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「長期収載品の選定療養」スタートで薬の選択は変わるのか〈1〉-10月以降「後発品を選ぶ」、58%とわずかに上昇。制度の認知は低い

日経リサーチ、1,000人の患者対象に緊急調査

10月に長期収載品の選定療養が導入される。後発医薬品の存在する薬で先発品の処方を希望すると、価格差の4分の1を新たに患者が負担する制度だ。安全性から先発品を選ぶ傾向も根強くある中で、新制度は薬の選択の意識を変えていくのか。

 

日経リサーチはこのほど、日経メディカル、日経ドラッグインフォメーションと共同で、医師、薬剤師、患者の3者を対象にした緊急調査を実施した。当コラムでは患者調査を中心に報告する。

3種の調査の概要は次の通り

 

調査概要1-1

 

※医師、薬剤師の調査結果については、それぞれ日経メディカル Online日経ドラッグインフォメーションにて詳報する。

 

▼日経メディカル Online

10月より始まる長期収載品の選定療養、医師の8割以上が「説明できない」

自己負担額増でも、患者の1割が「子どもには先発品」 ※9月25日公開

 

▼ウェブサイト「日経DI

【前編】10月スタート、長期収載品の選定療養

 

弊社コラムのほか、2媒体の詳報に記載がなかった医師、薬剤師、患者の調査データについても提供可能のため、興味のある方は日経リサーチの問い合わせ先よりご連絡頂きたい。長期収載品の選定療養開始後の11月には改めて実態調査を実施する。

 

患者調査概要

本調査は1,000人の患者から回答を得た。年齢や条件ごとに以下のように4分類した(各分類250人)。

 

調査概要2-1

 

患者の6割強は薬の値段が「高い」と回答、「安い」は6%超

まず、現状の薬の値段についての印象を聞いた。750人の回答者(患者)のうち、「高い」「とても高い」「やや高い」との回答総数は全体の60.9%に達した。「適正」との回答も32.5%あり、「安い」と感じている患者は6.5%にとどまった。「適正」と「やや高い」の回答を合わせると全体の64.6%に達し、薬の自己負担額について、患者は一定の理解を示しているといえそうだ。

 

1医薬品の値段の印象

 

「先発品を選ぶ」は7.5%にとどまる

次に、調査時点での薬の選び方について聞いた。全体の55.5%が「後発品を選んでいる」と回答し、「先発品を選んでいる」との回答は7.5%にとどまった。後発品の品質などに関する問題が度々指摘されてきたが、厚生労働省の集計では後発品の使用割合はすでに8割に達している。今回の調査結果でも後発品を選定する傾向が定着していると推察できる。

 

 

2先発品と後発品のどちらを選んでいるか(調査時点)

ほとんど認知されていない「選定療養」

10月に始まる新制度で、さらに後発品シフトが進むのだろうか。まずは新制度を患者がどの程度認識しているのかを聞いた。結果は「聞いたことがない」との回答が77.1%を占め、「聞いたことはあるが、よくわからない」との回答が18.4%だった。開始を目前に控えているが、ほとんど認知されていないのが実情だ。

 

3選定療養の認知

 

 

参考までに「選定療養」を認知しているか、医師と薬剤師の回答結果も紹介したい。医師は選定療養を「知らない」との回答が31.3%に達し、「知っており患者に説明可能である」との回答は16.9%にとどまった。薬剤師では「知っており患者に説明可能である」との回答が67.3%。「知らない」との回答が1.5%あった。

 

導入まで約1か月の段階でも、薬剤師の3割以上、医師の8割以上が患者に聞かれても説明できないというのは、憂慮すべき事態だと感じる。

 

4選定療養の認知(医師・薬剤師)

先発品を選んできた患者の半数近くは10月以降も継続

「選定療養」の内容について説明したうえで、10月以降は薬の選び方を変えるのかを聞いてみた。「後発品を選ぶと思う」との回答が57.9%と最も多く、「先発品を選ぶと思う」との回答は5.2%にとどまった。

 

先に紹介した調査実施時点(8月)の状況は、「後発品を選んでいる」患者は55.5%で「先発品」は7.5%。それぞれ2ポイントほど上昇・下落したが、制度導入で患者の意識が大きく変化するとは現時点ではいえない。制度そのものの認知が低いことが影響しているのだろう。

一方、現段階で先発品を選んでいる患者の48.2%は「選定療養」導入後も「先発品を選ぶと思う」と回答。「後発品を選ぶと思う」との回答は16.1%にとどまった。「値段を聞いて判断する」との回答も26.8%と、患者全体の回答結果を15ポイント超上回った。

 

できれば先発品を選びたいが、自己負担増がどの程度になるかは現時点で不明なため、それを確かめたうえで検討という患者も多いようだ。

 

510月以降の薬の選択

 

ちなみに現段階で「後発品を選んでいる」と回答した患者の85.8%が「選定療養」導入後も「後発品を選ぶと思う」と回答。「気にしていない」「金額を聞いてから判断している」と回答した患者は、10月以降も6割超は「気にしていない」「金額を聞いてから判断していると回答したが、現在「気にしていない」患者の24%、「金額を聞いてから判断している」患者の32%は「後発品を選ぶと思う」となった。

先発と後発の価格差「1,400円なら妥当」の声も

では、先発品と後発品の価格にどの程度の開きがあると、患者の気持ちとして、先発品を選びたくなったり、先発品は買えないという判断をするのだろうか。

 

まず患者が直近に薬局の窓口で支払った自己負担額を聞いてみると平均額は3,477円だった。「65歳以上で3割自己負担」に該当する患者の平均額が5,643円と最も高く、全体を押し上げていた。

 

そのうえで、先発品と後発品の価格差と意識について質問したところ、下記グラフの結果になった。先発品と後発品の価格差が「1,436円」であれば先発薬を選ぶのが「妥当」で、「2,771円」であれば先発品を選ぶのを躊躇してしまう。高すぎて手が出ない価格差は「4,527円」。積極的に先発品を選ぶ価格差は「911円」となった。


実際には、薬局で薬の価格をわざわざ聞いて判断している人はわずか3%しかいないので、あくまで患者の気持ちの問題でしかないが、結構先発品に対して高い価値を置いているように見受けられる。

 

6先発品と後発品の価格差に対する意識

 

以上、コラム〈1〉では患者の「選定療養」に関わる薬の値段の意識調査の結果を紹介した。本調査では患者自身だけでなく、子育て層の子供に関する薬の値段の意識についても調査した。詳細をコラム〈2〉で紹介する。

 

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