新型コロナ禍の業務変化|コメディカル6職種の率直な声
2024.4.22
新型コロナウイルス感染症の世界的な流行は、社会の様々な分野に前例のない変化をもたらした。医療機関はその最前線にあり、この危機が医療従事者の業務にどのような影響を与えたのかを探るべく、日経リサーチはコメディカル1,147名を対象に、新型コロナウイルス感染症の流行による業務変化についての意識調査を実施した。本コラムではその結果を紹介する。
約8割が業務の変化を実感
調査によれば、約8割のコメディカルが「業務内容が多少なりとも変わった(大きく変わった、変わった、少し変わったの合計)」と回答している。特に看護師と理学療法士では、「大きく変わった」と感じた割合が他職種よりも高く、それぞれ18.0%、16.3%に上った。この2職種の業務は、特に患者さんとの密な接触を伴うためと考えられる。
一方、診療放射線技師や栄養士は、比較的患者から距離を保てる業務からか、「大きな変化があった」と答えた割合は1割未満と低めだった。
このように、コメディカルへの影響は一律ではなく、職種によって新型コロナ禍の影響に違いがあったことがわかる。
コロナ前後の業務変化(職種別)
設問:「普段の業務において、コロナ前と現在とを比べて、変化はありますか。(ひとつだけ)」
※上記以外の職種からも多くの回答があるため、全体の数と各職種の合計は一致しない
変化があったという方に、具体的にどのような変化があったかを記述してもらったが、職種にかかわらず共通する変化と特定のコメディカルに該当する変化に分類できた。
コメディカルに共通する「感染対策の強化」
コメディカルに共通する変化として「感染対策の強化」がある。
この影響によって生じた変化は大きく4つに分類できる。
- 個人防護具の着用や清掃・消毒作業など、新たな感染予防ルールの徹底
- 集団での患者対応や面会の制限、限定した動線など診察やケア時の対応
- リモート会議の増加に代表されるDXの推進によるオフラインの排除や業務効率化
- 働き方の変化
具体的な記述を一部紹介する。
- 消毒・検温・マスク着用やワクチン接種などの意識向上(看護師)
- オンライン面談等に変更。現場職場巡回が無くなった(看護師)
- 決められた勤務時間を前後で1時間ずらす時差勤務が開始になった(看護師)
- 清掃の方法が明確化された(臨床検査技師)
- 業務改革が進んだ。IT導入やテレワーク等(臨床検査技師)
- コロナの検査が増えた 患者様のソーシャルディスタンスを確保する必要が生じた 医療者の体調管理・休暇の取り方が厳格になった 常時マスクなどなど(臨床検査技師)
- 感染対策がより厳重になった。 忘年会、新年会のような、職場の集まりがなくなった。患者との勉強会、食事会、バス旅行など、企画行事がなくなった(臨床工学技士)
- 無駄な会議がなくなり、あってもwebになって効率的になった(臨床工学技士)
- 担当フロアを一部制限するようになった。 カンファレンスが減った。 患者家族と接する機会が減った(理学療法士)
- 勤務時の感染対策がより厳密となった。職員の病休や体調不良時の休みについては手厚くなった(理学療法士)
- 複数の患者を同じテーブルにつかせて食事をしてもらう機会がなくなり、個々にベッドサイドで食べてもらうだけになった(栄養士)
- 感染対策の程度・検温等の実施徹底・マスクやエプロン,手袋着用が必須となったこと。発熱者の導線ルートが通常と分かれた事。 待合の椅子の向きが一方向になったこと。緩和後も完全予約制を徹底していること。コロナ渦中は入院者への面会が禁止であったが,緩和後も面会に一定の制限が残っていること(診療放射線技師)
感染対策の強化は、記述にもあるように、メリット・デメリットの両面ある。メリットは感染対策の意識の向上や業務の効率化である。一方で、院内スタッフや患者・家族とのコミュニケーションの希薄化はデメリットといえる。
より深刻なケースとして、次のようなコメントもあった。
- 看護系大学を退職した。看護師の教育においては人と関わることが重要だが、オンライン授業や実習の調整など、人と関わる機会が大きく制限された状況下での基礎教育は難しかった。授業や演習など教員の負担は倍増していた(看護師)
- コロナにより、働き方に変化があったり、職場人間関係の希薄化が明らかにあり、メンタルヘルス不調者が増えた。その対応に追われることが増えた(看護師)
- 若い人がコロナで厳しい実習を受けておらず、人材が育ちにくい。熱意を持って仕事する若い人が減った(理学療法士)
DXをはじめとする業務効率化は、今後ますます推進されていくと思われる。その一方で人との関わりをいかに保つかは、コロナが落ち着いた現在、再度検討されることだろう。
特定のコメディカルにおける変化
特定のコメディカルで記述が多かった変化を2つ紹介する。なお、あくまでも今回の調査で出てきた意見であり、取り上げていないコメディカルにおいても、同様の変化やほかにも特徴的な変化があった可能性はある点はご注意いただきたい。
1つ目は臨床検査技師である。検体採取やPCRといった検査がコロナ禍で加わってきたという記述が多かった。具体的には次のような具合である。
- 検査項目にPCR検査等感染に関する項目が大きく増えた。又検体採取で患者に直接関わることが増えた
- コロナ前は、インフルエンザのキット検査は、検体検査室でしていたが、コロナ禍に安全キャビネットを購入したので、コロナの検査同様、インフルエンザキットも安全キャビネット内で行うことになった。安全キャビネットの設置している検査室が検体検査室から少し離れているので、安全ではあるが少し面倒になってしまった
- コロナ以前は、検体採取を看護師が行っていたが、コロナ以降はインフルエンザも含め、検体採取は臨床検査技師が行うようになっている。その検査数も一時期よりは減って来てはいるが、最近はまた増加傾向にある
2つ目は理学療法士である。フロア制限などゾーニングに関する変化の記述が多かった。
- 外来リハと入院リハとの区分けを厳密に行うようになった。 感染対策以前より厳しく行うようになり、意識して患者の様子を見るようになった
- ゴーグルをつけての業務などの感染対策。 担当病棟制
- 提供体制が分散。大きなリハ室から小さく複数の提供場所。リハ室以外での提供
他にも、看護師、理学療法士、栄養士からは前述した通りオンライン化や利用制限などによる、患者やその家族との関わりの希薄化があがった。
冒頭共通した特徴でもふれたように、これらの3職種は、患者と接する機会が多いからか、院内スタッフとの関わりの希薄化以上に、患者やその家族との付き合いの希薄化に関する記述が多かった。
おわりに
今回取り上げたのは、調査に協力いただいた回答の一部に過ぎないが、DXの推進で業務が効率的に行えるようになったという前向きな意見も少し見受けることができた。
しかし、現在においても患者数がコロナ前に戻っていないという意見や、人手不足、患者との接点の減少という厳しい声が圧倒的に多かった。また、コロナで変化した体制が現在も継続しているという声もある。さらに、24年4月からは医者の残業規制も始まった。この規制は医者だけではなくコメディカルにも当然影響を及ぼす。
今一度、現場の体制を見直し、医療の提供側と医療を受ける側がともに満足ゆく体制の構築が望まれている。
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