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独自ツールで医師を分析(上)「糖尿病第一選択薬」で見る特徴は?

日経リサーチは糖尿病の治療薬である経口の血糖降下薬の処方実態について自主調査を行った。2020年の国内の糖尿病市場は薬価ベースで6052億円と、市場規模は抗がん剤に次いで大きい。一般内科または糖尿病代謝内分泌科を標榜する医師1010人から回答を得た(うち日本糖尿病学会糖尿病専門医は151名)。調査期間は3月8日~9日。弊社独自の分析ツールであるKeyExplorerにより解析したところ、使用している治療薬ごとの医師の特徴が明らかになった。

コロナ状況下における情報源について

調査で糖尿病治療医の有効な情報源を聞いたところ、MR(対面)が多かった。1~5位の上位情報源を割合でみると、エムスリー(m3.com)や日経メディカルなど医療系のWEBサイトが1、2位となった。MRの数は2013年をピークに年々減少し、新型コロナウイルスの感染拡大もそれに拍車をかけた。しかし、今回の結果をみると、医師にとってMR活動は依然、有効な情報入手手段の一つであり、オンラインでの活動も有効であることが確認できた。

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第一選択薬について

糖尿病治療における経口血糖降下薬の第一選択薬を聞いたところ、

過半数の医師がDPP-4阻害薬を選んだ。DPP-4阻害薬以前に多く処方されていたビグアナイド薬は2番手と10年前と比べると市場は様変わりしている様子が見受けられる。
DPP-4阻害薬に次いで多くの薬剤が上市されたSGLT-2阻害薬を第一選択薬としている医師も、全体の1割程度を占めた。

糖尿病治療における経口血糖降下薬の第一選択薬

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後述するように、DPP-4阻害薬とビグアナイド薬の扱いについては、糖尿病の専門医か否かで異なる傾向がみられる。

データを読み解くKeyExplorerについて

弊社分析ツールKeyExplorerは選択肢を提示して聴取したデータも、自由記述で聴取したデータも一気通貫で解析できる特徴がある。今回の独自調査結果をKeyExplorerに読み込ませると下記のように、各説明変数に対しての特徴量が算出され特徴量の大きい順にランキング形式で出力される。特徴量は各調査項目において、分析するセグメントと全体値との差がどの程度大きいか、また、セグメント内で同じ回答だったサンプル数がどの程度いるかを示す指標となっている。全体値との差が大きく、セグメント内の該当数が多いものほど特徴量が大きく算出される。

■KE分析出力結果例

※wd_から始まる項目は、自由記述の内容に多く含まれている単語が抽出・算出された数値。

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データを読み込ませその過程はブラックボックスで結果が抽出される、という分析ツールはあるが、KeyExplorerは前述のようにその過程が説明できる。自身で複雑なデータの読み込む必要なく、ある切り口に対する特徴を容易に捉えられる。

今回の独自調査データから、各薬剤を第一選択薬としている医師という切り口で、KeyExplorer で算出されたデータを基にペルソナを作成した。従来のイメージに近い特徴が出ていることが確認できる。ビグアナイド薬第一選択医は専門医が中心であり、当該領域の最新情報への興味関心度が高く、専門医が中心であるため講演会やセミナーへの登壇経験がある医師も多い。

■KeyExplorer 分析による集計結果(ビグアナイド薬を第一選択する医師)

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■KeyExplorer 分析結果を整理した結果(ビグアナイド薬第一選択医師)

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一方で、DPP-4阻害薬を第一選択とした医師は、その使用しやすさから非専門医(特に一般内科のGP)が中心だった。MRや医療系WEBサイトから最新情報を積極的に取りに行くような態度は確認できず、これまでの調査でみられる傾向がまとまっている印象を受ける。

■KeyExplorer 分析結果を整理した結果(DPP-4阻害薬第一選択医師)

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SGLT2阻害薬を第一選択とした医師は属性自体の解釈は難しいが、DPP-4阻害薬の第一選択医に比べれば専門性があり、新たな治療に積極的な医師であると考えられる。SGLT-2阻害薬は、その薬剤特性から「腎臓内科」や「循環器内科」を含めていくと、また違った傾向がみられる可能性もあり、調査の際は特徴を網羅できるような属性を設計していくと、より興味深い結果が算出されると推察される。

■KeyExplorer 分析結果を整理した結果(SGLT2阻害薬第一選択医師)

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おわりに

今回、糖尿病に関する独自調査結果を基に弊社分析ツールKeyExplorerによる分析例を紹介した。KeyExplorerによる効果的な成果を得るためには設問設計がポイントとなる。そのため、設計の段階から日経リサーチが相談・支援にあたっている。実際に結果が出たあとの結果の読み解き方も重要となる。このフェーズでは調査会社視点とクライアントが持つ課題や現場の声とを付け合わせ、解を見つけることが重要となる。ワークショップ形式で依頼主と共同でデータを解釈するサービスも実施している。
「第一選択薬は何か」という切り口でみると、医師の特徴として一般的なイメージと齟齬がないレベル感で再現されていることが確認できた。
他にも今回の調査データを基に切り口を設定し、

  • 情報源として「MR」を1位に挙げている医師はどんな特徴があるのか
  • 「非専門医」で「患者数が専門医並みに多い医師」はどんな特徴があるのか
  • 「治療効果よりも副作用を優先」する医師はどんな特徴があるのか

など、知りたい医師像を素早く理解する方法として期待できる。

次回は、切り口を変えた分析例を紹介していく。

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