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2026年度診療報酬改定 薬剤師2648人のホンネは <物価対応料について>

日経リサーチは「日経メディカルOnline」に登録する2648人の薬剤師を対象にアンケートを実施した。今回は「物価対応料」について現場の声を紹介する。

 

物価対応料―患者とのトラブル要因に」45 

2026年度診療報酬改定には「物価対応料」も新設された。エネルギーの高騰、過度な円安進行が医療機関や調剤薬局の経営に深刻な影響を与え続けているためで、基本診療料に上乗せして算定できるようにする。段階的に点数を引き上げ、2028年度には倍増させる。

 

▼制度を「知っている」薬剤師は全体の35.9%

  物価対応料の認知度(「詳細についても知っている」+「概要は知っている」)は35.9%で、「知らなかった」が30.3%だった。前回コラムで紹介した「賃上げ」関連改定よりも認知度は低い。病院と調剤薬局の認知度の比較では、やや薬局が高い傾向だ。役職別で見ると、病院勤務マネジメント層や調剤薬局経営層は、各現場担当者より認知度が高い。賃上げは自身の給与に直結するため現場担当者の関心が高い一方、物価対応料は経営に関する事であり、自分事化しにくいのだろう。ただし現場の認知度が低いことは、今後、窓口で患者から質問が出た際に、現場が制度を理解しておらず『説明ができない』という二次的なトラブルを招く可能性がある。

 

 

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新制度に対する懸念点では、全体で44.5%が「患者への説明困難とトラブル懸念」を挙げ、次いで「制度の複雑化」「地域差・規模差による不公平感」が続いた。病院と薬局の回答傾向を比較すると、それぞれの立ち位置による不安の性質の違いが見て取れる。
病院勤務者は、薬局よりも「地域差・規模差による不公平」や「受診控え」を危惧する割合が高い。病院の所在地域や規模の違いに起因する薬品在庫の確保難、および事務負担の格差は、病院にとって看過できない経営リスクだ。これに加え、経済的理由による「受診控え」が治療の妨げになることも懸念されており、病院は経営と医療の質の維持という二重の課題に不安を覚えている。

一方薬局側は、「患者への説明困難とトラブル懸念」を挙げる声が病院に比べて多い。これは、薬局の業務から「会計が避けて通れない」ためと推察される。
薬局の窓口では、薬剤師が服薬指導と並行して会計内容の説明を行う場面が多い。物価高騰という、治療とは直接結びつきにくい負担増を、患者へ説明し、理解を得る必要がある。こうした窓口でのコミュニケーションの比重の大きさが、現場における心理的な負担や、対人トラブルへの警戒感につながっていると考えられる。

 

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診療報酬改定の焦点であるベア評価や物価対応料は、物価高騰に直面する医療経営の健全化を目的とした施策である。しかし、今回の調査からは、現場が単に収益増を歓迎しているわけではなく、制度の運用面に対して複雑な不安を抱いている実態が浮き彫りとなった。
病院は医療提供の維持を、薬局は窓口での合意形成という対人業務の課題に懸念が強い。医療現場が抱える課題は多層的であり、単に点数を上乗せして、報酬増ですべて解決とはいかないようだ。
2028年度に向けた段階的な引き上げを円滑に進めるためには、単なる補填という枠組みを超え、いかにして患者や社会の理解を得ていくかという視点が、今後の医療機関・薬局運営において重要になりそうだ。

次回コラム(5月中旬公開)では、2026年度診療報酬改定に新設された「医薬品の供給体制加算」についての現場の声を紹介したい。 

 

 

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