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人権教育、先進企業の半数は海外のサプライチェーンでも実施|【連載1】SDGs経営調査からみる日本企業の人権教育の現状

日経リサーチは日本経済新聞社と実施している日経SDGs経営調査などで蓄積した知見をもとに企業のサステナビリティ経営を支援する各種サービスを展開しています。

 

今年7月には、ビジネスの現場で起こりうる人権侵害事例を解説動画で学びつつ、自社とサプライチェーンで発生リスクの高い人権課題を可視化する人権教育サービスビジネスと人権Check&Learningをリリースしました。11月には海外の子会社や取引先でもご利用できるように英語版も用意しました。

 

英語版のリリースに合わせて、注目が高まっている「ビジネスと人権」に関する企業の取り組みや課題について、3回に分けて紹介します。

 

近年、企業における人権尊重の取り組みは重要な経営課題の一つとなっています。経営上のリスクへの対応のみならず社会からの信頼を高め、投資家や消費者など多様なステークホルダーからの正当な評価を得るためにも欠かせないものとなっています。

 

国も「ビジネスと人権」に関する行動計画に続いて、昨年9月には「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定。企業に求められる人権尊重の取り組みを促進し、それを企業価値や国際競争力の向上につなげることを期待しています。

 

このような状況の中、今年の日経SDGs経営の回答結果から、企業の人権教育の現状を紹介します。

人権デュー・デリジェンスを実施しているのは回答企業の半数以上

国の「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」では、ビジネスと人権について企業に求められることとして、「人権デュー・デリジェンス」が挙げられています。

 

人権デュー・デリジェンスは、自社だけでなくグループ会社やサプライヤーにおける人権リスクの特定、その防止・軽減策の実行、防止・軽減策の実効性評価と見直し、そして一連の取組の開示と定義されています。人権デュー・デリジェンスを進めるにあたり、従業員の人権尊重意識を高め、それによって社内で差別などの人権侵害が起こるリスクを低減させるものとして、人権教育の実施が求められています。

本年のSDGs経営調査で人権デュー・デリジェンスの実施状況を聞いたところ、全回答企業899社のうち55.7%にあたる501社が「実施している」と回答しました。リスク特定の際に検証している項目では「ハラスメント」「過剰・不当な労働時間」「強制労働」が最も回答の多い3項目となりました。

 

 

図表1

 

リスクの把握範囲については「自社内での侵害」が481社、「国内の取引先による侵害」が394社、「海外の取引先による侵害」が296社でした。調査回答企業全体の約3分の1が海外の取引先の人権リスクまで把握していることとなります。また、今回の調査で総合★4.5(偏差値65)以上を獲得した56社での実施率を見ると、9割以上の企業が自社内、国内取引先、海外取引先すべてのリスク特定を行っており、先進企業のほとんどがサプライチェーンを含めた人権リスクの把握を行っていることがわかりました。

 

図表2

自社内の人権教育は半数超が実施、先進企業の半数は、自社が主体となってサプライチェーンの人権教育も実施

続いて、人権教育の実施状況についてみてみます。まず、自社での実施状況について、回答企業全体の53.7%にあたる483社が研修を実施していると回答しました。この数字は、自社内の人権リスクを特定していると回答した企業数(481社)とほぼ同数となっており、リスク特定を進めることで、自社内の人権教育も推進できていることが読み取れます。

また、人権教育の具体的な内容をみると、「人権リスクの企業への悪影響」「自社の人権方針」「自社で整備されている苦情処理メカニズム」といった項目が多く扱われていることがわかりました。

 

図表3

 

さらに、自社が主体となってサプライチェーンでの人権教育を実施しているかどうかを聞いた設問では、国内取引先の従業員に対して人権教育を実施していると答えたのは回答企業全体の13.6%にあたる122社、また海外取引先の従業員に対して実施していると答えたのは6.2%にあたる56社となりました。一方で、総合★4.5以上の企業の回答は、全ての企業が自社内で実施、国内取引先での実施は67.9%、海外の取引先でも半数近くが実施していました。

 

図表4

 

先進企業においては、サプライチェーンの人権リスクの特定のみならず、自社が主体となって取引先の従業員の人権教育まで実施している企業が多いことがわかりました。特にサプライヤー企業を多く抱える大企業では、自社内での人権教育を充実させつつ、取引先への教育も主体的に行うことが求められそうです。



                     編集企画部/サステナビリティセンター 西山晃弘

 


 

ビジネスと人権Check&Learningは、自社や子会社・取引先の従業員に対する人権教育ツールとしてご利用いただけます。

 

動画によるケーススタディの学習で、ビジネスと人権に関する様々なリスクを実践的に学べます。また、自社の人権方針や苦情処理窓口を知っているかといったアンケートも用意していますので、自社のビジネスと人権に関する取組が従業員に伝わっているかも把握できます。

 

日本語版と同時に英語版の研修を実施可能で、人権教育の多言語対応が求められる場面でもお役立ていただけます。詳細は以下のページをご覧ください。

 

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