顧客満足度を高めるには?顧客理解を深める分析ツールKeyExplorerによるJCSIデータ分析事例のご紹介 生命保険編(前編)
CS調査の活用について、お悩みの方も多いのではないだろうか。今回は、日本最大級の顧客満足度調査「JCSI」の調査データについて、日経リサーチ独自の“データ&テキスト“マイニングツール「KeyExplorer」を用いた分析をご紹介する。
KeyExplorerの最大の特徴は、アンケートの選択肢(定量データ)と自由回答のテキスト(定性データ)を一緒にマイニングできることである。
具体的な施策につなげるにはWhoとWhatを知ることが非常に重要だと言われている。誰(Who)の理解には性別や年代やサービスの使い方など、どのようなお客様なのかを知る選択肢(定量データ)が役に立ち、何(What)にどんな価値を求めているかを知るには、満足しているところや不満があるところをお客様に生々しく語っていただく自由回答(定性データ)の意見が役に立つ。
選択肢(定量データ)に加えて自由回答(定性データ)を加味することで顧客の解像度をあげ、施策に具体的につなげるための分析の参考となれば幸いだ。
分析データ:生命保険の保険金・給付金・見舞金等の受け取り・支払い請求の経験者
使用したデータはJCSIの2023年第3回調査の生命保険編15社のいずれかについて、最近3 年間に保険金・給付金・見舞金等の受け取り・支払い請求の経験がある4725人の調査データである。
分析の目的・分析方法
まず満足度によって下図のようにグルーピングした。
JCSIのCS1という指標は10点満点で評価しているが、9点・10点をつけた人を満足が高い層、8点の人は全体で22.5%と多いので満足中層①、6点・7点は満足中層②とし、1~5点を満足が低い層として、この4層で分析していく。
前編では、その層に分類された人が他のグループに比べて何が違うのか、何が特徴なのかに着目している。
後編では、さらに深掘りして施策の方向性を探索していく。
最初の分析は満足度の高低によってどんな特徴があるのかである。4つの層ごとに属性や評価点などにどのような違いがあるのか。下図の右側の青の部分がJCSIのアンケートの選択肢の質問で、これらを使って分析していくが、その人たちが何を言っているのかは下図の右下にある4つの自由回答の質問を対象にして分析を進めている。
満足高層の特徴
ます満足度が高い層の特徴を見ていく。
下図の上半分は選択肢を分析した結果、満足が高い層が、他と比べて特徴的な項目であり、特にその特徴が強く出ている上位のものでワードクラウド風に示している。
下図の下半分は先ほど触れた4つの自由回答を全部入れてテキストマイニングした結果、他の層に比べて顕著な特徴が強いものを順にランキング化し、上位をワードクラウドで示している。文字が大きければ大きいほど特徴が強いことになる。
上半分の選択肢のものを見ると、きっかけは店頭、DM・チラシ・メルマガといったいろいろな接点があり、新規申し込みは直接郵便で、医療保険、女性60-70代などが特徴的だ。
下半分の自由回答のものを見ると「対応」「迅速」「請求」が大きい。
KeyExplorerは原文に容易にアクセスできるので、原文を確認してみると、「対応」の「迅速」さや「丁寧」さ、特に「請求」後の対応の迅速さが特徴的だった。また、真ん中の「電話」だが、良い点でこのワードが出ているのも特徴的と言える。
「掛け金」「安い」はそのままの意味だ。
KeyExplorerはこういう形で、選択肢も含めてワードクラウド風に表示できるので、感覚的に解釈しやすい。
まとめると、満足高層は女性、特に60-70代が多く、営業担当者だけでなく、さまざまなチャネルに接して、電話や店舗でスムーズに問題解決している特徴がうかがえる。
満足中層①の特徴
続いて満足中層①を見ていく。
上の選択肢のものは世帯年収が1000万~1500万円の大卒、男性60-70代、がん保険、個人年金、医療保険、そして勤務先の包括・団体割引などが特徴的である。
下の自由回答のものは「早い」や「支払い」が大きく、「請求」「手続き」や「支払い」が「早い」ことが高い評価を受けるポイントである。「保険会社」選びでは「知り合い」ルートとともに「ほけんの窓口」が出ている。そのほか「補償内容」や「安い」「得」なども出ていて、「補償内容」や「お得感」も特徴的だ。
まとめると、男性60-70代が多く、世帯年収も高く、包括・団体割引で加入して、補償内容と保険料のお得感を感じている。対応面では手続きなどの早さを評価していることが特徴として浮かんでくる。
満足中層②の特徴
つづいて、満足中層②についてみる。
上の選択肢で、覚えていない・わからないが目立っている。きっかけや申し込みを覚えていない・わからない人が多いのが特徴だが、一方で販売代理店というワードも見える。男性で技術系の会社員が多いのも特徴になる。
下の自由回答は「ない」が真ん中にドンと来ているが、選んだ理由は「ない」という回答が多かった。「手続き」は面倒さや不手際と絡んでいて、「掛かる」が大きいのは時間がかかるということである。また、「保険料」が「高い」や保障内容と見合わない、「担当者」への不満も特徴的に出ている。
まとめると、男性で技術系会社員が多いが、保険に思い入れは低く、総じて関心が薄い。手続きで発生した問題が満足度を左右しており、手続きに関する面倒さや不手際、時間がかかることへの不満が特徴的と言える。
満足低層の特徴
最後に満足低層の特徴を見ていく。
上の選択肢の結果をみると、解約している人が多いのが特徴だ。未婚、男性40代、きっかけや保険料は覚えていない・わからない人が多いが、一方で、家族・親戚・知人が生命保険会社の関係者というのが特徴的に出ている。
下の自由回答も満足中層②と同様に「ない」が大きい。これは満足点や保険の選択理由がないということ。「対応」や「担当者」が大きいのは、「営業」担当者への不満であり、保険商品や「手続き」の面倒さ、時間がかかることへの不満も特徴的に出ている。
まとめると、未婚、男性40代で、解約が発生しているケースが多く、担当者や保険会社への不満が大きいことがわかる。
深掘りのポイント
4つの層の特徴を見て、深掘りのポイントを2つ決めた。
①満足高層では良い点のコメントで「電話」が注目される。「電話」と記した人から満足度強化の施策の方向性を探っていく。
②満足低層では解約が多かった。解約時に何が起きているのか、特に担当者への不満が大きそうだが、解約発生時の状況から満足低層の満足度改善の施策の方向性を探索する。
後編では、2つの深掘りと施策化の方向性について解説する。
今回は15社の生命保険の利用者を束ねた業界全体を示す分析だが、自社顧客データで分析すれば自社顧客の特徴を理解したり、満足度を上げる施策のヒントにしたりすることももちろん可能である。
当社はJCSIの利用推進パートナーとしてレポートなどを販売するだけでなく、多数のCS調査のカスタマイズ調査を企画・設計している。顧客体験価値・満足度の向上でお悩みの方は、お気軽にご相談いただきたい。
顧客満足度を高めるには?顧客理解を深める分析ツールKeyExplorerによるJCSIデータ分析事例のご紹介 生命保険編(後編)はこちら→
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