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進む医療情報DX、アフターコロナで微妙な変化?

医療情報提供のDX化調査、医師約700人が回答〈前編〉

業務の効率化の一環として企業が競って取り組んでいるのがDX(デジタル・トランスフォーメーション)。2023年3月に日経リサーチが実施した調査では、医療・製薬の現場でもコロナ禍で、医療情報提供における「MRからデジタルへ」の流れが一気に進んだことがわかった。

 

その後、同5月にコロナが感染法上の分類で季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行され、MRの医療機関への訪問が容易になったことは、医療情報DXに影響を及ぼしているか。2023年11月に調査を実施し、772人の医師から回答を得た。

注※)11月調査では回答した医師が所属する診療科に偏りがあっため、3月調査の回答を診療科で絞込み、再集計して比較可能にした。

 

「主にデジタル」65%、前回から6ポイント下落

まずは、これまでの調査の結果をおさらいしよう。昨年3月調査で「製薬会社から情報を得る手段」を聞いたところ、「主にMRから」との回答は29%にとどまり、「主にデジタルツールから」との回答が71%に達した。2021年8月に実施した調査では、まだ「MRから」との回答が40%を占め「デジタルから」(28%)を上回っていた。医療機関への訪問ができなくなったコロナ禍の1年半で、医療と製薬の間での情報提供のあり方が大きく変わったことが明らかになった。

 

 

「5類移行」から半年を経過した昨年11月の調査では、「デジタルから」との回答が65%と、前回調査より6ポイント下落した。「MRから」は35%で、デジタルツールを介して情報を得る医師が主流であることに変わりはない。ただMRが医療機関に再び訪問しやすい環境になったことで、医療現場に微妙な変化をもたらしていると言えそうだ。

 

医師の年代別にみると、子供の頃からデジタルに慣れ親しむ20代、30代の若手医師の「MRから」との回答が6ポイント強上昇しているのが気になった。

医師の評価得られない製薬業界のDX

調査では、医師に「医療情報の提供におけるDXの取り組みが最も評価できる企業」も聞いた。29社の社名を挙げ、1社だけ選んでもらった。しかし、「分からない/この中にはない」との回答が最も多く42%。「進んでいる会社はない」との回答も12%に達した。

 

3月調査時のそれぞれ44%、14%からは下がったのだが、半数以上の医師は企業の取り組みを理解も評価もできない状態に変わりはない。最初の設問で、医療情報を「デジタルツールから得る」と回答した医師ほど、「分からない/この中にはない」「進んでいる会社はない」の回答率が高い。

医療情報DXの取り組みが

この調査データの比較は「誤差」の範囲なのかもしれない。ただこの「誤差」をアフターコロナにおける医療現場のDXに対するとらえ方が微妙に変化している「兆し」と見るべきではないか、と筆者は考える。

 

踏み込んで仮説を立てれば、製薬各社の医療情報DXの取り組みへの「失望」が静かに広がっている可能性がある。

 

2023年春にはコロナの「5類移行」のほかに大きな変化があった。働き方改革により、医師の長時間労働を是正する動きが本格化。深刻な医療従事者不足の中で、医療現場が混乱を極めていることは想像に難くない。DXへの「期待値」はコロナ禍以上に高まる中で、製薬業界の取り組みが進展しないことに、苛立ちを覚える医師が増えていてもおかしくはない。

 

MR白書」によれば、製薬業界のMR数は5年連続で減少し、22年度末段階では約20年ぶりに5万人の水準まで下がっている。製薬業界の情報提供におけるDX化の流れには変わりはないが、それが「医療の質向上のため」ではなく、例えば「収益改善のため」と感じる医師が増えていたとすれば、医療現場の「失望」はさらに広がる危険がある。あくまで筆者の「仮説」でしかないが、調査を通じて、さらに医療の「本音」に耳を傾ける必要があると感じている。

 

【後編*】のコラムでは、医師が医療情報DXで評価できる企業のランキングやその理由と、医師のDXに対する記述式コメントについて紹介する。

 

*後編の公開は3月上旬を予定しています。

 

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