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「使える医療情報DX」求める医師の声~働き方改革背景に

医療情報提供のDX化調査、医師約700人が回答〈後編〉

医師は「医療情報に関するDX」について、どの企業を評価しているのだろうか。日経リサーチが2023年11月に日経BP運営の「日経メディカルOnline」に登録者に対して実施した調査の結果からご紹介する。

「コンプライアンス」など具体的改善求める声

調査では29社の製薬企業名を挙げ、その中から評価できる1社を選んでもらった。前編(進む医療情報DX、アフターコロナで微妙な変化?)でも紹介したように、771名の回答者のうち54%が「分からない/この中にはない」「進んでいる会社はない」と個別企業を選ばなかった。残る46%の医師が選んだ企業ランキングを以下に紹介する。

 

医療情報DXの取り組みが評価できる企業

  順位 社名
  1(1)  ファイザー
  2(2)  武田薬品工業
  3(6)  アストラゼネカ
  4(5)  中外製薬
  5(3)  第一三共
  6(7)  アステラス製薬

※カッコ内は昨年順位

 

昨年3月実施の前回調査と比較して上位企業の顔触れに変わりはない。回答率は1位のファイザーでも5.8%にとどまり、2位の武田薬品工業で4.9%だった。回答率が3%を超えたのは表で紹介した6社のみ。いずれも規模の大きい企業で、関係のある診療科が多いほど上位に入る傾向は否めない。

 

 

企業の医療情報DXの取り組みの評価ポイントについても聞いた。「最新の情報が提供されいる」(44.9%)、「必要な情報が網羅されている」(38.8%)といった「情報の質・量」を挙げる医師が大半だった。それに「医師のニーズを聞き改善できる体制」(31.2%)「デジタル上でのコンプライアンスが確立されている」(27.5%)が続く。前回調査と比較すると「コンプライアンスの確立」との回答が増えている。多くの医師は企業に「使えるDX」にするための具体的な改善を求め始めていると言えそうだ。

 

医療の質向上へ「医産」の相互理解を

「医療情報の提供におけるDXを推進していくうえで最も重要な点」についても、記述式で自由に回答してもらった。以下に、いくつかピックアップしてみた。

 

医療情報のDXを進める上で重要なポイントは

「医薬品情報を迅速に提供しつつ、こちらの必要な情報をリアルタイムで提供できること」 40代、消化器内科)
「現場にニーズを吸い上げた上でDX化を進める」 (30代以下、消化器内科)
「医療従事者とメーカーの相互理解」 (30代以下、放射線科)
「個人情報保護の射程がどこまで及ぶか課題。クラウド型で情報管理できるのが理想だが保険診療でどこまでできるのか。中小医療機関全てに導入するのは絵空事」 (40代、放射線科)
「サポート体制をしっかりすること」 (50代、整形外科)
「企業が医療機関から集めたビッグデータをもとに診断や治療に役立つシステムを作り上げる」 (60代以上、消化器内科)
「自社へのメリットにこだわらない」 (50代、脳神経外科)
「人手不足もあるのでDXは不可欠」 (50代、消化器外科)
「最後は人」 (50代、消化器内科)
「MRの人数を減らす」 (30代以下、腎臓内科)
「DXが患者側にどのようなメリットがあるのかエビデンスをもとに示すこと」 (30代以下、呼吸器内科)

 

DXに対して懐疑的な声がシニア医師を中心に根強くあるが、多くは「患者情報の保護」や「導入コスト」など踏み込んだ意見だ。医療現場の声を聞き、共に改善していくことを求める声も目立った。働き方改革の影響を肌身に感じる多くの医師がDXを「自分事」としてとらえ始めているようだ。「MRの人数を減らす」とのコメントは、MRに頼る現状を無理やりでも変えないと、医療情報DXは進化しないという「皮肉」を込めたメッセージだと、筆者には読めた。

コラム前編でも触れたが、医療現場の人手不足は今後ますます深刻になる。その中で医療の質を維持し発展させるには、医療従事者の業務改善と医師の判断をサポートするDXの高度化は不可欠だ。そして大切なのは、DXは「目的」ではなく「手段」であること。その「目的」とは業務の効率化ではなく、「医療の質向上」であり「患者のQOL向上」でなくなはならない。そのためには患者と日々向き合う医療と、その医師の役割をサポートする業界の協調が不可欠だ。


そして大規模病院だけでなく、中小規模の医療機関にも医療情報DX効果が届く仕組みも考えなければいけない。医療制度そのものの改革も視野に、国を挙げて早急に調査・検証するべきだろう。そのことを医師の生の声を読み解きながら、強く感じた。

 

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