「長期収載品の選定療養」スタートで薬の選択は変わるのか〈2〉-「子供には先発品」10%~後発品への不安、10月以降の動向注視
2024.9.24
日経リサーチ、1,000人の患者対象に緊急調査
日経リサーチはこのほど、日経メディカル、日経ドラッグインフォメーションと共同で「医師」「薬剤師」「患者」の3者を対象に、10月に導入される長期収載品の「選定療養」に対する意識調査を実施した。
こちらのコラム〈2〉では、患者1,000人を対象にした調査のうち、子育て層250人に聞いた「子供が使用する薬に対する意識」について詳報する。
結果を見ると、子供には値段を気にせず「先発品を選ぶ」傾向が強いことがわかった。また、今回の調査で現在先発品を選ぶと回答した方の自由記述回答も一部紹介。「後発品」の品質や効能に対する不安が根強い実情が見えてきた。
現時点で「子供には先発品」14.8%
まず、現時点で子供向けの医薬品について、先発品と後発品のどちらを選定しているかを聞いた。250人の回答者の14.8%が「先発品を選ぶ」と回答。コラム〈1〉で紹介した患者本人がどちらを選ぶか、についての回答結果を比較すると7.3ポイント上回っている。「後発品を選ぶ」との回答は30.4%で、同25ポイント超下回った。先発品か後発品かを「気にしていない」との回答が過半の53.6%に達したのも患者本人とは異なる特徴だ。
自治体の子供の医療費無償化の動きが浸透する中、より安全性や安定性を重んじて、子供向けの薬を選定している層が一定数いる様子がうかがえる。
10月以降は「金額を聞いて判断」との回答が目立つ
10月以降の薬の選択意向がどう変化しそうか、についても聞いた。結果は「先発品を選ぶと思う」との回答が10%で、「後発品を選ぶと思う」との回答が31.2%だった。現時点に比べると先発品を選ぶ層が5ポイントほど減っている。また「気にしない」との回答が10ポイントほどに減り、「金額を聞いて判断する」との回答が13ポイント近く増えたのも特徴だ。
子育て層も76%が「選定療養」の制度自体「聞いたこともない」と回答しており、ほとんど認知していない。自己負担への影響を慎重に見極める必要があると考える親が多いといえそうだ。
先発と後発の価格差876円なら妥当
では子育て層は、先発品と後発品の価格差がどの程度なら、薬の選択に変化が生ずるのか。まず、直近の薬局での自己負担額を聞くと平均866円(なお、中央値は0円のため、一部の支払い者が平均を引き上げていることには注意が必要)。
そのうえで価格差と選定の意識について聞くと、以下の結果となった。
「妥当」と思う価格差の平均は876円。先発品を選ぶのを「躊躇する」のが1,696円。先発品を「選びたい」と思うのは512円。高すぎて「買えない」価格差は3,957円だった。薬局での直近の自己負担額(866円。その多くは0円)と比較すると、「先発品を選びたい」と判断する「512円」は結構大きな金額ではないだろうか。
現在、子供の薬の値段を確認したうえで、先発品か後発品かを選択する人はほぼいない(1.2%)が、10月以降だと10%まで増加する。子供の安全・安心を第一に考える子育て層にとって、後発品の品質などに対する「不安」が、値段の確認という行動をとらせているように見える。
参考までに、現在の薬局での自己負担が0円の回答者に絞ってみてみると、先発品を選びたい価格差の平均は376円となる。
後発品への不安、10月以降の動向に注目
最後に、現在薬局で「先発品を選ぶ」と回答した方に「先発品を選ぶ理由」を記述形式で回答してもらった。以下一部を紹介する。
結果をみると、過去の事故など様々な理由で、後発品への不信感を持つ患者は多い。また効能の安定性や使い勝手の良さも先発品を選ぶ理由として挙げられている。
とはいえ、コラム〈1〉で書いたように、現在56%は後発薬を選択している(子供の場合には、30%)。10月からの「選定療養」で、後発薬シフトが一層進むのかは未知数だ。選定療養開始後の11月には改めて実態調査を実施する予定だ。
今回の調査は日経リサーチのほか、日経メディカル Online、ウェブサイト「日経DI」にて、それぞれの切り口にて詳報する。3媒体に記載のなかった医師、薬剤師、患者の調査データについても提供可能。興味のある方は日経リサーチの問い合わせ先よりご連絡頂きたい。
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