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【BtoB企業にこそ必要】 顧客ニーズも先取りできるCS調査はこう企画する

BtoB企業で営業や経営企画を担当されている方から、以下のような相談をいただくことが多い。

・外部環境の変化、特にコロナ禍を契機に加速したデジタル化により、顧客の顔・思いがわかりにくくなっている
・現在提供している製品・サービスへの満足・不満だけでなく、ビジネスにつながるニーズを理解したい
・顧客から言われたことをやる受け身の姿勢から、自ら仕掛けていけるように転換したい

不特定多数の消費者が顧客となるBtoC企業と異なり、営業担当者が顧客企業をケアするBtoB企業でも、担当企業のことは一部しかわかっていない可能性が高い。実際、当社の調査でも、BtoB企業の顧客の80%近くが、過去1年間に取引先から受けたサービスに対し不満・期待外れと感じているが、その60%近くがそう感じたことを相手に伝えていない※1。

もちろん、“顧客の声”に耳を傾けているBtoB企業は少なくない。その方法の最たるものが顧客を対象とした調査(CS調査)である。どうすれば的確な結果を得られる調査となるのか。今回は調査の企画段階で大切なポイントを紹介したい。

CS調査は単なる満足度調査ではない

上記の相談の背後には、従来のように営業担当者の能力・スキルに依存した営業活動に限界を感じていることがあるだろう。営業担当者を支えるデジタル施策、その情報も含めたコンテンツ提供、次を見据えての製品・サービス開発など、BtoB企業でも、今まで以上に“顧客の声”に耳を傾けて、組織的に対応していく要請が高まっている。

もちろん、BtoB企業でも品質担保のため、多くの企業がCS調査を実施している。ただ、目的があいまいに行われているケースも散見される。それは“もったいない”。

調査をしっかり企画、設計、分析すれば、「なぜ自社が選ばれたか(強み・弱み)」「今後、注力すべきところ」がわかる。単なる不満解消で終わらせず、次なる施策につなげられるのだ。また、“守り”の姿勢で既存顧客に対応するだけにとどまらず、隠れたニーズに先回りできる商品企画や組織運営、戦略立案など、”攻め”に活用できる。

顧客を対象とした調査(CS調査)は、ただ満足度を把握するだけにとどまらず、幅広く活用できる情報・データ収集手法なのだ。

 

調査にまつわるよくある悩み

調査に関して、下記のような経験はないだろうか?


・社内で調査を企画しようとしたが、専門的で何からはじめたらいいのか分からない 
・実施したものの、分析結果がすでにわかっていることばかりで、“使えない”
・途中で関係者があれこれ口を挟み、いろいろな設問を盛り込んだものの、本当に知りたいことが十分に把握できずに終わった
・調査結果を具体的な施策につなげられない


恐らく、調査に関わった担当者の多くが感じていることだろう。

原因を端的に言えば、「なぜ、調査をするのか?」という目的や仮説が不十分であることが大きい。調査の実施に際し、目的をしっかり整理すること、仮説をしっかり持つことがなぜ大事なのか、特に、アンケート形式の調査について、改めて考えてみたい。

「リサーチ・ブリーフ」で課題を整理して、調査目的、調査課題に変換しよう

調査を企画する場合、いきなり、アンケートの質問を考えたり、調査仕様(手法、対象者、規模など)を考えたりしがちではないだろうか?実際は、質問を考えるのは最後の段階である。

そもそも、なぜ調査をするのだろうか。営業やマーケティング上の課題があり、それに対して何らかの判断を下して対策を実施したいが、情報やデータが不足していて自信をもって/根拠をもって前に進めないからではないだろうか。

その目的に向かって、ぶれることなく調査を進めるには、個別の課題を「調査目的」「調査課題」に変換していくことが必要になる。

その変換作業を進めるため、調査の企画段階で「リサーチ・ブリーフ」と呼ばれる文書を制作するのをおすすめしたい。具体的には下記のような文書だ。

 

リサーチブリーフ
このリサーチ・ブリーフで、個別のマーケティングやマネジメント上の課題・目的を文章化する。その際、あいまいな箇条書きではなく、文章化することがポイントだ。文章にすることで細部が明確になり、翻訳された「調査課題」や、定義された「調査目的」を、関係者の間でずれることなく共有できる。

良いリサーチ・ブリーフ、悪いリサーチ・ブリーフの例

ではリサーチ・ブリーフをどのように記載するのか望ましいのか、物流業界の営業企画部の課題を仮想事例にしながら、下記に紹介する。

 

いい例・悪い例

※クリックしてお読みください

 

例えば、①背景情報でみると、良い例では「顧客企業の課題やニーズの変化に対応できていない」という問題に対して、「・・・使い分けをしている顧客が多い。・・・新サービスが目標に対して売上が著しく低い。」と言った具体的な事象を記載している。

また、②の課題でみると、悪い例では「顧客接点のオンライン、オフラインの最適化が必要」といった漠然とした表現が並ぶのに対し、良い例では「営業担当者の人手不足や負荷軽減のためにオンラインを上手に導入したい…」など具体性が高く、「顧客視点で提供する情報、手段を見直す」と調査結果を受けて何をする必要があるかも記載されている。

細部まで明確化することが重要なのだ。

効果的な調査を企画するポイント

こうしたリサーチブリーフをまとめる際、重要な「すべきこと」「してはいけないこと」は下記となる。効果的な調査を企画するポイントとして、ぜひ参考にしてほしい。


▼すべきこと
1. 「調査」自体を目的にせず、課題への解決策を提供するという考えで、困っている背景を整理する
2. 「これをはっきりさせたい」という調査課題を定義する 
3. 課題が複数ある場合は優先順位、関連性を確認する
4. 調査の結果によって意思決定すること、取るアクションを確認する
5. 判断基準を定義する/少なくとも判断の方向性を確認する

▼してはいけないこと
1. 最初から調査のフレームや手法、対象を決めてかかる
2. 課題が大雑把な記載で具体性に乏しい
3. 課題を多く挙げ過ぎる/範囲を広げ過ぎる(All-in-oneの調査はない/調査の目的がぶれる)

 


ここで改めて強調したいのは、調査の目的を明確にすること、仮説を持つことが重要である点だ。目的があいまいな場合、徐々に目的からずれて浅く広く質問してしまい、知っているようなことばかりの結果しか得られない。これでは何も解決できなくなる。

リサーチ・ブリーフをとりまとめ「調査目的」「調査課題」を定義し、仮説(=調査課題に対する仮の回答)を持ったうえで調査項目を整理していく。アンケートの質問づくりは、その先にある。

まとめ

マーケティング・リサーチは伝統的にBtoC企業で盛んに行われてきた。一方、BtoB企業は、営業担当者が手厚く顧客企業に対応しており、調査をしなくても顧客企業のことはわかっているという話もよく聞く。

しかし、冒頭でお伝えしたように、顧客のことはわかっているようで、実はその一部しかわかっていない可能性が高い。

また、多くのBtoB企業はグローバルにビジネス展開しており、欧米を中心とするグローバルな競合に対抗していくためグローバルでのCS調査も増加している。

ぜひ、BtoB企業もCS調査という有用な手法を“活用”して、顧客より一歩先を行ってほしい。その際の調査の起案の際に、リサーチ・ブリーフを活用していただければ幸いだ。

 

 



※1 調査出典

【BtoB企業CX調査】
・実施日:2022年5月25日(水)~6月8日(水)
・対象者:民間企業に勤務し、取引先種別の選定・購買・利用やその後のサポートを受ける顧客側企業の関与者
・対象商材:

A)自社製品の製造や設計・開発をするための素材・原材料・電子部品 
B)自社製品の製造や設計・開発をするための産業用装置、計測・計量機器、工作機械、制御機器など 
C)自社の基幹システム、業務システム(CRM、ECサイト、データベース、アプリなど)
D)融資を受ける金融機関
・回答者数:2,532人
・調査手法:日経IDモニターの中から上記条件に合致した方を対象にしたインターネット調査

 

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