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宝の山のはずのCS調査、分析を十分にできていますか?

ー分析の“あるある”お困り事例の対処法を解説

当社調べによると、BtoBビジネスを展開している従業員300人以上の企業の約6割弱は「1~3年の頻度でCS調査を実施している」と回答している。


しかし、すでに自社で実施している企業から、当社にCS調査の見直しをご相談いただくケースでは、次のようなお悩みに直面していることが少なくない。

  • 内製でがんばって集計をしているものの、全体値や主要な商品別など「単純な集計」で手一杯になってしまう
  • 高度な分析スキルや専用ツールがないため、データを未消化のまま社内展開せざるを得ず、結果的に活用されない
  • 集計した数値が「良いのか、悪いのか」の基準が分からず、解釈に困る

 

宝が見つかるCS調査を目指したいと思っていても、いざ始まると、アンケートの実施・回収の運用負荷が大きく、集計・分析で格闘がつづき、徐々に力つきてしまう――。こうした状況に陥っている企業は多いのではないだろうか?

 

本稿では、特に複雑な商流・物流構造を持つBtoB企業を念頭に置き、CS調査を「マンネリ化した定例施策」で終わらせず、事業改善に活用できる  集計・分析のポイントを解説する。

 


 1. 分析の“あるある”と上手な対処法

複雑なBtoBビジネス、「1社1名」の回答でいいのか?

BtoCの製品・サービス  に比べて、BtoBの商材は一人の担当者でなく、複数の部署や役職者が多層的に関与する。しかし、CS調査では、日ごろの窓口担当者だけにCSアンケートを送るケースが多い。実際、当社の調査*でも、BtoB企業のCS調査の50%強が「1社1名」の回答依頼になっている。

 

BtoB向けCS調査の依頼先

 

このような「現場の窓口」だけを対象にしたCS調査では、結果的に“御用聞き営業”を助長するような使い方につながりかねません。

その背景には、「依頼先のリストが集まらない」、「現場との接点はあるが、他の関与者が分からない」といったBtoB特有の事情があるのだろう。また1社複数名から回答を得た場合の集計ノウハウが不足していることも要因であろう。

しかし、せっかく労力をかけてCS調査を実施するのであれば、BtoBビジネスの特性を考慮して、窓口担当者だけでなく、実際のユーザーや保守・運用担当者、決裁権限者まで幅広く対象を広げるべきだ。


回答企業によっては、回答件数が異なる場合もあるが、まずは幅広くデータを収集することが大切だ。その上で、得られたデータを「役職別」や「業務プロセス別」に集計することで、BtoBビジネス特有の状況が見えてくる。 例えば、「営業を受けている窓口担当者の評価は高いが、現場の保守担当者からは不満が出ている」、「現場の評価は上々だが、決裁権限者が求める費用対効果には期待を下回っている」といった多層的なギャップを可視化することができる。

“ざっくり対応”-全社スローガン、個別対処で終わらせてませんか?

よくある失敗例として、全体の総合満足度や部門別の%値をグラフ化して共有するだけで終わったり、各企業の回答内容やフリーコメントをそのまま現場に配り、個別対処の号令をかけるだけというケースが挙げられる。当社の調査*によると、ほぼ半数の企業がそのような「ざっくり共有」の状況にあるようだ。

BtoB向けCS調査の集計・分析

 

 

多くのCS調査担当者にとって、調査の集計・分析は主務ではなく、通常業務の傍らで行う「エクストラ な業務」であるため、集計ツールやスキルの制約から、データの深掘りが難しいという背景が考えられる。

 

CS調査の分析を施策に繋げる王道としては、総合満足度や推奨意向などの総合指標から、要因をドリルダウンしていく方法だ 。例えば、「総合満足度は全体としては維持しているが、商材別にみると、商材Xは評価が高く、Y商材は評価が急落している」、役職別で紐解くと、「Y商材は決裁権限者の評価が低く、足を引っ張っている」といった分析だ。


総合指標を商材別、部門別、業務プロセス別、役職別などで見て、差が出ている箇所を探すことに意味がある。つまり、顧客をセグメント化して、どこがうまくいっているのか、何がうまくいっていないか?といった要因を特定できれば、「どこに対して、何のアクションを起こすべきか」の対策が各段に立てやすくなる。


全社のスローガン的な対策や、個々の顧客への個別対応といった2極化した“ざっくり”対応からの脱却が図れるようになる。

 

グラフ_担当部門別役職別

この数値が良いのか判断できていますか?

集計結果を見て、この数値が一般的に見て、良いのだろうか?、悪いのだろうか?、どのように解釈したらいいのだろうか?という悩みも多く聞く。


この点は、当社のような調査会社に外部委託する大きな理由の一つだろう。当社では長年さまざまな業種・規模のCS調査を手掛けている。また独自の調査・研究も数多く実施しており、数字の解釈についての知見も深い。したがって、蓄積されたデータから算出した「業界ノルム値(Norm:業界の平均的な標準値)を踏まえた解釈を提供できる。

 

例えば、「貴社と同業種・同等規模のBtoB企業における一般的な総合満足度の水準は〇%であるため、貴社の現在の立ち位置はここにある」という客観的な比較対象を得ることで、一歩踏み込んだ解釈ができるようになる。自社の強みと課題に対する社内、特に経営層の納得感が劇的に深まるだろう。


CS調査に限らず、分析の基本は”比較”だ。自社の立ち位置を把握した上で要因を議論することが重要で、それによって、何が問題なのか?という解釈が深まっていく。

コメントを「不満撲滅活動」だけで終わらせてませんか? 

自由回答のフリーコメントの一覧を現場に戻して、“不満撲滅活動”をするだけでは、モグラ叩き的な一時対処に終始してしまう。


ターゲット顧客が限られるBtoBビジネスの営業体制においては、重要顧客に最適化するABM(Account Based Marketing)の視点が必要だが、顧客1社1社の評価やコメントを単発の不満撲滅活動だけに用いるのはもったいないだろう。個別のコメントから共通に紡ぎ出される要素を取り出して、使い尽くしたい。


一般的には、テキストマイニングによる “頻出ワード”のランキングや、「ワードクラウド」と呼ばれる見える化があるが、ありきたりの結果にとどまりがちだ。


そこで、当社では満足度などの選択肢データとフリーコメントを掛け合わせて分析する「ホット・スポット分析」というやり方をお勧めしている。ポイントは、選択肢とコメントの両方を活用して、どこに問題があるのか?=ホットスポットを明らかにする点だ。なぜ満足層・不満層に分かれるのかを構造的に特定し、コメントから特徴的なものを見つけ出していく手法で、具体的な施策化につなげることができる。

▼ホットスポット発見からの掘り下げイメージ
ホットスポット発見からの掘り下げイメージ

2. 社内成果データとの関連分析で、事業成長につなげよう

BtoB企業のCS調査は、多くの場合、「どこの企業の、誰が回答したか」を特定してデータを取得できる。このような場合は、貴社内で保有しているCRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援システム)などのデータとマージした高度な分析も可能になる。


例えば、「売上規模が大きい最重要顧客層に限って、実は満足度が低迷していて、的外れな対応やリプレイスの兆候がある」といった危機を早期に察知したり、「商品Aを単体利用している顧客より、商品Bとのクロスセルをしている顧客の方が満足度が高い」といった顧客ロイヤリティを高める構造を把握したりすることができる。売上、利益、購入商品、保守契約の有無、営業の提案件数など、CS調査の結果を左右しそうな貴社保有データとCS調査結果をマージすることで、調査

の価値は経営戦略のレベルへと引きあがる。


さらに、CS調査結果とのマージの分析から、満足度が高くなる構造をモデル化できれば、調査に未回答の企業も含めた貴社顧客全体の対策が立てられるようになる。「どの顧客をより手厚く対応すべきか」「新規開拓のターゲットリストの中で最優先すべき企業はどこか」も高い解像度で導き出すデータドリブンなマーケティング・営業体制の確立に繋げられるだろう。

3.「宝の山」を分析して、データドリブンな変革を

「CS調査の結果が高止まりしていて毎年マンネリ化している」、「ありきたりな結果しか出ない」という声もよく聞く。日本の企業は一般に優秀で、きちんと顧客対応しているので、基本的にはレベルが高く、また総合満足度などの総合指標はほんの少しずつしか変化しないものだ。

しかし、分析のやり方を工夫することで、顧客の満足・不満の構造やメカニズムが見え、課題やニーズも見えてくる。顧客の声を解像度高く見える化して理解することで、宝の発見につながり、具体的な施策につながっていく。ぜひ、宝の山のCS調査を使い尽くしてほしい。

*当社調査の概要:BtoB向け事業を行っている売上規模300億円以上で、過去3年以内に法人顧客向けにCS調査を実施した企業の担当者を対象とした調査(N=480、2026年6月実施)

 

日経リサーチは、長年、BtoB企業のCS活動、および、アンケート以外のデータの分析を支援しております。CS調査の分析を深め、結果の活用、施策化を強化したい場合など、ぜひお問い合わせください。

 

この記事を書いた人

コラム執筆者_市嶋
エグゼクティブ・コンサルタント
市嶋 信子

国内外のCS・CX、マーケティング・営業、ブランディング、経営戦略・ビジョン策定などの多くのプロジェクトに従事。特に、B2B企業向けのCS・CX、営業改革を専門とする。アンケート結果に加え、企業が保有する実態データも合わせた分析も行い、データドリブンでの実践的な企業課題の解決を支援している。

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