顧客満足度を高めるには?顧客理解を深める分析ツールKeyExplorerによるJCSIデータ分析事例のご紹介 クレジットカード編(前編)
CS調査の活用について、お悩みの方も多いのではないだろうか。今回は、日本最大級の顧客満足度調査「JCSI」の調査データについて、日経リサーチ独自の“データ&テキスト“マイニングツール「KeyExplorer」を用いた分析をご紹介する。
KeyExplorerの最大の特徴は、アンケートの選択肢(定量データ)と自由回答のテキスト(定性データ)を一緒にマイニングできることである。
具体的な施策につなげるにはWhoとWhatを知ることが非常に重要だと言われている。誰(Who)の理解には性別や年代やサービスの使い方など、どのようなお客様なのかを知る選択肢(定量データ)が役に立ち、何(What)にどんな価値を求めているかを知るには、満足しているところや不満があるところをお客様に生々しく語っていただく自由回答(定性データ)の意見が役に立つ。
選択肢(定量データ)に加えて自由回答(定性データ)を加味することで顧客の解像度をあげ、施策に具体的につなげるための分析の参考となれば幸いだ。
分析データ:クレジットカード利用者(半年以内に2回以上)
今回の分析はJCSI2023年度第4回調査のクレジットカード編で13のカード会社の中から半年以内に2回以上利用経験がある4012人の調査データを使った。
今回は13社の利用者を束ねた業界全体を示す分析を紹介するが、自社の顧客のデータだけに絞って分析すれば、顧客の特徴の理解や施策のヒントにすることもできる。
分析の目的・分析方法
今回はクレジットカード会社における満足度の特徴を様々な切り口で探り、その後、ロイヤル層に引き上げるためのヒントを探っていく。まず前段として、満足度の特徴を見る上で、カード会社に対する満足度を10段階で評価した回答をもとに、回答者を4つの層に分けた。
JCSIのCS1という指標は10点満点で評価しているが、9-10と回答した人を満足高層と分類した。続く6-8は満足中層だが、さらに2群に分け、8の人を中層①、6-7をつけた人を中層②とし、最後に1―5と回答した不満層を満足低層と分類した。前編では、このように区分された人たちはそれぞれ他のグループと比べて何が違うのか、特徴を分析していきたい。
後編では、さらに深掘りして施策の方向性を探索していく。
特徴を見る上で、満足高層から満足低層までの4区分を目的変数として設定する。
続いて属性や評価点などにどのような違いがあるか?について選択肢(定量データ)によるデータマイニング、その人たちは何を言っているのか?について自由回答(定性データ)によるテキストマイニングの両方を用いて、満足の高低によって属性や利用状況がどう異なるのか特徴を探っていく。KeyExplorerではデータマイニングとテキストマイニングの両方を併せて分析できる。
満足高層の特徴
ます満足度が高い層の特徴を見ていく。
下図の上半分は選択肢を分析した結果、満足が高い層が、他と比べて特徴的な項目であり、特にその特徴が強く出ている上位のものでワードクラウド風に示している。
下図の下半分は自由回答をテキストマイニングした結果、他の層に比べて顕著に特徴が強いものをランキング化し、上位をワードクラウドで示している。文字が大きければ大きいほど特徴が強いことになる。
満足高層の特徴は直近の利用が2カ月以内で、カード選択の際はポイント・マイルの溜まりやすさや還元率、利用できる店舗やサイトが多いこと、利便性、分かりやすさなどを重視していることがあげられる。自由意見を見ても「ポイントの還元率がいい・嬉しい」といった気持ちの部分やタッチ決済やd払いなどが「利用できる」こと、「利用できるお店の多さ」「リアルタイムの通知で利用確認できる」こと、また、「見やすい・使いやすい・審査が通りやすい」といったところも評価されている。
まとめると、利用頻度が高く、ポイント還元率の良さや利便性の高さなどを高評価していることが満足度9-10の満足高層の特徴としてあがっている。
満足中層①の特徴
次に満足度で8をつけた、満足中層①である。
この層は普段の利用がだいたい月3万円程度で、2人世帯や50代以上、会社役員といった特徴が出ている。また、カード選択の際はステータスになると感じること、会員特典の内容が魅力であることなどを重視している。自由回答では「年会費が無料でポイントがたまりやすい」や「使いやすい」、「使い勝手が自分に合っている」などを評価ポイントにしていることが特徴だ。一方、問い合わせ電話が「フリーダイヤル」でない点は評価を下げるポイントとしてあがっている。
満足中層①の特徴をまとめると、50代以上で会員特典の魅力や年会費無料、ポイントのたまりやすさなどを評価している人たちであることが分かる。
満足中層②の特徴
続いて満足度6-7の満足中層②の人たちはどうか。
同じ満足中層だが中層①とは少し特徴が違ってくる。直近の利用は6カ月以内で、月の利用金額は1万円以下と、少し頻度が落ちて金額も下がってくる。年収は600~800万円で大卒、男性30~40代が多く見られ、事務系の会社員で、年会費・入会金が安い・無料という点を重視していることがポイントになる。自由意見では満足点は「ない」が多く、ほとんどの人はそのカードを選んだ「理由」も特に「ない」という意見だった。その他、「割引」があることは評価する反面、「チャージがしにくい」ことや「チャージの際のポイント還元率」の低さ、「案内がない」、必要な情報が「分かりにくい」ことなどが不満点にあがってくる。
満足中層②は男性30~40代、ポイント還元率の悪さやチャージのしにくさといったちょっとした利便性の部分が満足度を左右しているという特徴が見えてくる。
満足低層の特徴
最後に満足度1~5と回答した満足低層の特徴を見ていく。
満足低層になると利用頻度は年に2~3回程度となり、普段の利用も月1万円以下、年収はだいたい200万円で1人暮らしが特徴の背景で、普段は利用しないが主に手持ちのお金が乏しい時に利用することが特徴となっている。こちらの自由回答も満足中層②と同様に「満足点やカードの選択理由はない」という意見が多い中、利用者として「ポイント還元率が少ない」、「年会費が高い」、「ポイント」の提携がなくなって「メリットがない」の他、「ポイント還元」の情報を見逃したとか取りこぼしたといった意見も見られた。年に2~3回程度の利用で普段の利用はなく、ポイント還元率の低さや年会費の高さへの不満が大きいのが特徴である。
この不満層は元々利用頻度が低いが、還元率の低さや利用できる店舗の少なさなどが滅多に使わないことに繋がり、ポイントは貯まらないし、たまにしか使わないからパスワードの入力に失敗するし、年会費に見合わないということになり、悪循環に陥るのではないか。
これを断ち切るには例えば、パートナーを増やして多頻度で利用機会を作る、レッドオーシャンに飛び込む、年会費を無料にする、ポイント還元率を上げるといったことは考えられるが、元々利用頻度の低い人たちで今やキャッシュレス化も進んでおり、どこまでやっていくか、そこに投資して費用対効果やメリットがあるのかという戦略は重要になる。
利用頻度が少ない・元々利用していない人は満足低層に多いが、利用者の中にも不満者は一定数いるので、まずは全体を通してロイヤル層に引き上げることが重要になってくる。
深掘りのポイント
後編では、満足高層の満足度の強化の施策と満足中層①をロイヤル層に引き上げるためのヒントを深掘りしていきたい。また、施策化の方向性について解説する。
顧客満足度を高めるには?KeyExplorerによるJCSIデータ分析事例のご紹介 クレジットカード編(後編)はこちら→
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