顧客満足度を高めるには?KeyExplorerによるJCSIデータ分析事例のご紹介 クレジットカード編(後編)
CS調査の活用について、お悩みの方も多いのではないだろうか。今回は、日本最大級の顧客満足度調査「JCSI」の調査データについて、日経リサーチ独自の“データ&テキスト“マイニングツール「KeyExplorer」を用いた分析をご紹介する。
前編ではクレジットカードの満足度によって、4つの層の特徴を分析した。
後編では前編の分析から出てきた下記の2つの深掘りのポイントについてみていく。
満足高層の”嬉しい” という感情に注目
まずは「嬉しい」という感情に注目し、自由回答で「嬉しい」と記述した人たちを目的変数におき、そのクレジットカード会社に対してどのような気持ちを持っているかを説明変数として、Q30A-Cという3つの説明変数で特徴を見ていく。
会社に対しての気持ちで「嬉しい」と記述した満足高層について、7段階評価で最も高い「非常にあてはまる」と回答した項目を見てみると、満足高層は会社への評価では「カード発行が速やかにできる」や「要求にすぐに対応してくれる」、「各種サービスの手続きがスムーズ」、「支払いがスムーズ」など「スムーズ」という言葉がキーワードになっている。また、顧客に対する従業員の対応品質への評価が大きな特徴となっている。
顧客と接点を持つ従業員に対応品質が求められるのは当然だが、品質を上げるだけではダメで、スムーズにできること=待たせない、たらい回しにしないといったことが評価のポイントとして上がってくる。
また、スムーズに対応するためには、人に依存し過ぎるのは良くない。対応への利便性だけでなく、ウェブサイトの利便性なども同時に必要で、ITなどの仕組みを整えた上でのホスピタリティが重要になってくる。
KeyExplorerは原文も簡単に参照できるので、「嬉しい」と記述した人の原文から「従業員」と「スムーズ」という2つのワードをピックアップしてみた。
従業員については「きちんと対応してもらえるという安心感がある」や「丁寧で私を落ちつかせてくれる」といった対応が非常にポイントになってくる。他にも「対応に感動した」、「対応が良い」、「すぐに対処してくれた」、「困った時の電話対応が非常に分かりやすかった」など対応に関するコメントに特徴が見受けられる。
一方、スムーズについては先述のように、従業員や利便性に関する内容が「スムーズ」と関連してくる。従業員では「不正利用があった際の迅速な対応」、「苦情、要望に対して迅速に対応してくれた」、「電話対応が早い」、「財布を紛失した時に、カードも入っていたが、直ぐに対応してくれた」などスムーズな対応が安心感に結びついていることが原文からうかがえる。
利便性に関しては「決済が早く、利用状況が把握しやすい」や「決算がサクッとできる」、「タッチ決済が可能になり、利用金額などをお知らせしてくれる」、「リアルタイムで明細の通知が来ることで、安心して利用できる」のように、利便性が安心感につがっているところがポイントと言える。
満足高層と満足中層①の違いは何か?
満足中層①は、会費が無料でポイントが貯まりやすく、使いやすいことを評価する点が特徴であり、満足高層と同じ特徴を持つ人が多い。では高層になるために何がネックになっているのか、両者の違いを見ていきたい。
そもそもそれぞれの層が何を重視していたのかとみると、高層も中層①も重視点の特徴はポイントやマイルの貯まりやすさ、利用できる店舗・サイトの多さ、会員特典の内容、明細の見やすさなどが共通項としてあがっている。一方、高層はこの他、サポート面や使い勝手、利便性が重視しているポイントであり、中層①との違いとして見られる。対する中層①は堅実なイメージのあるカード会社か、このカードを持つことがステータスになっているか、更に、保険・補償の充実を重視していることが特徴となっている。中層①は50代で、保守的な印象があり、守ってくれることや堅実さを求めているという特徴が分かってきた。
では、高層と中層①のカード会社に対する評価で、良い点・悪い点に何か違いがあるかを見ていきたい。
両者とも同様にポイントへの評価、貯まりやすいとか還元率は上位の特徴としてあがっている。一方、大きな違いは明細の見やすさやPC・スマートフォンサイトの使い良さで、高層ではどちらも「特に良かった」なのに対し、中層①ではどちらも「特に悪かった」となっており、分かりやすさや使いやすさ、管理のしやすさが両者の特徴の違いと言えそうだ。では、PC・スマートフォンサイトの使い良さに注目して、どのような点が使い良いと評価されるのか、満足高層の特徴を次に探ってみたい。
満足高層の『PC/スマートフォンサイトの使い良さ』の評価の具体的な内容は?
『PC/スマートフォンサイトの使い良さ』を高評価した回答者の自由意見を使って、どのような点が評価しているのか特徴を探る。
自由回答の意見をもとにしたワードクラウドでは「増える」や「利用」が大きな特徴としてあがっている。
具体的な記述をみてみると、「増える」が「使える店舗が増えた」や「実店舗やネットなど利用範囲が広がり、暗証番号の入力が不要になった店舗が増えた」、「提携先が増えてマイルがより貯まる」、「利用」が「カードを利用した時にメールで知らせてくれる」や「リアルタイムで利用明細の通知がくる」などが見られる。
この他、「ネット」に関して「ネットで必要な操作ができる」、「手続き」に関して「チケットを複数回連続で手続きしたら使用停止に。セキュリティーがしっかりしている」、「アプリ」に関して「アプリが使いやすい」、「アプリが見やすい」といった具合で、こうしたところが評価や使い良さにつながっているようだ。
満足高層と満足中層①の従業員の応対への評価の差は?
さらに、ロイヤル層のポイントとなる従業員の応対について、満足高層と満足中層①の違いを自由回答で深掘りした。
満足高層の自由回答の原文ではここでも「安心感」や「丁寧」、「落ち着かせてくれる」、「感動した」といった評価が並ぶ。
これに対し、満足中層①の原文を見ると、「対応」について、「セキュリティーがしっかりしており、迅速に対応してくれる」、「被害にあった時、適切な対応で良かった」、「気持ちよく対応してくれた」など評価する意見が出ている。
しかし、「コールセンター」や「フリーダイヤル」というワードに関しては、ネガティブな意見も見える。「コールセンター」では「コールセンターの説明が不十分だった。担当者の説明が違っていた」、「コールセンターに繋がりにくい」、「コールセンターに繋がるまでの時間」など、「フリーダイヤル」では「電話をたらい回しにされている間も電話料金かかるので、フリーダイヤルがなくなったのが不満」といった意見があがっており、こういう不満意見が出るのも中層①の特徴ではないか。
分析から見えた施策の方向性
4層の特徴をみてきたが、特に満足低層で見られたように、問い合わせの繋がりやすさ、問い合わせ/ヘルプデスクの応対、希望の使い方ができないことに対する不満を感じている人は、顧客の利益を第一に考えていないとしてネガティブな評価に繋がっている。利用者のネガティブな対応経験が不満に繋がるので、まずその応対力が重要になってくるのではないか。
今回の調査結果の分析から見えてきた方向性もまとめた。
コールセンターの施策の中で、問い合わせ前に問題解決できるようなITや仕組みを整え、問い合わせの数を減らすことも重要だ。そもそも電話が多くて繋がらないことに問題は起因しているのだから、顧客が自分で解決できるような仕組み、分かりやすいインターフェイスを作るといったことも必要で、それが次に繋がってくる。
また、PC・スマートフォンサイトの施策に関しては、ポイント還元率が今回の調査では、満足度のポイントとしてかなり大きな特徴となっていた。ポイント還元情報の見逃しがないような、利用者目線に立ったサイトやアプリの改修も必要だ。明細についても、関連サイトを見やすく改善するべきだろう。
顧客満足度を高めるには?顧客理解を深める分析ツールKeyExplorerによるJCSIデータ分析事例のご紹介 クレジット編(前編)はこちら→
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