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日本のキャッシュレス化、ビジネスパーソンで広がる決済手段 -クレカ96%、PayPayは62%が利用

 3月半ばに東京で開かれた日韓首脳会談は、図らずも日本のキャッシュレス化の現状を海外に広めることになったようだ。日本でも話題になった老舗洋食店での「オムライス会食」。韓国内では異例の会食風景もさることながら、これほどの有名店でも決済が現金のみで、クレジットカードやQR決済が使えないことに関心が集まった。

 経済産業省の算出によると、日本のキャッシュレス決済比率は30%台で、ここ数年で堅調に上昇しているとはいえ、すでに9割を超える韓国はもちろん、6割前後の米英などと比べても大幅に低い水準にある。

 キャッシュレス決済のさらなる普及促進にあたっての突破口はどこにあるのか。3月6~9日、日経電子版などの利用に必要な「日経ID」を所有するビジネスパーソン(20歳以上)を対象にオンラインで調査を実施し、1219人から回答を得た。

1.PayPay62%が利用、すそ野が広がるQRコード決済

キャッシュレス1

 

 ビジネスパーソンのキャッシュレス決算手段として最も多いのは、クレジットカードで全体の96%、2番目が交通系カードで79%が利用していた。3番目はQRコード決済のPayPayで62%だった。d払い、楽天ペイ、au PAYなども2割前後の人が利用していると答えており、QRコード決済のすそ野が広がっていることがうかがえる。

 

2.利用シーンに応じた決済手段の使い分け

 では、ビジネスパーソンはどのようなシーンで、キャッシュレス決済を利用しているのだろうか。

 

 

キャッシュレス2

 

 

キャッシュレス3

 

 

 キャッシュレス決済の利用シーンをそれぞれ回答してもらったところ、例えばクレジットカードではオンラインショッピング(86%)、携帯料金(64%)、公共料金(55%)の支払いが、他のキャッシュレス決済と比べて圧倒的に多いのが特徴的だ。一方で、PayPayの利用シーンとしては、コンビニエンスストア(66%)、スーパー(45%)、ドラッグストア(45%)、そして飲食店などが上位となった。

 

 クレジットカードとQRコード決済の使い分ける理由については、「定期的に引き落とされるものや高額決済はクレカ、日常はPayPayやSuicaを利用」(40代男性)、「高額の決済はクレジットカード、少額の決済でPayPayのキャンペーン対象となる店舗ではPayPayを使用」(40代女性)など、決済額やポイント還元、キャンペーンの有無が多くあがった。

 

 また、「クレジットカードは財布に入れており、いちいち取り出すのに不便」(40代女性)といった理由でQR決済を優先したり、「月ごとの請求をまとめることで簡易的に用途別の出費を把握するために、Paypayでは食料品のみ購入するなどの使い分けをする」(30代男性)といった活用をしている声も寄せられた。

 

 キャッシュレス決済を利用していないと回答したのは0.3%で、今や多くのビジネスパーソンが複数のキャッシュレス決済をシーンによって使い分けていることがわかる。

3.「現金志向」なお強く、キャッシュレス化の突破口は

 キャッシュレス決済の制度面の整備も進む。その一つとして、キャッシュレス化を後押しすると期待された「給与デジタル払い」の制度が4月、解禁になった。しかしながら、自ら受け取る給与で同制度を「利用したい」と答えたビジネスパーソンは14%だった。まだ様子見という人も多いようだが、給与を現金以外で受け取ることに大多数の人は慎重姿勢だ。

 

▼参照

4月解禁のデジタル給与「利用したい」14%どまり -アーリーアダプター層が期待することは

 

 今回の調査で寄せられた1200件に及ぶ自由回答を見ても、根強い現金志向やデジタル通貨への拒否感もうかがえる。給与デジタル払いについては、「実質の受け取り感がなくなる」(50代男性)、「稼いだという実感がわかない」(50代男性)というコメントが特に高年齢層で目についた。また「計画性なく使ってしまいそう」(50代女性)、「浪費癖がつきそう」(60代以上男性)など、キャッシュレス決済に依存することへの警戒の声も多い。


 現金志向は商売などでお金を受け取る側も同様だ。冒頭で挙げた老舗の飲食店のように現金決済を貫く店舗は少なくない。それが日本でキャッシュレス化が進まない大きな要因の一つともいわれる。「無駄な手数料を支払いたくない」ときっぱり言う経営者もいる。

 「現金のみ」という制約があっても繁盛しているのは、消費者にとって便利さだけでない魅力があるからだろう。キャッシュレス決済が進まないといわれる病院も同様で、誰しも優秀な医師や最先端の設備が揃った病院で診てもらいたいと思うもので、キャッシュレス決済の有無で選ぶ人は少ない。

 コスト対比でメリットが少なければ、キャッシュレス決済のために設備を導入したり、事業者に手数料を払ったりしようとは誰も思わない。逆に考えれば、こうした老舗や病院ですらキャッシュレス決済を導入しなければ経営が立ち行かないとなった時、キャッシュレス化の波は日本でも一気に押し寄せるのかもしれない。

 

 給与デジタル払いのほか、3月には銀行口座、クレジットカード、ポイント払い、保険・証券を1つのアプリでまとめて運用・管理できるワンストップ金融サービスも始まった。キャッシュレス化の進展に向けた地ならしは着実に進みつつあるように見える。


 お金のあり方はその国や地域の文化、慣習に深く根付いたものであり、一筋縄ではいかない面がある。お金と社会、お金と人々の生活との関係は今後どう変わっていくのか。それを探っていくには、さまざまな立場の人の声を幅広く拾い、多角的にアプローチすることが欠かせないだろう。

 

調査概要

  「キャッシュレス決済とお金に関するアンケート」

実施日: 2023年3月6日~3月9日
対象者: 20歳以上のお勤めの方(日経ID会員)
回答者数: 1,219人
調査手法: インターネット調査

 

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