顧客満足度を高めるには?顧客理解を深める分析ツールKeyExplorer活用事例-フィットネスクラブ編(後編)
CS調査の活用について、お悩みの方も多いのではないだろうか。今回は、日本最大級の顧客満足度調査「JCSI」の調査データについて、日経リサーチ独自の“データ&テキスト“マイニングツール「KeyExplorer」を用いた分析をご紹介する。
前編では、利用しているフィットネスクラブに対する満足度によって、利用者の特徴が異なることを確認した。
後編では満足度の高い層に絞り、サービス品質の評価の特徴、属性による満足度の特徴の違いを深掘りし、ターゲット別に響く満足度向上のポイントを抽出していく。
分析のプロセス
「満足高層」の特徴をもう少し深掘りし、お客様の顔をよりはっきりと理解していこう。
JCSI調査では、フィットネスクラブのサービス品質に関して30余りの項目の質問をしている。例えば、「交通の便がいい」、「駐車場・駐輪場が充実している」、「従業員(スタッフ)の身だしなみがいい」、「自分自身のニーズを従業員が把握してくれる」といった項目だ。
これらについて、当てはまるか否かを7段階で評価しているので、30余りの項目それぞれを説明変数にして分析してみた。
サービス品質の評価ポイント
「高満足層」のサービス品質に対する評価の特徴を表したランキング表が以下だ。上位に上がるほど、「高満足層」と他の層との違いを示す特徴が強くなる。
上位を見ると、「施設では、顧客のためにすべきことを一定の時間内でやってくれる」をはじめ、「注文した通りのサービスが提供されている」、「従業員は、私自身のニーズを詳細に把握してくれる」、「今利用している設備・機械に、満足している」、「従業員は、私の要求にすぐに対応してくれる」というように、お客様に寄り添ってフィットネスクラブでの体験価値を上げるような項目が来ている。
施設や機器、プログラムといったハード面だけでなく、顧客視点で寄り添い、満足度をお客様に実感させる、自分がお客様であるということを感じさせてくれる、そんな従業員サービスを感じると満足度が上がっている。CX(顧客体験価値)を高めるようなサービスということだろう。
ただ、これだけでは従業員がどんなことに寄り添い、どんな要求に答えてくれているのか、それによって利用者や我々をどんな気持ちにさせてくれるのか、といった具体的なところはまだ漠然としているので、もう一段、ドリルダウンしていきたい。
どんな気持ちから評価に至ったのか
「満足高層」で顧客視点に寄り添う上位4項目のいずれかに当てはまる人を目的変数に、「どんな満足の意見があるか」という自由回答(定性データ)と、「びっくりした」、「嬉しい体験があった」、「ワクワクした」、「感動した」といった「感動/失望体験指標」を説明変数にして、もう少し利用者の態度を見ていこう。
まず「どんな満足をしたか」では、「雰囲気」という言葉が非常に多く出ている。「通いやすい雰囲気」や「お店の雰囲気が良い」というように、施設の雰囲気の良さが評価されていた。
さらに「豊富」と「きれい」という言葉も多い。「マシンが豊富」、「器具がきれい」というように、ハード面に対する良さが満足に繋がっている。
また「体力」や「維持」、「つく」という言葉は、「体力維持に効果を感じている」や「筋肉がついた」という内容で、通うことによって効果が実感できたことが満足の内容として出てきている。
次にマインドをみていこう。以下は、感動や失望体験の指標のランキングである。
上位を見ると、いらいらするような体験をどの程度したかに対して「全くない」、つまらない体験も不愉快になったことも「全くない」というよう評価だ。強い感動を与えることより、いかに失望させないか、マイナスな気持ちにさせないかがポイントになっていることが分かる。
このような形で、何を評価したのか、どのような気持ちになったのか、どんな満足体験をさせたのかをどんどん深掘りし、満足高層の解像度を高めていくことができる。
属性別の満足の特徴
最後に、個別に属性別の満足の特徴を深掘りしていく。
ここまでで、満足度の高い低いによる基本的な属性や使い方の違いは把握できた。そして深掘りすることで、高満足者の解像度を上げて理解することもできた。
ただ実際に施策に落とす時、満足度の特徴で施策化して1人1人に本当に響くのか、満足度「中」「低」の特徴的な属性に当てはまる人の満足度はどう向上させたらいいのか、といった疑問が残るかもしれない。
そこでターゲット(属性)ごとに高満足者を深掘りすることで、狙いたいターゲットの満足度を向上させる施策の仮説出しをできるのではないかと考えた。ここで満足度が低い層の特徴的な人の満足度向上策を見つける分析を考えてみたい。
女性満足者の評価ポイント
満足度1から5のワードクラウドを改めて見ると、低満足者の特徴的な属性として出ていたのが低利用者と女性だった。ここでは女性に絞って分析事例を紹介する。
以下の2つの表のうち、左は30余りの項目のサービス品質評価で、満足度の高い女性は何が特徴的だったのかをランキングにした上位の項目である。
これを見ると、「従業員は私自身のニーズを詳細に把握してくれる」や「従業員は私の要求にすぐに対応してくれる」、「従業員は私に対して常に礼儀正しい」、「従業員は私の質問に答えられる十分な知識を持っている」というように従業員の寄り添う姿勢や従業員自身の振る舞い、接遇などを評価する声が評価ポイントとして上位に上がった。
分かりやすくするため、隣に対比する形で男性の高満足者のランキングも掲載したが、1位が「トイレに清潔感がある」で、以下「ウェブサイトに有益な情報が掲載されている」、「プログラムサービスなどの価格表示が適切である」、「注文した通りのサービスが提供されている」、「設備・機械に満足している」となった。
男性は情報価値やトイレ・機械設備といったハード面の評価が高い満足につながるのに対し、女性は従業員自身や従業員が自分自身に対してどう対応しているかという全く違う観点に立ち、従業員の寄り添う姿勢や接遇を評価している。
また、女性の高満足者の満足意見の特徴を見ると、「維持」、「つく」、「体力」という言葉がよく出てくる。実際の回答の原文は、「体力維持に効果を感じている」や「体に負担なく体力がつく」など、通う効果への実感・充足感が表れている。
「利用」、「できる」という言葉も多かったが、「できる」には「自然に筋トレができる」や「手軽に利用できる」、「自分のペースでできる」、「安心して利用できる」など様々な「できる」があり、通いやすさ、利用しやすさ、自分で好きな時に利用できて続けられるなどの意見が、特徴的な評価のポイントとして上がっている。
通う実感と利用しやすさが女性の満足度向上のポイントではないか。
おわりに
改めて、分析結果をまとめてみよう。
満足高層は若い男性が多く、筋肉をつける、運動を楽しむといった利用目的が強いハードユーザーで、満足度の向上には、顧客視点に寄り添い、満足を実感させてくれることが重要である。
満足中層は法人利用の50代の会社員が多い。
満足低層は利用頻度が少ない、女性の40~50代が多く、スタッフの応対に対する評価がポイントになっている。
また、低満足者の特徴的な属性だった女性を例にとり、低満足者に対する効果的な施策につなげる分析を試み、特徴的なポイントを発見できた。
これらの分析は、満足とのレベル感だけでなく、どのように対策したらいいかという形でデータを見ることもできるという事例として紹介した。分析をどんどん深掘りすることにより、顧客理解の解像度を高めることができる。
顧客の解像度を上げて理解したい、CS向上のため何か施策につげたいといった考えや課題をお持ちの方は、ぜひ参考にしていただければ幸いである。
当社はJCSIの利用推進パートナーとしてレポートなどを販売するだけでなく、多数のCS調査のカスタマイズ調査を企画・設計している。顧客体験価値・満足度の向上でお悩みの方は、お気軽にご相談いただきたい。
顧客満足度を高めるには?KeyExplorerによるJCSIデータ分析事例のご紹介 フィットネスクラブ編 前編 はこちら▶
- よく見られている人気記事
-
期待高まるAI、それでも8割の医療機関は未導入。理由は「費用対効果わからない」
記名か、匿名か。社員の本音を引き出す従業員コンプライアンス意識調査のコツ
企業におけるコンプライアンスの重要性とは
何が違うか?成功する社名変更と失敗する社名変更 ー分かれ道はここにある|「ブランド戦略サーベイ」を読み解く
企業ブランディングが必要な理由とは?企業ブランド向上に取り組むポイントや進め方を解説
- メルマガ登録
- 最新の調査レポート、コラム、セミナー情報をお届けします。 メルマガ登録はこちら
- メルマガ登録
- 最新の調査レポート、コラム、セミナー情報をお届けします。 メルマガ登録はこちら
- よく見られている人気記事
-
期待高まるAI、それでも8割の医療機関は未導入。理由は「費用対効果わからない」
記名か、匿名か。社員の本音を引き出す従業員コンプライアンス意識調査のコツ
企業におけるコンプライアンスの重要性とは
何が違うか?成功する社名変更と失敗する社名変更 ー分かれ道はここにある|「ブランド戦略サーベイ」を読み解く
企業ブランディングが必要な理由とは?企業ブランド向上に取り組むポイントや進め方を解説
- メルマガ登録
- 最新の調査レポート、コラム、セミナー情報をお届けします。 メルマガ登録はこちら
- メルマガ登録
- 最新の調査レポート、コラム、セミナー情報をお届けします。 メルマガ登録はこちら