グローバルビジネスパーソンのコンプライアンス意識
1.世界のビジネスパーソン、3割が問題抱える
日経リサーチは20カ国・地域のビジネスパーソン2万2832人を対象に、コンプライアンス(企業倫理・法令順守)についての意識調査を実施した。それによると、「職場でコンプライアンスに関する相談・通報制度を利用したいと思う事態があった」との回答は全体で32%に上り、3割のビジネスパーソンが問題を抱えていることが明らかになった。
具体的にどんな問題が職場で起きているのか。2019年に調査を実施した8カ国・地域(日本、韓国、台湾、カナダ、オーストラリア、ロシア、シンガポール、ブラジル)のみのデータではあるが、いずれの国でも最も多かったのは「過剰な業務量・勤務時間」であった。その他、「上司・同僚・取引先からの不適切な会話」「業務用パソコンの私的利用」「上司・同僚・取引先からの根拠のない非難・中傷」等が上位に挙がる傾向が見られた。いかに職場での嫌がらせに悩むビジネスパーソンが多いかがわかる。また、「業務用パソコンの私的利用」は、最も多いロシアでは約20%、日本も9%あった。情報漏洩の観点からも企業にとっては見過ごせない。
2.日韓台の相談先、上司より家族・友人
実際に問題が起きた時にどう対応すべきか。・・・
通常、職場で起きた問題は上司に相談すべきだとされる。上司に加えて、上司の上長や同僚、コンプライアンス部署、ホットラインを通して問題が報告され相談・解決できるか。企業が水際で問題を止められるかどうかの分かれ道になる。
今回の調査では2つの大きな傾向が見られた(図2)。「上司に相談する」割合を見ると、日本、韓国、台湾以外の5カ国では7割前後であるのに対し、日本、韓国、台湾では3~4割程度にとどまった。年長者を敬う気持ちが強い風土・文化が、企業社会にも反映して「上司に相談しづらい」空気を醸成しているのかもしれない。一方で、韓国と台湾では「家族・友人・知人」に相談する割合が4割近く、日本でも2割を超えた。家族や友人など社外の人に相談することにより、社内の情報が外部に漏れる危険が高まる。日本では「誰にも相談をしない」が他国・地域に比べて突出している。自分一人で問題を抱えてしまうのはまじめな日本人の特徴ともいえるが、組織にとっても社員のメンタルヘルスの観点からも決して良い傾向とは言えない。
なぜ問題を相談・通報してもらえないのか。企業からは「コンプライアンス研修も行い、ホットラインも用意している。それでも声を発してもらえない」と相談を受けることがある。「職場の不正や不祥事を相談・通報したら、不当な扱いを受けると思う」(図3)と答えた割合は、台湾と韓国では4割近く、日本でも3割近くに及んだ。訴えることで仕返しやさらなる嫌がらせを受けるのではないか、また自身の評価に影響するのではないかという不安や不信が、相談しづらい環境を作っていると思われる。
3.相談しやすい環境づくりのカギは、従業員が遠慮なく自由に議論できる組織風土
自社には通報制度があるからと安心してはいけない。問題を早期に察知し、解決につなげるためにはルールや仕組みだけでなく、問題に柔軟に対応できる組織づくりが不可欠である。職場で自由闊達な議論ができる企業風土が大事になってくる。
図4は「メンバー同士で、遠慮なく自由に意見したり議論したりできる雰囲気がある」職場とそうでない職場とで、「不正や不祥事を相談・通報したら、不当な扱いを受けると思う」割合を比較した結果だ。遠慮なく自由に意見や議論できる雰囲気がある職場は、そうでない職場よりも、相談・通報に関する不信感が2分の1以下であることがわかる。言いたいことが言える職場風土の醸成が会社への信頼のカギとなる。
■調査概要
調査方法 | オンライン調査 |
---|---|
対象者 | 20~50代、フルタイムワーカー |
対象国・調査期間 | 計20カ国 2018年10月実施:中国、米国、英国、ドイツ、フランス、タイ、インド、ベトナム、インドネシア、マレーシア、フィリピン、メキシコ 2019年10-11月実施:日本、韓国、台湾、カナダ、オーストラリア、ロシア、シンガポール、ブラジル |
サンプル数 | 各国約1,000s |
(国際調査本部 シニア・グローバルリサーチ・コンサルタント 西山 知見)
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