比べて+33.2ポイント、「パワハラ体験あり層」でも全体比で+23.3ポイントと非常に高い結果であった。
 職場でコンプライアンスによる問題で悩んだ時の相談相手を聞くと、ハラスメント体験層は家族や友人、知人に相談する割合が全体に比べ6ポイント高いことが明らかになった。

図表4 職場でコンプライアンスによる問題で悩んだ時、誰に相談をしますか。(いくつでも)

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 このような結果をふまえると、ハラスメントも含め不正や不祥事について会社が迅速に実態を把握するためにも、従業員が会社に安心して相談や通報できると思えるよう、会社に対する信頼感の醸成がより一層求められる。

分析③ ハラスメント未体験層の職場では、活発な取り組みに特徴があるようだ

 職場でのコンプライアンスに関する取り組みを聞いたところ、ハラスメント全く体験なし層の企業では、「周知活動」「内部監査・チェック活動」「ハラスメント防止研修」の3つの取り組みが非常に活発であることが分かった。たとえば、パワハラ全く体験なし層の企業では、周知活動は全体比で+11.6ポイント、内部監査・チェック活動は全体比で9.9ポイント、ハラスメント防止研修は全体比で+8.7ポイントとなった。

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図表5. 勤め先や職場では、コンプライアンスに関してどのような研修、取り組みを行っていますか。(いくつでも)

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能動的な実態把握からはじめよう

 パワーハラスメント防止を義務付ける関連法が大企業に適用される中、企業規模にかかわらず、企業の取り組みの本質がますます問われる時代が到来したことを認識すべきだと考える。
当社の「コンプライアンス経営診断プログラム」は顕在的なリスク群を網羅しているだけでなく、重要な企業文化や土壌に潜む潜在的リスクまで徹底的に実態把握することができる。まずはハラスメントの具体策を検討する前に、改めて、自社の企業文化や具体的なリスクの所在を総点検してはどうだろうか。

(営業本部営業企画部 小林万希子)

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